第4回 ウミガメの仲間
第4回 ウミガメの仲間Sea turtles
ダイバーに限らず多くの人々から人気を集めるウミガメの仲間たち。おさかな図鑑の中で紹介するが、ウミガメは魚類ではなく、は虫類に分類されることを覚え ておこう。呼吸はもちろん肺呼吸、時々水面まで浮上して呼吸をしているのだ。ウミガメは、世界に7ないし8種生息している。一般に日本で見られ、よく知ら れているのは、アオウミガメ、アカウミガメ、タイマイだろう。
海で見られるは虫類には、ウミガメの仲間のほかにも、ウミヘビの仲間がいる。ウミヘビの仲間は日本では9種が知られている。
ウミガメの仲間
種類と生息場所
ウミガメの仲間
<アオウミガメ>
名前のとおり、青から緑がかった体色をしていることが多いが、黒っぽい個体も多い。日本では5~8月、屋久島や奄美大島、琉球列島、小笠原諸島の砂浜に産卵のために上がってくることが知られている。甲長は80~100cmにもなる大型種で、主に海藻などを食べる。
【見られる海】
太平洋、インド洋、大西洋の熱帯から温帯にかけての海域に生息し、南日本の沿岸でもしばしば見られる
<アカウミガメ>
体色は赤みがかった褐色だが、体色よりも顔に特徴がある。ほかのウミガメと比べていかつい顔をしているので、一目瞭然で見分けることができる。太平洋のア カウミガメの繁殖地は、日本(主に本州中部以南から琉球列島にかけて)とオーストラリアのみで、特に北太平洋のアカウミガメの故郷はほとんど全てが日本と 推測される。甲長は70~100cmになり、主に甲殻類や軟体動物などを食べる。
【見られる海】
太平洋、インド洋、大西洋の熱帯から温帯、および地中海に生息
<タイマイ>
英名“Hawksbill turtle”(Hawksbillはタカのくちばし)のとおり、尖ったくちばしをしており、アカウミガメやアオウミガメと比べるとスマートな印象。甲の 後縁がギザギザしていることも特徴だ。甲の背面は美しいモザイク模様をしている。日本では奄美大島や琉球列島で産卵することが知られているが、数は少ない ようだ。甲長は70~90cm程度で、主にカイメンなどを食べる。
【見られる海】
太平洋、インド洋、大西洋の熱帯域に分布し、“サンゴ礁のウミガメ”というイメージが強い
ウミヘビの仲間
<エラブウミヘビ>
体色や模様は、個体や年齢などによって変化し、成長すると長さ1.5mに達する。夜行性で昼間は海岸の岩の隙間などに潜んでいることが多く、9~12月ごろ、陸上の洞窟などに上がってきて産卵する。
【見られる海】
日本近海からインドネシア付近まで、東南アジア一帯の海に生息し、琉球列島沿岸でよく見られる
<クロガシラウミヘビ>
昼間から活動し、スノーケリングで遭遇することが多い。水面に上がって呼吸をするとき、スノーケラーに向かってくるように見えるが、攻撃をしてくることはほとんどない。ただし、強い毒を持つので手は出さないこと。
【見られる海】
主に琉球列島から台湾、フィリピンの近海
<イイジマウミヘビ>
小さな頭部と不明瞭な横帯が特徴で、ダイバーもしばしば遭遇する。ハゼやギンポなどの卵を食べるという変わった食性をしている。また歯はほとんど退化し、毒牙や毒腺もない。長さは90cm程度になる。
【見られる海】
主に琉球列島から台湾、中国近海で見られる
おさかなコラム
不思議な行動にはワケがあった
ウミガメの仲間は、時々水面に上がってきたり、よく水面付近を泳いだりする。ダイバーやスノーケラーなら、そんな姿を見たことがあるだろう。水面に上がっ てくる第一の理由は呼吸。は虫類は魚類の鰓呼吸とは違い肺呼吸のため、どうしても息を吸う必要がある。またもう1つの理由として甲羅干しが考えられる。は 虫類は変温動物なので、水面付近で甲羅干しを行なうことで体温を上げている。(変温動物とは、外部の温度によって体温が変化する動物のことで、我々ほ乳類 は恒温動物と呼ばれる。)
名前が“ウミヘビ”なのにウミヘビじゃない!?
名前が“○○○ウミヘビ”だからといって、は虫類のウミヘビの仲間とは限らない。その代表がダイナンウミヘビとホタテウミヘビだ。この2種は名前に“ウミヘビ”と付くが、ウミヘビの仲間ではなくウナギの仲間。ウナギ目にはウミヘビ科という分類があり、その中に属している。ちなみにウミヘビ科はは虫類のウミヘビではなく、魚類なのでご注意を!ウミヘビの仲間とウナギの仲間は見た目は細長くにょろにょろしていて似ているが、鰓呼吸と肺呼吸は大きな違い。この2種はダイバーにもなじみがあるので、覚えておこう。
水中撮影のポイント
バディと協力して被写体へ寄ろう
ウミガメの仲間はゆっくりとした動作に似合わず、本気で泳ぐとかなりのスピード。また“逃げ”の態勢に入られるとまず後ろからの写真しか撮ることができな い。そこでカメを見かけたら、警戒されない距離のままバディに大きく回りこんでもらい、挟み込むようにして近づいていくと寄れることが多い。ただしストレ スを与えるほど追い込まないこと。とにかくゆっくり泳ぐことが大切だ。
撮影の基本である“寄り”をしっかりとするには、被写体へ近づく方法から気をつける必要がある。ウミガメの仲間に限らず、「見つけた!」という喜びで追い掛け回すと、あっさり逃げられてしまう。
ウミガメの特徴をつかんで印象的な写真を撮る
ウミガメの仲間は見た目が特徴といってもいい。その姿を見ただけで、誰もがウミガメと思える体形だ。そんな特徴を生かすには、写真のようにシルエットを写すのがおすすめ。ノーストロボで撮れば意外と簡単に撮ることができるが、この場合いくつかの撮影ポイントがある。
最も大切なことは、被写体の特徴をシルエットでもわかるようにしっかりと収めること。ウミガメの場合は、首がちゃんと伸びて、前後の足がしっかり収まるよ うなアングルで撮りたい。首や前後の足がちゃんと伸びていないときにシャッターを切ると、甲羅の陰に隠れてしまい、せっかくのウミガメの特徴がわからなく なってしまうので注意しよう。
食事中はシャッターチャンス!
ダイバーを入れこむ
アップで豊かな表情を出す