多種多彩なハナダイ&スズメダイ天国
赤沢

2021年6月の再オープンにマリンダイビングWebではオープン前の赤沢を取材してご紹介。それから1年。新たな見どころが次々と見つかったといいます。実際、取材してみたところ……え!? キシマ、フチドリ? オビトウカイスズメダイ!? 赤沢はほかのエリアにはない、多種多彩なハナダイ&スズメダイ天国だったのです。しかもそれだけではなく……。
協力/赤沢ダイビングセンター
撮影/尾﨑たまき
海と施設が激近の理想的な環境
ビーチも港も目の前! 理想のロケーション、赤沢

舩に乗る桟橋の真正面に立つ《赤沢ダイビングセンター》。山の上に日帰り温泉がある
2021年6月に再オープンして丸1年。行ってきました、赤沢へ。昨年は代表の仲榮眞充(なかえま みつる)さんが来て早々だったので探検ダイビング的な取材でしたが、この1年間、潜りに潜ったそうで「ボートスポットに関しては新たな発見だらけ」とのこと。赤沢にはセッティングしたら20歩足らずでエントリーできるビーチスポットと、「0番」「3番」「5番」と呼ばれるブイのスポット(それぞれ別名も一応あります。後述)、それに「平島」「仲の崎」の合計5カ所のボートスポットがあります。一番近い「平島」で港から3分、遠い「5番」で5分足らずととても近いのも魅力。初心者でも船酔いが心配な方でもあっという間に到着できるのがありがたい限りです!
ダイバー想いの施設も抜群!
もともとダイビング施設の完成度は高かったのですが、リオープン後も改良を進め、海がすぐ目の前にあるという理想的な環境にありながら、さらに施設も快適、という贅沢な空間に変身していました!! 初めての人にもビギナーダイバーにも、もちろん海を潜り尽くしたベテランダイバーにも、理想的で超快適なダイビングステーションです。

建物の内外は真っ白な壁に統一されていて明るく清潔感たっぷり

受付前には貴重品用のロッカーと、ドリンク類、冷蔵庫や電子レンジ等がそろう。カップラーメンなど軽食も販売

3階のラウンジも明るくて広々

ラウンジの外にもテラスがあり、景観は抜群

ウエットスーツ派のためにはお風呂も用意。お湯の出るシャワーが屋内外にあり。更衣室も広々(更衣室に水着用の脱水機あり)

センター前には屋根付きの休憩場所も設置されました! 風通しがいいうえ、日光を遮ってくれるのでとっても快適

ビーチのスロープにある木の台は、ビーチダイブのゲストがセッティングしやすいように新たに設置されたもの
ハナダイ好きに大好評! 奇跡の-37mライン
フォト派垂涎のキシマハナダイが水深30m台に
いきなり深場の話ですみません。ですが、1年前の取材時には気づかず、この1年間で仲榮眞さんが「赤沢の海は奥が深すぎた!」と舌を巻いたのが、ボートスポットの水深37mライン。レジャーダイビングは40mまでは潜れることを考えると、そしてエンリッチド・エア・ナイトロックスを使うことを考えれば、この水深でのダイビングも可能というわけです。
「まず赤沢で驚かされたのがキシマハナダイのオスメス、成魚、幼魚が多数見られること」と仲榮眞さん。
キシマハナダイといえば、ハナダイファンはもちろん、一眼カメラを持つフォト派ダイバーのアイドル。しかも生息域が50m以深の深場で、なかなか撮れない、なかなか現れない、憧れの被写体です。会えれば超ラッキーというハナダイの一種なのですが、仲榮眞さんによると「この一年だけですが、ずっと見られるうえ、見られるところが何カ所かある」と言うのです! えらいこっちゃ赤沢!!です。
エンリッチド・エア・ナイトロックス28%で行きました。キシマハナダイ。
場所は「3番」と呼ばれるブイのスポットで別名「三角岩」。ブイから深場に向かって斜面(赤沢はドロップオフではなく、急激な斜面が特徴です)を下り切った辺りにある岩場。水深37~38mです。明らかにピンク色の体に黄色いライン、ヒレというヒレがすべて水色と黄色の透明感あふれる色合いの美しすぎるオスのキシマハナダイです。
昨年に続き、今年も撮影を担当した尾﨑たまきフォトグラファーはキシマハナダイの動きを観察しつつ夢中になって撮影します。

