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ニュース2022.11.03
水中でのスマホ通信に成功!KDDI総合研究所の海中経済圏開拓に向けた取り組みに注目!
参照:ALAN(Aqua Local Area Network:エーラン)コンソーシアム
ライセンス(Cカード)取得時の学科講習でも学びますが、水中での音の伝わり方は複雑です。イルカやクジラのような音波で通信する方法や、音で場所を特定するような音響測位といった方法などがあります。音波で通信する方法においては、送受信できるデータ量が比較的小さく、高画質な動画データをリアルタイムで送れるような通信手段ではありません。
深海底探査の世界大会への挑戦や、2019年には水中光無線通信の実証実験、2020年からは水空合体ドローンの開発など、これまで海中に対しての研究開発・実証実験を繰り返し行なってきたKDDI総合研究所 。いったい海中世界に対してどのような構想を抱いているのか、KDDI総合研究所の西谷明彦氏にマリンダイビングWeb編集部(以下、編)がお話を伺いました。水中世界での活動はどのように変化していくのでしょうか。テクノロジーの進化に注目です!
西谷明彦/KDDI総合研究所で海洋工学、海洋経済圏の構築を研究。海中での無線通信技術を実用化すべく応用研究にも挑み、LED光通信により海中でスマホ(SNS)を使うといった世界初のPoCにも成功。現在は、水空合体ドローンや水中音響測位に関する研究開発をはじめ、陸上と同様に、海中も生活圏とすることを目的に、海洋をフィールドとした研究を継続している。
編)KDDI総合研究所ではどのような研究をされているのでしょうか?
KDDI総合研究所の私のチームでは、将来的に海中を生活圏、経済圏にすることができないかと研究を進めています。日本は島国で、排他的経済水域の面積は世界でも上位に入るほどの海域を有しています。海中経済圏開拓技術と私たちは呼んでいるのですが、これまでに大きく分けて3つの取り組みを実施し、継続的に研究開発しています。
1つめは深海探索技術です。ドローンや人間には手が出せない数千m級の深海探索技術です。もともとは国際通信用の海底ケーブルのメンテナンスを目的とした水中ロボットの研究開発でしたが、そこで培った技術を応用していまの発展構想に至ります。無人ロボットを使って深海を探査する世界大会が、2018年12月にギリシャで開催されました。日本の「Team KUROSHIO」は、世界32チームエントリーした中で2位。ソナーで海底を3Dスキャンし、所定時間内に海底の地形図を作成する。 この技術に関して世界トップクラスの技術力を発揮することができました。
2つめは水空合体ドローンです。これまでの水中探索は港から船を出し、ダイバーまたは水中ドローンを探索区域まで運び、そのポイントから潜行させるというものでした。我々は、船を出さずに水中ドローンを探索区域まで運ぶことに成功しています。無線通信技術と衛星利用測位システム(GPS)を利用し、陸上から遠隔操作で空中ドローンを飛ばします。例えば、東京にいながら沖縄の沖合海域を調査・探索することが可能です。
3つめは水中無線通信です。海中経済圏を開拓しようという中に通信技術は不可欠です。通常の水中無線は音波 を活用しますが、音波は通信できるデータ量が少ないことが課題です。そこで、 大容量通信が可能で人が直視しても問題のない青色LEDを活用しました。海中に光無線の“Wi-Fi ”スポットを作るイメージです。現在は5mまでの遠隔距離の通信に成功していますが、将来的には20m以上での通信を目指しています。
深海探索技術の世界大会にて。
水空合体ドローンの実機。
水中無線通信の実験イメージ図
編)海の透明度や浮遊物が、青色LEDの通信範囲に影響するのではないでしょうか。
はい、濁度が一番の課題です。青色LEDの通信に大きな影響を与えます。では、沖縄以南の透明度の高い海で実験するとどうなるかというと、こんどは太陽光の外乱も影響します。最も適しているのは、プランクトンや浮遊物の少ない透明度が良く、太陽光の届かない深度。もうひとつの課題は、お互いの通信装置を向き合わせて通信が可能となるため、向き合う発光装置の光軸を合わせないと通信ができないということです。向き合う青色LEDの光の高速点滅(人間の目には見えません)で通信を行なうので、海のうねりや潮の流れの中でどう光軸を安定させるかはこれから解決していかなければなりません。
機器を固定させた状態で通信試験。
青色LEDの光軸を合わせます。
通信装置を持ち、海の中へ。
距離5mでメッセージの受け取りに成功。
2つの通信装置には4灯の光源があります。これがデータを送る役割になっています。装置の中心に受光レンズがあり、データを受け取っています。青色LEDの光の変調方式を利用し、データの送受信を行なっています。
3つめの課題は小型化です。いま、この装置は見ての通りかなり大きな装置になっているのですが、将来的には水中カメラと同じくらいの大きさにしたいと思っています。それにより、ダイバーの通信可動範囲も広がります。
レジャーダイビングで楽しむということはもちろんですが、潜水作業中の安全確保にも活躍してくれると思っています。リアルタイムで陸上と海中で映像や音声を介したコミュニケーションができると、効率も安全性もグンと上がります。海中での高速通信を実現することで、そこに新しいマーケットが生まれて発展することも視野に入れています。
水中通信技術が進み、水中の様子が陸からリアルタイムで見えるようになることで、海がより身近な存在になりそうです。まだ解決すべき課題はありますが、KDDI総合研究所の研究には引き続き注目を続けたいと思います!
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(ライター/嶋崎 真太郎)
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