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現地の海から2021.05.18

「サイパンの珊瑚の産卵観察プロジェクト」
サイパンで調査を実施中!

2020年からスタートした「サイパンの珊瑚の産卵観察プロジェクト」が、今年も調査をスタート。これまでの活動の流れや、今年の活動について、《サクラマリン》のアカリさんに詳しく教えていただきました。

「サイパンの珊瑚の産卵観察プロジェクト」

■プロジェクトの始まり

「サイパンの珊瑚の産卵観察プロジェクト」は、2020年に入国制限が始まり、サイパンからツーリストがいなくなって3カ月が経った頃の6月下旬に発足しました。2年前に《サクラマリン》のゲストと共に4日間連続で調査をした時にも、実際に産卵をとらえることはできず、ゲストと「また来年調査しよう!」と約束したのですが・・・まさかの入国制限によりダイバーゼロの日々の始まり・・・。

そんな時に「今年はサンゴの産卵調査をしないんですか?」と声をかけてくれたのが《アンクラー》の西川裕くん。
「そうだよね。ゲストがいないってことを逆にチャンスとするならば、このタイミングでなんとかサイパンのサンゴの産卵のデータをとって、またみんなが遊びに来られるときになったらご案内できるようにしておきたいよね!!」
励まされた思いで、調査を始めることを発表すると、あっという間に賛同してくれる仲間も増えていきました。

《メイクシュア》の高橋卓くん、《セルフィッシュ》の野々垣雄一くん、《スーパーフィッシュ》の名塚誉くん&石原美雪ちゃん、《サクラマリン》の田中祐美子さん。2020年は3回(全25日26ダイブ)にわたって調査をしたのですが、最後の回にはサイパンで長年ガイドをしているヘンリーと奥さんのカオリさんも参加してくれました。

「サイパンの珊瑚の産卵観察プロジェクト」

コロナ禍で気持ちが沈んでいたのは我々だけでなく、サイパンが大好きで通ってくださっていたリピーターさんも同じだったようで、我々が顔を上げて未来を見つめ、活動を始めたことを知ると、自分のことのように喜んで応援してくださいました。活動費用を集めるためのクラウドファンディングも行なったのですが、予想を上回るご支援をいただきました。

■2020年で印象に残った活動

去年の調査ダイブ26本のうち、印象に残っているダイビングは2本。1本は、初めてハマサンゴの仲間の産卵を観察できたときです。

実はそれまで実際にサンゴの産卵を見たことがあるメンバーは1人もおらず(厳密にいうと高橋卓くんは大学時代の研究室の水槽の中での産卵は見たことがあったようですが、自然の中での産卵は見たことがありませんでした)、実際に目の前で産卵が始まっても誰も確信が持てないという問題が・・・。

しかも、初めて見たのがハマサンゴの産卵。いわゆるミドリイシサンゴの仲間の産卵(ピンク色の卵がユラユラ上がっていく)の映像は見たことがある方も多いかと思いますが、ハマサンゴの仲間はシューーーーシューーーーと、想像していたよりもとっても小さな卵を産卵するのです。

「サイパンの珊瑚の産卵観察プロジェクト」

まるで煙を吹いているかのようなハマサンゴの産卵を目の前に、私たちは大興奮でした。

もう1本のダイビングは、ミドリイシサンゴの大産卵を見たときです。

「サイパンの珊瑚の産卵観察プロジェクト」
「サイパンの珊瑚の産卵観察プロジェクト」

周りのサンゴが、申し合わせたように一斉に卵(バンドル)を放出して、漆黒の海の中層にユラユラ浮かんでいきます。行ったことはありませんが、それはまるで宇宙空間にいるような感覚でしょうか。ダイビングの後、島の西側に戻ってきた時の車の中での感情は今でも忘れられません。
「いつもと変わることのない夜を過ごしているけど、今夜、海の中には宇宙が広がってたんだよ。」
信号待ちをしている隣の車とか、明かりがともっているマンションの窓とか、人の気配がする場所すべてに大声で言いたい気分でした。と同時に、自分がサイパンで暮らしてきた18年に思いを馳せて、「この18年の間も実は毎年サンゴたちは漆黒の海の中で小宇宙を繰り広げ、命を繋げてきたんだ・・・」とガツンと自分の無知と経験の浅さと、逃してしまっていた数々のチャンスを思い知るようでした。

■2021年の活動について

本来は今年のサンゴの産卵の時期は、コロナも終息しゲストと一緒に、またプロジェクトメンバーも一緒に「サイパンの珊瑚の産卵観察祭り」を開催する予定でした。しかしながら、まさかの1年以上の入国制限。

期せずして2年目をまたノーゲストで迎えることになってしまった「サイパンの珊瑚の産卵観察プロジェクト」ですが、やはり1年目同様、決して歩みを止めないことが応援してくれている皆様に対する恩返し。ということで、「サイパンの珊瑚の産卵観察プロジェクト2021」を再起動しました。

「サイパンの珊瑚の産卵観察プロジェクト」

ここに新たなるメンバーが参加の名乗りをあげてくれました。《S2クラブ》の中丸健太郎くん、《HGD》のポリケアマユキさん、《アクアゲート》の若杉忠昭くんです。まだまだプロジェクトメンバーは募集中。なぜなら、今年の最大の目標は、違うポイント(島の西側のパウパウビーチ)で同時に同じ種類のサンゴが産卵しているのかどうかを知ることだからです。

「サイパンの珊瑚の産卵観察プロジェクト」

サイパンは元々、ナイトダイビングはそれほど盛んではなかったということや、国の調査機関(研究機関)の本部がグアムやハワイにしかないということもあり、サンゴの産卵はそれほど知られることもなく今まできました。沖縄やオーストラリアのように長年のデータもありません。

しかしながら「千里の道も一歩から」。その一歩一歩を応援してくださるサイパンが好きなゲストの皆様とシェアしながら、自分たちも少しずつ勉強していけたら楽しいなと思っています。

「サイパンの珊瑚の産卵観察プロジェクト2021」の最新情報はこちら

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