第1回 クマノミの仲間
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第1回 クマノミの仲間Anemonefishes
クマノミと聞くと、多くの方が思い浮かべるのが、オレンジ色で白帯の入った“カクレクマノミ”。ダイバーに限らず、そのかわいい姿が人気となり、一躍知られるようになった魚だ。実は“クマノミ”と一言でいっても、インド洋、太平洋の暖海に2属28種も生息している。日本ではクマノミ、ハマクマノミ、カクレクマノミ、セジロクマノミ、ハナビラクマノミ、トウアカクマノミの6種を見ることができる。
イソギンチャクと一緒に生活することで有名なクマノミの仲間たち。なかには決まったイソギンチャクとしか生活しない種もいる。また一般に、イソギンチャクは触手の刺胞を使って攻撃をするが、クマノミの仲間が体から出している特殊な粘液により攻撃されないとされている。
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クマノミの仲間
種類と生息場所
日本で見られる仲間たち
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<クマノミ>
最も北まで生息範囲を広げ、一般によく知られた種類。個体や大きさ、生息エリアなどによって色彩変異が激しいが、体に2本の白帯を持つ点は共通している。
【見られる海】千葉県以南
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<カクレクマノミ>
オレンジ色の地に3本の太い白帯が特徴。危険を察知するとすぐにイソギンチャクの中に隠れてしまう。性格はおとなしく、繁殖期でも攻撃してくることはほとんどない。
【見られる海】奄美大島以南
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<ハマクマノミ>
オスや若魚は鮮やかなオレンジ色だが、成熟したメスは濃い褐色。幼魚は目の後ろの白い太帯のほかに体側や尾柄部に白い横帯があり、しばしばクマノミと間違えられる。
【見られる海】奄美大島以南
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<セジロクマノミ>
オレンジ色の体色にかなり太い白帯が背中を走る。和名と特徴が一致していて覚えやすい。危険を感じるとイソギンチャクの触手内に逃げ込み、ほとんど外へ出てこない。
【見られる海】琉球列島以南
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<ハナビラクマノミ>
背中と目の後ろの白い帯が特徴。体色はいろいろで、潮通しのいいところに多く生息している。一般にイソギンチャクへの依存度が強く、あまり離れることはない。
【見られる海】奄美大島以南
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<トウアカクマノミ>
オレンジ色の体色にかなり太い白帯が背中を走る。和名と特徴が一致していて覚えやすい。危険を感じるとイソギンチャクの触手内に逃げ込み、ほとんど外へ出てこない。
【見られる海】琉球列島
そのほか世界で見られる仲間たち
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<スパインチーク・アネモネフィッシュ>
ほおに強大なトゲを持つことから、ほかのクマノミ類とは別属にされている。強烈なオレンジの地に3本の細い白帯が特徴。若魚やオスはそのような姿だが、 メスはオスよりずっと体が大きく、3本の白帯はくすみ、全体的に体色が黒ずんでしまう。内湾のようなよどんだ環境にいることが多い。
【見られる海】 アンダマン海からフィリピン、インドネシア、パプアニューギニア、オーストラリア北東部など
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<モルディブ・アネモネフィッシュ>
明るいオレンジの体色、目の後ろに太い白帯を持ち、腹ビレと尻ビレが黒いことが特徴。こうした模様は本種だけなので、他種と容易に区別することができる。センジュイソギンチャクと共生し、しばしば数十尾という集団になっている。またクマノミと同居していることもある。
【見られる海】 インド洋・モルディブ諸島およびスリランカ
おさかなコラム
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覚え方は「1ハマ、2クマ、3カクレ」
クマノミの種類を覚えるための語呂合わせに、「1ハマ、2クマ、3カクレ」というものがある。これは体にある白い帯の本数で種類を見分ける方法だ。白い 帯が1本ならハマクマノミ、2本ならクマノミ、3本ならカクレクマノミというように、簡単に覚えることができる。リズム良く声に出すと覚えやすい!?かも しれない。
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オスからメスへ性転換!?
クマノミの仲間はしばしばイソギンチャクの中に複数で生活している。ここで観察してもらいたいが体の大きさ。大きい個体と小さい個体がいるはずだ。実は 1番大きい個体がメスで2番目に大きい個体がオス、それ以外は繁殖能力をまだ持たない個体なのだ。一番大きなメスが死んでしまうと2番目に大きかったオス がメスに性転換し、それ以外の中から次のオスが登場するというサイクルになっている。
水中撮影のポイント
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ダイバーのみならず、多くの人から愛されるクマノミ。イソギンチャクと共生し、その中をくるくる動き回って生活している。動きが速く止まっている時間が 短いので、なかなかうまく撮れない魚のひとつだ。しかしイソギンチャクと共生しているため、寄ってもすぐに逃げてしまうことはほとんどない。その習性を利 用して撮ってみよう!
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お気に入りの場所を見極めよう
常に縦横無尽に動いているように見えるクマノミだが、実はお気に入りの場所をもっている。活発に動きながらも、隠れやすい場所など必ず戻ってくる場所が あるので、しっかりと観察をしてその場所を見極めよう。あとはお気に入りの場所でピントを合わせてじっと待機。クマノミを待ち伏せしてシャッターを切ろ う。
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流れを生かそう
動き回っているクマノミも、流れがあるとその流れに逆らって止まっていることがある。これは流れてくるエサをとらえるための行動と思われる。数尾でまとまっていることもあるので、このシャッターチャンスを逃さないように!!
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連写機能を使ってベストショットに!
水中撮影で連写機能!?と思うかもしれないが、これがなかなか使える機能!!動き回るクマノミ相手だと、シャッターを押してから写るまでの時間で逃げて しまったりする。1回のシャッターチャンスをものにすることはプロでも難しい。そこで利用したいのが連写機能。お気に入りの場所で連写することで、シャッ ターチャンスを生かせるはず。保存記録メディアの容量さえあれば、浮上後に必要のない画像を消去することが可能なので、水中では撮影に専念しよう。連写機 能時にフラッシュが発光しない機種は、明るい水中ライトで照らしながら撮るという方法もある。