彩りの美しいオスのキシマハナダイ。60mmレンズであれば、オスとメスのツーショットが撮れることもあります
37mラインのハナダイ・ハナゴイ王道

キシマハナダイの近くにはアカボシハナゴイのオス、メスが何尾もいました。なお、この子にそっくりなアサヒハナゴイも赤沢に生息! 後ろ(左下)に移ってるのはミナミハナダイ
実はこのキシマハナダイのいる岩場近くではフチドリハナダイもいて、こちらも普通に越冬したそうです。
フチドリハナダイは主に南の島に生息している種で、ピンクオレンジ色の体にショッキングピンクの太めのラインが流れる(オス)美しいハナダイです。沖縄の島々でも見られるのは深いのですが、赤沢では40m以浅で見られるというのだからスゴイですね、
また、キシマハナダイのいる岩の周辺ではほかにもアサヒハナゴイ、アカボシハナダイ、コウリンハナダイ、シロオビハナダイ、カシワハナダイ、ベニハナダイが見られるとのこと。
サラリと聞き流しそうになりましたが、コウリンハナダイ!? 筆者はモルディブの深場でしか見たことがありませんが、日本でも伊豆大島や柏島などでも見られるとのこと。いずれにしても超レア、超人気なハナダイの仲間です。オスの頭に天使のような光の輪の模様があることから名づけられたそうですが、こちらも越冬してくれている模様。今回は探す時間(撮る時間)がなく断念しましたが、せっかくなら会いたかった。
それはともかく、水深37mの奇跡のライン、ハナダイ&ハナゴイのキングストリートが赤沢にあったとは!!

伊豆では普通に見られるスジハナダイ、サクラダイ、ナガハナダイもしっかり生息
もっと浅場にはキンギョハナダイも群れ群れ
エンリッチド・エア・ナイトロックス28%のおかげで、深場で長く滞在できましたが、それでも撮影時間は限られていてすぐに浮上しなければなりません。でも、浮上しながらもハナダイ天国は続いています。
仲榮眞さんは「赤沢の海は0番から5番にかけ急激に地形が変わっていくため、環境によって生息してるハナダイの種類が変わっていきます」と言います。「3番」ブイの水深20mにはミナミハナダイの群れもいるそうで、こちらは今回の撮影プランから外れていましたが、次はやはり見たい!なハナダイの仲間です。
浅場に来るとキンギョハナダイのものすごい群れが。しかもある場所ではオスだけの群れも。不思議ですよね。
「0番」ブイでは水深10mにカシワハナダイ、水深22m辺りにアカボシハナゴイ、29m辺りにハナゴンベ、32mにスミレナガハナダイも生息しているそうで、いやはや、ハナダイファンにはたまりません!
※ハナダイ、および下記のスズメダイを観察するには水深が深いため、以下のことに気をつけて潜るようにしてください。
◎ガイドダイバーと潜りましょう
◎エンリッチド・エア・ナイトロックスを利用しましょう
◎こまめに水深を見て、減圧停止を出さないようにしましょう
◎水面休息時間をしっかりとりましょう(できれば90分以上)
レアなスズメダイでも人気
オビトウカイスズメダイとゲッコウスズメダイ

話題のオビトウカイスズメダイ
貴重で希少なハナダイ攻めにテンション上がりまくりな取材陣でしたが、「スズメダイでも盛り上がっているんですよ」と仲榮眞さん。
「0番」のスポットに、普段は水深130mとか70mといったやや深場に生息しているという説のオビトウカイスズメダイが、潮位にもよるけれど浅い場合は水深35mにいるというのです。しかもその周りにはゲッコウスズメダイ(昔、帯のないトウカイスズメダイと呼ばれていました)が3尾いるとのこと。ほかにトウカイスズメダイもいたそうですが、今はいなくなっているそうです。
しかも赤沢がスゴイのは、ソフトコーラルやヤギの周りにスズメダイたちがいるので、バックの色合いがブルーだけにならないこと。水中写真を撮るには最高のシチュエーションというわけです。
今回の撮影では深場が続いてしまって行けなかったのですが、普段なかなか見られないレアなスズメダイを撮影しに出かけなくては!
アマミスズメダイの幼魚はやっぱりカワイイ

フォト派に大人気のアマミスズメダイ幼魚
深場のレアスズメダイには行けませんでしたが、やや浅い水深22mぐらいにはやはりフォト派に大人気のアマミスズメダイのちびっこたちがいます! しかも赤いコモンサンゴのところにいることも多いので背景を赤くして撮影することができます。マクロレンズを持って出かけましょう!
ほかとは違う不思議な赤沢の海
クダゴンベは100尾はいるかも!?

赤沢ではとにかく多いクダゴンベ

レンテンヤッコもあちこちで見つかります
伊豆半島の城ヶ崎海岸の南に位置する赤沢は、柱状節理の地形が海岸線のあちこちで見られるジオパークエリアの一つです。水中にもその地形は続いているところもあり、巨岩が折り重なるように傾斜をつくっているのが特徴です。そういう地形のせいか、潮がたまりやすいのか、前述した深場のスズメダイやハナダイ、ハナゴイの仲間がとても多いのが不思議です。昨年「レンテンヤッコがいる!」と喜び勇んで紹介しましたが、「あの後、びっくりしたのですが、レンテンヤッコは赤沢では全然珍しくなくて、普通種ですね」と仲榮眞さん。確かに取材中もたくさん見かけました、レンテンヤッコ♪
もっとびっくりなのはクダゴンベ! 赤いチェック柄のボディが人気の魚ですが、仲榮眞さんは「100尾ぐらいいるっていっても大げさじゃないぐらい、います」とのこと。
赤沢のポテンシャルの高さは尋常ではない!
ミノカサゴはほぼ全部ハナミノカサゴ!
伊豆半島の海には欧米人が大好きなミノカサゴ(Lionfish)が多いのですが、赤沢にも多くいます。が、よく見るとミノカサゴではなく、熱帯エリアに多いハナミノカサゴです!「ほぼ100%、ハナミノカサゴですね」と仲榮眞さん。また伊豆に多いアオヤガラも、赤沢ではヘラヤガラばかり。ハナダイの仲間といい、スズメダイの仲間といい、赤沢の海はある意味トロピカルゾーンなのでは!?と思ってしまうほど。赤沢は伊豆半島でもオンリーワンな海といえます。

