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ニュース2020.10.28
沖縄本島恩納村沖の海底調査で約300年前の琉球王朝の甕を発見!
―知的ダイビング・スタイルへの期待―
去る10月12~17日に沖縄本島の恩納村沖で、約300年前の琉球王朝時代の航海や港跡を研究するチームによる海洋調査が行なわれ、海底に沈む遺物が多数発見されました。
恩納村沖での海洋調査の様子(「恩納潜水」瑞慶山良貴氏撮影)
この調査は、佐賀大学と琉球大学を中心機関として、沖縄県恩納村博物館と連携しながら実施されたもので、今回が第3次目。これまでに「ナカユクイ」や「クロスライン」などダイバーにもおなじみのダイビングスポットに近い場所でも調査が行なわれており、18世紀代の陶磁器が溜まって沈んでいる場所や「碇石」(金属製アンカーが普及する前の船の木製の碇を沈めるための錘)なども発見されています。この海域にはまだ多くの遺物が沈んでいると推測されており、今回も地元ダイビングショップ(恩納潜水、キング・マリン)などの全面的な協力を得て、一般ダイバーも参加しての実施となりました。
この調査の目的は、本格的な発掘調査の前段階として海底を目視して回り、発見した遺物の計測や写真・映像撮影、条件が合えば引き上げまでを実施するというもの。調査を担当した佐賀大学の宮武正登教授によると、期間中はあいにくのコンディションでうねりなどもあり、想定していた重要ポイントでの調査が制約されたものの、候補地のひとつであった小さな入江跡で、およそ300~350年前、17世紀代の琉球王朝時代の大甕が数多く発見され、今までの調査の中で最大の発見となったそうです。
発見された海底の大甕(宮武教授撮影)
近世琉球の頃、恩納村は良質な陶土の産出地となっており、仲泊や前兼久などの港から那覇へ運ばれ、壺屋で陶器となっていました。今回発見された甕は、その頃に制作されたものではないかと考えられています。発見された水深はなんと5~8m前後という非常に浅い場所。サンゴのガレ場の中に埋まっていたことで台風などの影響も少なかったようで、とても良い状態で見つかったとのことです。宮武教授によれば、分布範囲が広く、琉球瓦なども交じっていることから、船の沈没を避けるために積み荷の甕を次々に落としていったか、または複数の船の積み荷が沈んでいるという可能性も。流れのある場所で散逸する可能性が高いということで6点ほどの甕が引き上げられました。今回引き上げられた甕は、2020年11月21日(土)より恩納村博物館で開催される企画展「恩納村の水中文化遺産展」で展示されるとのことで楽しみです。
引き上げられた遺物(宮武教授撮影)
今回、甕が見つかった場所は、レジャーダイビングでも潜れる海域のため、地域の生涯学習の場や「観光資源」として活かす方法なども、村の関係者や調査に参加した地元ダイバーを交えた意見交換会で話し合われたそうですが、問題となったのが「遺跡の保護」について。盗難や破損などの危険度を考えると、むやみに一般公開は難しいという意見が大勢を占めたとか。また、前述のとおり恩納村沖の海域には、まだ多くの遺物が沈んでいると思われ、もしかするとファンダイビング中にダイバーが発見することもあるかもしれません。そのようなときに、どのように遺物を扱えばよいのか。ダイバーとしてのモラルはもちろんのこと、業界としてのガイドラインを設け、遺物の保護と観光資源としての両立ができる環境を築いていく必要がありそうです。
「貴重な海底の歴史遺産の第一発見者になる可能性をあらゆるダイバーは持っているし、実際に関東近海や南紀での発見例もあります。それに備えて基本的ルールを確立し”アカデミック・ダイビング”を推奨することも、われわれ学術サイドにとっての重要な課題です」と宮武教授。今後も沖縄だけでなく伊豆でも一般ダイバーを交えた海洋調査が計画されており、その活動の中で最適な対応マニュアルを作っていきたいと話されていました。
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