熱海の秋~春は冒険ダイビング!

東京から電車でも車でも2時間足らずで行ける一大観光地・熱海。ホテルが林立するすぐ目の前の海には日本屈指の沈船スポットがあるほか、11月からは期間限定の海中洞窟スポットがオープン。透明度も上がるこれからの時期は沈船&洞窟で冒険ダイビングを!
※2022年10月現在の情報です。
沈船と洞窟を一日で潜る贅沢

沈船はクロホシイシモチなど魚たちのオアシスになっています

洞窟を抜けると目の前に穴の形に切り取られた青い海が
一般的には冬も暖かな海辺の観光地として有名な熱海ですが、ダイバーの間では「熱海といえば沈船」といわれるほど有名なダイビングエリアです。しかも毎年11月に解禁となる洞窟スポット「小曽我洞窟(こそがどうくつ)」もあり、これからのシーズン、沈船、洞窟を一日で潜れるとあって冒険好きなダイバーがこぞって集まります。
そんな熱海でガイドを始めてもうすぐ24年目という《ダイビングサービス熱海》の豊嶋康志さんによると、「沈船」は水深が20m以深に船のトップがあるために1本目に潜り、水深の浅い「小曽我洞窟」は2本目に潜るというスケジュールになることがほとんどとのこと。間にほかのスポットを潜ることもできなくはありませんが、たいていの方はこの時期一日2ダイブを選択するそうです。やはり冒険好きなダイバーが多いということでしょうか。
いずれもボートでのダイビング。気温が低くなってくると水中はそうでなくても船上で受ける風が冷たく、体を冷やしますので、フードやグローブ、足先など防寒&防風対策は確実に。
「沈船」の見どころ
スパリゾート街のほぼ真ん前に沈むスポット

熱海で人気のスパリゾートが並ぶ海岸線。「沈船」スポットはその目の前にあります
港を出て5分足らず、スパリゾートがズラリと並ぶ熱海の街のすぐ目の前に位置するダイビングスポット「沈船」。36年前、水深30m付近の砂地に沈んだ砂利運搬船「旭16号」で全長81m、最大幅18mと沈船スポットとしては国内最大級ですが、船体の真ん中辺りで真っ二つに折れています。甲板や船内にはウインチや階段など船上にあった設備がそのまま残されていて、《ダイビングサービス熱海》では危ないので中には入らないようにしていますが(特に初めてのゲストは)、探検気分で見て回ることができ、エキサイティングです。
安全な潜降&浮上方法

ロープを伝って沈船へ。流れがない時は浮かんで全体を眺めることもできる
エントリー後は沈船から出ているブイのロープを必ずつかんで潜降を。意外に流れが速くなることもあるため、ロープを離すとたどり着けなくなるからです。これは浮上時も同様で、特に安全停止中はロープにつかまっていないと流されて船に戻れなくなるので、油断しないようにしましょう。
また沈船がある場所はトップで水深18mを越えるため、アドバンス以上のスキルが要されます。
エキサイティングなレック

甲板にはウインチがそのまま残っています

中をのぞいてみると……

水深30m付近から見るとその大きさに圧倒されます
ロープを伝いながら潜降していくと見えてくる「旭16号」の船首。下りていくにしたがい船体が視界いっぱいに広がっていきます。透明度がいいときでも全長81mの全容はなかなか見られません。その異様な大きさに心を動かされるダイバーも少なくないでしょう。船の上、船の脇の壁などコースはいろいろですが、30年以上にわたり生き延びてきた設備や部品を見るのも興味深いことです。まさに探検心を掻き立てる冒険スポットといえます。
水中のオアシスになっていて魚影は濃い!

日本の固有種ともいえるサクラダイが群れる

水中写真派にもオススメのシーンがあちこちに
周辺には「ビタガ根」や「ソーダイ根」など岩礁や岩の根などが点在していますが、海中に沈められた船は魚たちにとってはオアシスのようなもの。船内に入り込む余地も多数あるので、クロホシイシモチなどのように穴を好む生き物もいっぱい。クダゴンベやアカオビハナダイなど南方から来て居着いてしまっている魚もいれば、新たな季節来遊魚も流れ着きます。船の周りにはキンギョハナダイ、サクラダイ、スズメダイなどがぐっちゃり。魚影が濃いということは、回遊魚の襲来もあり、エキサイティングな捕食シーンに遭遇することも。
ビギナーもトライできる洞窟ダイビング
11月1日解禁! 期間限定スポット「小曽我洞窟」

岩の質が明らかに異なる断層に切れ目に「小曽我洞窟」はあります
年によって変わることもあり得ますが、11月1日~4月30日の5カ月間、ダイバーが潜ることのできる洞窟スポット「小曽我洞窟」。港を出て10分ほど。岬を回り込んだ、曽我浦大橋の下辺りに位置しています。ボート上からも岩壁に洞窟が見えるので、エントリー前からボルテージが上がること間違いありません。
冒険心をくすぐられつつ、癒されて

穴に入って振り返ると……

水温が下がりきる前までは洞窟内に魚もみっしり

進んでいくと出口がぼんやり見えてきます
期間限定スポットと聞くだけでワクワクしますが、さらに洞窟ダイビングとなれば冒険心をくすぐられ、テンションも上がるのでは? 船上からも見える穴を目指してエントリー。泳いでいくと岩場に大きな入り口があります。何人かが横並びで入っていけるサイズなので閉塞感はありません。数mぐらい泳いで振り返ると、さっき入ってきた穴が青く切り取られたように神秘的です。入り口付近には魚がたまっていることもあって、角度を変えればまた違ったブルーのイリュージョンと魚群を楽しむことができます。
穴は向こう側の岸壁までトンネルのように続いていて、距離は約40m足らず。出口も穴の形に海の青が浮かび上がり、ホッと癒される気分も味わえるはずです。
初心者にもオススメのワケ

マップ/鈴木 伸
「小曽我洞窟」は入り口から出口までの距離が40mぐらい。出入り口の穴が大きいため光が届き、まったく暗闇になることはありません。閉塞感を味わうことなく、初心者でも楽しめるというわけです。また、トンネル内で海底が落ち込んだりすることがないので、水深も入ってから出るまで10m台をキープ。オープンウォーターダイバーでも安心して潜れるというわけです。

洞窟を出て進むと、砂地が広がっています
穴を出てすぐの海底は砂地が広がるエリア。海底には砂紋(さもん)ができていることもあります。透明度がいいこれからの時期は、ブルーの海と白っぽい砂地のコントラストも絶品。中層に浮かんで浮遊感を楽しむだけでも気持ちいいですよ♪
その後はボートに戻るまで周辺の根を転々と回って、海を散歩。1本目の「沈船」、2本目の洞窟と、エキサイティングだったダイビングのクールダウンにも役立つはずです。
ドライスーツがあれば冬も春も快適
伊豆半島の周辺の水温は黒潮の影響もあって、秋は高止まり。水温も20℃以上ある日が多いようです。でも、年を越すと徐々に水温は下がっていって最低13℃ぐらいまで下がっていきます。年によっても異なりますが、20℃を切るとドライスーツのほうが快適に潜れるという方が多いと思います。インナーの調節も大切ですが、ドライスーツは水中であったかくて快適。ボートダイビングは船上で風を受けることが多いので、ドライであれば船上でも寒さ知らずですよ(帽子、グローブもご活用を)。