仲榮眞さんが「チョコミントサンゴ」と呼ぶサンゴの仲間をよく見ると、その上にアカイソハゼ。赤沢だけに「赤色」の生きものも多い!?
ビギナーも楽しめるビーチ&ボート
水深が浅いところも楽しいんです

ソフトコーラルの群生も見事。このヤギ、よく見るとハート形です♡

水深10mちょっとのところのイソギンチャク畑にクマノミが
今回の取材では深場のハナダイやスズメダイを狙いましたが、ダイビングの後半はもちろん浅場で撮影。岩礁にはソフトコーラルがびっしり付いていて、じっくり探せばいろいろな生き物がさらに見つかりそうな宝の山。水深10m台にはイソギンチャクのじゅうたんがあって、大きめの、明らかに越冬しているクマノミが何尾も泳ぎ回っています。またある場所ではイセエビが2匹、ケンカをしていました(美味しそうと思って見入ってました(^^;;))。
つまり、オープンウォータークラスの初心者でもたっぷり楽しめる海なのです。

三角形の単管パイプが設置されているビーチは講習やスキルアップに最適
ダイビングスタイルはビーチかボート。ビーチには中性浮力を練習するトライアングルも設置されているなど、スキルアップしたい人にも最適な海。目的に応じて潜るといいですね。
ウミガメも常連

最初に出会ったアオウミガメは背中に大きな貝殻をつけた、通称「デベソちゃん」。なんと、尾﨑フォトグラファーが昨年も撮影した個体。再会に大喜び♪
Movie by Yukari Goto
ダイバーに人気のウミガメですが、「赤沢には少なくとも10匹ほど生息しているのでは?」と仲榮眞さん。たいてい寝ているか、海底でお食事をしていて、かなり近づいても驚かさないかぎり逃げない個体も。
そうか。赤沢は竜宮城だったのか!
魚群も普通にいる!?

サンノジという別名もあるニザダイの群れも取材中に登場

マクロ頭の取材陣に予期せぬワラサの大群が!
エントリーする前に釣り人が「シイラがいたよ」と話をしていて、色めき立った筆者ですが、残念ながら水中シイラには会えず。でも、深場に下りる途中に魚群を狙ってたぶんヒラマサが現れたり、ワラサの群れが現れたり……。メジナかなと思ったらニザダイの群れもダイバーの泡を小魚と間違えたのか、我々の周りをぐるぐる回ってくれるなど、サービス精神旺盛でした♪ こんな出逢いもエキサイティングでうれしい赤沢です。
今回の撮影担当した写真家 - 尾﨑たまきさん
今回の赤沢特集で撮影を担当していただいたのは、写真家の尾﨑たまきさん。地元の熊本の海で当時の新種ヒメタツの産卵・ハッチアウトのシーン撮影で有名に。魚や海岸生物だけでなく陸でも生きものへの情熱にあふれていて、そのやさしい眼差しでそれらの生きものの決定的なシーンを撮影。今回も撮影しながらも細かくその生き物の動きや表情を見逃さず、限られた時間で被写体をいくつも押さえていただきました♪
水中写真家 作品探訪 尾﨑たまきさんの特集も併せてご覧ください≫

赤沢のダイビングサービス
赤沢は伊東市に位置していて、伊東市漁業組合の赤沢支所と連携している《赤沢ダイビングセンター》を通してダイビングをすることになります。一般ダイバーは直接申し込んでガイドしてもらうこともできますし、ダイビングショップの赤沢ツアーを利用して潜りに行くことになります。いずれにしても快適な施設を利用して、ゴージャスなダイビングスポットを潜れるのは魅力です。
赤沢へのアクセス
電車でGO!
赤沢へは熱海駅から伊東線、伊東駅からで伊豆急行線で伊豆高原駅を目指します。熱海へは東京方面からも名古屋方面からも東海道新幹線や東海道本線でアクセス。
伊豆高原駅からは東海バスで約20分、タクシーで約7分です。
《赤沢ダイビングセンター》に直接お申し込みの場合は駅送迎もあり。
車でGO!
東京方面からなら東名高速道路厚木ICから小田原厚木道路、国道135号経由で(厚木ICから約85km)。
名古屋方面からは東名高速道路沼津ICまたは新東名高速道路長泉沼津ICから伊豆縦貫自動車道、伊豆中央道、修善寺道路を経由して(両ICから約55km)。八幡野観音を通過後、《赤沢温泉ホテル》の角を左折して道なりに進めば《赤沢ダイビングセンター》に到着。