年間125万人が訪れるダイビング情報サイト

【短期集中連載】耳・鼻・のどのトラブルを解決!
Vol.3 船酔い? 波酔い?
耳鼻咽喉科にまつわるダイビングトラブル

月刊『マリンダイビング』の人気連載「耳鼻咽喉科領域の潜水医学」(北島尚治著)が加筆・修正され、2020年7月、同タイトルの書籍として発売された。
ここでは3回にわたってダイバーが陥りやすい耳・鼻・のどのトラブルの防止策、対処法をわかりやすく紹介していきます。
最終回の第3回は、ダイバーあるあるな船酔いや波酔いについて、耳鼻咽喉科的な角度から解決法をご紹介。

■監修/北島尚治(医学博士)■イラスト/鈴木伸 ■構成・文/本誌・後藤

船に乗ると酔う

多くのダイバーが通る道

 これまでまったく船酔いも波酔いもしたことがない、という方も中にはいるけれど、たいていの方がダイバーになって船に乗ると酔う。今は「船酔い、何それ?」と先輩風をふかしている人だって、最初の頃は酔っていたに違いない。船酔い、波酔いをすると、気持ち悪くなって吐き気を催し、しまいには吐くこともある。ひどい場合は顔面蒼白になったり冷や汗をかいたりする。人によっては船から下りれば治るけれど、いつまでたっても揺れているような気がして治らないという人も。
 ちなみに、耳鼻咽喉科医の北島尚治先生によれば、船酔いなどの乗り物酔いは、「体に受けた動揺刺激と、予想された刺激との間で感覚不一致(ずれ)を起こした際に生じる“空間認知障害”」であり、医学的には「動揺病」と呼ぶのだそうだ。
 多くの人はダイビングの経験が増え、ボートダイビングに慣れてくると船酔いもしなくなるのだが、どんなに経験を積んでも船酔いをする、感受性の強い方も少なくない。北島先生によれば「動揺病の感受性は加齢によって低下し、女性が男性よりも高い傾向がある」のだとか。
 船酔いに強くなるにはどうしたらいいのだろう?

ボートダイビングで絶対に乗ることになるボート。筆者も最初の頃はほんの5分足らずの距離でも船酔いしたものだ。今ではまったく問題ないが

ボートダイビングで絶対に乗ることになるボート。筆者も最初の頃はほんの5分足らずの距離でも船酔いしたものだ。今ではまったく問題ないが(写真はイメージです)

船酔いの予防

体調管理、睡眠が大事

 自分が船酔いするとわかっている方は、船酔いにならないよう予防が必要。
 基本的には、「適度な運動(日々の運動不足の改善)、十分な睡眠、体調不良や脳機能低下の改善、適切な食事が重要」だと北島先生はいう。

また、英国空軍が行なっているコリオリ刺激訓練が加速度変化に耐えられるようになる、いい運動なのだという。コリオリ刺激とは、回転いすに座って一定速度で同一方向への水平回転中に頭部を前後左右に不規則に傾斜させるもの。これを何度も繰り返すことで、動揺病が改善すると報告されているのだ。
 酔い止め薬には一般に第1世代抗ヒスタミン剤が使用されている。これには眠気の副作用があるので、効能時間を考慮した上で早めに服用するのがポイント。抗ヒスタミン剤の含まれない酔い止め薬を選ぶのもいい。

らせん階段の昇り降りは、コリオリ刺激と同様の動作となる。日常的に利用して動揺病から無縁の体になりたい

らせん階段の昇り降りは、コリオリ刺激と同様の動作となる。日常的に利用して動揺病から無縁の体になりたい

船上での予防

 睡眠も十分にとった、体調も万全、しかも前夜に酔い止め薬も服用した……としても、船に乗るとどうしても不安をぬぐい切れない。そんな方は、船に酔わないように行動をすることを勧めたい。

