第3回 チョウチョウウオの仲間
第3回 チョウチョウウオの仲間Butterflyfishes
世界に11属120種前後(研究者によって増減あり)が知られているチョウチョウウオの仲間。カラフルな体色をしたものが多く、まさにトロピカルといった感じの魚だ。そのほとんどが熱帯のサンゴ礁域に生息しており、日本では8属51種が分布している。
体色や模様の特徴がそのまま名前になっている種もいるので、特徴と名前を一緒に覚えてしまうと覚えやすい。見分けることが難しい種もいるので、生息場所や体の特徴を観察してみよう。またチョウチョウウオの仲間には固有種も多く、その海域ごとでしか見られない種もいる。
チョウチョウウオの仲間
種類と生息場所
<トゲチョウチョウウオ>
背ビレに“トゲ”のように伸びている部分があり、名前とセットにすれば覚えやすい。紅海のものは背ビレ後端の黒い眼状斑がない。体長は20cm程度になる。
【見られる海】
インド・太平洋に広く分布、日本では茨城県以南に生息
<セグロチョウチョウウオ>
名前のとおり、背中の大きな黒い斑紋が目印。幼魚は目を通る黒い帯があるのだが、成魚になるとほとんど消えてしまう。大きさは20cm以上になる大型種だ。
【見られる海】
西部太平洋の熱帯域とハワイ諸島、マルケサス諸島に分布、日本では千葉以南に生息
<チョウハン>
英名はraccoonで「アライグマ」という意味。その名のとおり、目を覆う黒いバンドがタヌキに似ている。単独またはペアでいることもあるが、しばしば群れをつくる。
【見られる海】
東はハワイ諸島から西は東アフリカ沿岸まで、インド・太平洋に広く分布、日本では千葉県以南に生息
<フエヤッコダイ>
非常に長い口が特徴。岩の隙間などに差し込んで底生生物を狙っている。よく似たオオフエヤッコダイは、口がさらに長く鰓孔の下に小さな黒点が散在する。
【見られる海】
中・東部太平洋を含むインド・太平洋に広く分布、日本では伊豆半島にも生息
<ムレハタタテダイ>
時には数百尾もの群れをつくることがある。よく似たハタタテダイとは群れないという生態的相違のほか、胸部の張り出しや尾ビレの縁がやや丸いことが見分けるポイントだ。
【見られる海】
ハワイ諸島、オーストラリア南西部、モルディブ、南アフリカなどに分布、日本では伊豆半島や紀伊半島に生息
<カスミチョウチョウウオ>
リーフエッジやドロップオフ、礁斜面などで群れをつくり、時にはその大群によって名前のとおり海の中が霞がかったようになる。大きさは18cmほどになる。
【見られる海】
GBRを含む西部太平洋、ポリネシア、ハワイ諸島に分布、日本では和歌山県以南に生息
<ユウゼン>
黒い友禅柄が特徴の日本固有種。小笠原の父島や八丈島では春先に「ユウゼン玉」と呼ばれる群れを見ることができる。見られるエリアも限定されているので人気がある。
【見られる海】
伊豆諸島、小笠原諸島、高知、沖縄の西部北太平洋
<クラカケチョウチョウウオ>
英名はPanda butterflyfishと呼ばれ、その名のとおりパンダのような黒いアイパッチがある。フィリピンの海ではごく普通に見られる。性格は控えめで臆病。
【見られる海】
南日本を含む、フィリピンからGBRなどの西太平洋
<ティンカーズバタフライフィッシュ>
斬新な配色で魚マニアに人気がある。主にハワイ諸島の水深40~50m以深の深場に生息し、一般のファンダイビングで出会う確率は非常に低い。大きさは15cmほどになる。
【見られる海】
ハワイ諸島とマーシャル諸島の地域限定種
おさかなコラム
日本の固有種って知ってる?
生息場所が限定されている種や固有種は、珍しい場合が多く人気も高い。そこでチョウチョウウオの仲間にはどんな地域限定種や固有種がいるのか紹介しよ う。まずは日本を代表する固有種“ユウゼン”だ。黒い友禅柄が特徴で、小笠原の父島や八丈島では春先に「ユウゼン玉」と呼ばれる群れを見ることができる。 体色も落ち着いていてなんだか「和」を連想させてくれる魚だ。日本の固有種なのでぜひ覚えてほしい。
世界の地域限定種と固有種
世界にもさまざまな地域限定種や固有種がいる。まずはゴールデンバタフライフィッシュ。紅海を代表するチョウチョウウオで、濃いイエローと青いパッチが印象的だ。浅場をペアでゆっくりと泳いでいることが多いが、しばしば群れをつくることもある。紅海全域とアデン湾に生息している。そのほかにもバハカリフォルニアとガラパゴス諸島などの地域限定種であるサイズバタフライフィッシュやハワイ諸島の固有種であるブルーストライプトバタフライフィッシュなどがいる。
水中撮影のポイント
習性を利用して撮影の基本“寄り”を実践
海の中でよく見かけるが、なかなか動きが速いのがこのチョウチョウウオの仲間たち。夢中でシャッターを切ったが、画面から体が切れてしまったなんてこともありがち。そんなときにはチョウチョウウオの習性を利用した撮影に挑戦しよう。
まずは泳ぐコースを予測して撮ることが大切になってくる。またチョウチョウウオがサンゴを突付いているときは、食事に夢中になっているので近づくチャン ス!さらにナイトダイビングならすっかり寝てしまっているチョウチョウウオに簡単に近づけて撮影もしやすい。なかには夜だけ体色が変化する種もいるので、 チェックしてみよう!
被写体を選びも撮影スキルのひとつ
魚には個体差があるので、ゆっくり泳いでいたり、エサを食べていたりする個体を狙って撮影をすることが成功へのポイントになることもある。被写体を見つけたら、すぐに近づかず、少し観察することも大切だ。
被写体だけでなく、背景選びもポイント。カラフルな体色のものが多いチョウチョウウオの仲間を撮影するなら、コントラストを生かして青をバックにしたり、きれいなイソバナをバックにしてみたりと、いろいろなバリエーションを楽しむことができる。ぜひ挑戦してみてほしい。