- ホーム
- ニュース・トピックス&更新情報一覧
- 水中考古学がおもしろい! 水中遺跡シンポジウム「水底のヒストリア」に参加してきました
レポート2023.02.15
水中考古学がおもしろい! 水中遺跡シンポジウム「水底のヒストリア」に参加してきました2023年2月5日(日)、東京・大手町の日経ホールで水中遺跡シンポジウム「水底のヒストリア」が開催されました。
このイベントは、2022年3月に文化庁が刊行した『水中遺跡ハンドブック』とともに、水中遺跡の魅力を広く国民に知っていただきたい、水中遺跡の保存と活用への機運を促進したいということで発行元の文化庁が主催。当日はYouTubeでのオンライン配信も実施されていました。
シンポジウムは講演と、会場内に掲示されたポスターでの水中遺跡報告に分かれていて、会場には水中遺跡に興味を持つ熱い方々が集まっていました。
「海に沈んだ蒙古襲来」と題して蒙古襲来(元寇)の際の水中遺跡について語っていただいたのは池田先生。実際にダイビングをして2回にわたる元寇の船や積載物を調査していらっしゃいます。現在1号、2号の2隻が長崎県松浦市の海で発見されていて、調査から推測される船の大きさや装備などに思いを馳せるロマンをたっぷりと語ってくださいました。
目的は発見された船の引き揚げだそうです。その作業の大変さを考えると気が遠くなりそうですが、ぜひ実現していただきたいものです。
日本の水中遺跡、世界の水中遺跡について語ってくださったのは、水中考古学界のみならず考古学界でイケメンTOP5に入るという木村先生。
水面下にある水中遺跡を研究していく上で重要なことは、「多様なNarrative=物語性の共有」と語り、発見する高揚感やわくわく感、探求していくおもしろさを、さまざまな文献や発見されたことなどから語っていただいた。水中遺跡は水深が深いところも多いので、ヘルメット式のダイビングを古くから利用している研究者が多かったが昨今はテクニカルダイビングが主流になりつつあることも紹介。水中遺跡発見の歴史~ジャック・イヴ・クストーが引き揚げたアンフォラ壺のことやデンマークのヴァイキング船博物館やスウェーデンのバーサ号博物館といった、実際に水中遺跡が見られる場所、日本における水中遺跡(特にダイバーには身近な徳之島のうんぶき洞窟について)などについて広く紹介してくれました。
「水中考古学におけるフォトグラメトリの活用について」紹介してくれたのは、山舩さん。水中考古学者として海外で活躍されている方で、デジタル3Dで水中遺産を見せる技術の重要さや活用方法を紹介。手実測に比べて正確かつ詳細に、しかも短時間でわかる手法は、世界中で注目されていて、たくさんの例を挙げながらその魅力を語っていただきました。
が、ともすれば3Dマップを作ることで満足してしまうフォトグラメトリの本質は、やはり冒険、探検、探求であることと強調されているのには納得。
なお、山舩さんは2月6日(月)にTBSで放送された『クレイジージャーニー』にも出演されていました。
徳之島のポスター展示
沖縄県の水中遺跡についてもポスター展示されていました
このほかにも、各地からの水中遺跡の報告が。
ダイビングでは海の生物や地形などを楽しむのが主流とはいえ、歴史をひもときながら、その時代の人々の生活や技術などを想像しながら水中遺跡を潜る楽しみや、先生方のように発見していく楽しみ方もまたいいものだなぁと思い至りました。ロマンあふれる水中考古学、水中遺跡。皆さまにも興味を持っていただければ幸いです!
当日のプログラム
(1)講演・報告
【水中遺跡が彩る歴史】
◎陸域と水域の日本列島史:佐藤 信(東京大学名誉教授)
◎海に沈んだ蒙古襲来:池田榮史(國學院大學)
【世界の水中遺跡への冒険】
◎日本の水中遺跡と世界の水中遺跡:木村 淳(東海大学)
◎水中考古学におけるフォトグラメトリの活用について:山舩晃太郎(合同会社アパラティス)
【海から地域の歴史と文化を眺めてみよう】
◎オスマン帝国フリゲート艦・エルトゥールル号の遭難事件~史跡・水中遺跡・国際交流の視点から~:髙橋智也(公益財団法人和歌山県文化財センター)
◎現在に残る幕末の軍艦「開陽丸」:小峰彩椰(江差町教育委員会)
◎瀬戸内の海上交通と海賊:田中 謙(今治市村上海賊ミュージアム)
(2)ポスター報告
新潟県立歴史博物館、静岡県、福岡県新宮町、長崎県松浦市、鹿児島県徳之島町・伊仙町・天城町、沖縄県
以上
(デスク/後藤ゆかり)
☆ ☆ ☆
※クリックすると、そのカテゴリーの一覧が表示されます