 まず船上での場所。そもそも船は平らではない海面を移動するのに上下したり、エンジンで振動したり、さまざまな揺れが起こる。特に舳先は揺れが激しいことで知られる。それならば、揺れが少ないところはどこだろう? できるだけそういう揺れの少ないところにいれば、酔いにくくなるというものだ。
 一般的には船の後部で、横幅の中央、水面に近いところがいいといわれる。排気が流れてくるような場所はそのにおいで酔ってしまうこともあるので、それを避けながら後部にいようというわけだ。またできれば屋内ではなく屋外の風通しのいい場所がオススメだ。

一般的には船の後部で、横幅の中央、水面に近いところがいいといわれる。排気が流れてくるような場所はそのにおいで酔ってしまうこともあるので、それを避けながら後部にいようというわけだ。またできれば屋内ではなく屋外の風通しのいい場所がオススメだ。

これって波酔い?

浮上後ボート待ちをしていたら、だんだん気分が…

 ボートでダイビングスポットまで行き、ドリフトダイビング。アンカリングダイビングと違って、船に戻らなくてはいけないわけではないので安全さえ考慮されていれば、とても快適なダイビングスタイルである。でも、ダイビングが終わってボートがすぐ来てくれればいいけれど、波があるときにボート待ちしていると、だんだん気分が悪くなって……。
 これがいわゆる「波酔い」。船酔いと同じように動揺刺激によって空間認知に障害が起こるというもの。海況がいいときはさほど起こらないけれど、ちょっと波が高い日などは小刻みに体が上昇したり降下したりするので大変。
 実はボートダイビングだけでなく、ビーチダイブで水面移動するときも波があると「波酔い」を起こす場合もある。
 陸や船に上がれば治るのでしばしの辛抱だ。

耳鼻咽喉科領域の潜水医学

判型:B5判 全116ページ
本体価格:2,800円+税
(株)水中造形センター刊

絶賛発売中!
世界初 耳・鼻・喉の潜水医学書

耳鼻咽喉科領域の潜水医学
耳ぬき傷害などのダイビングトラブルにどう対応するか
医学博士 北島尚治 著

本誌で2017年11月号から2019年12月号まで掲載していた同タイトルの連載を加筆・修正、一冊の本にまとめた。ダイビングのことを知らない多くの耳鼻咽喉科医にも読んでほしいという北島先生の願いから、内容は医学生向けのテキストにもなるほど細かく難解に見えるが、ダイビング時やダイビング前後に耳・鼻・のどにトラブルを抱えている、抱えたことのある方には大いに役立つこと間違いなし!
耳鼻咽喉科領域のみの潜水医学書はこれまで日本にはもちろん海外にも存在していなかった世界初のもの。
今回ピックアップしているトラブルについても、起きる理由や対処法、治療法などが詳細に解説されている。ダイバーなら読んでおきたい。

ご購入はこちら

絶賛発売中!
世界初 耳・鼻・喉の潜水医学書

耳鼻咽喉科領域の潜水医学
耳ぬき傷害などのダイビングトラブルにどう対応するか
医学博士 北島尚治 著
耳鼻咽喉科領域の潜水医学

判型:B5判 
全116ページ
本体価格:2,800円+税
(株)水中造形センター刊

本誌で2017年11月号から2019年12月号まで掲載していた同タイトルの連載を加筆・修正、一冊の本にまとめた。ダイビングのことを知らない多くの耳鼻咽喉科医にも読んでほしいという北島先生の願いから、内容は医学生向けのテキストにもなるほど細かく難解に見えるが、ダイビング時やダイビング前後に耳・鼻・のどにトラブルを抱えている、抱えたことのある方には大いに役立つこと間違いなし!
耳鼻咽喉科領域のみの潜水医学書はこれまで日本にはもちろん海外にも存在していなかった世界初のもの。
今回ピックアップしているトラブルについても、起きる理由や対処法、治療法などが詳細に解説されている。ダイバーなら読んでおきたい。

ご購入はこちら

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE