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最高の素材と熟練の技術が生み出す
KINUGAWAラバーの真髄

最高の素材と熟練の技術が生み出すKINUGAWAラバーの真髄

国内外で高い評価を受ける「メイドインジャパン」のKINUGAWA製品。中でもGULLのラバー(ゴム)フィンは、その抜群の使用感で数多くのダイバーが愛用しています。今回は鬼怒川パシフィック技術部の藤田尚隆さん、営業企画の五味高広さん、東京営業の石井友樹さんにお話をうかがい、KINUGAWAラバーの真髄に迫ってみました。

聞き手:鴫谷隆(マリンダイビングWEB編集長)

KINUGAWAのゴムづくりの歴史

――「ラバー(ゴム)フィンといえばGULL」というくらい、多くのダイバーから高い評価を受けるGULLのラバーフィンですが、そのゴムづくりがスタートしたのはいつ頃なのでしょうか?

藤田:GULLブランドを製造しているKINUGAWAのベースは《鬼怒川ゴム》という会社で、ウェザーストリップなど自動車のゴム部品を主に作る会社でした。そこから、周囲を海に囲まれた日本という環境ならではの新たなチャレンジとして、立石の工場を使ってマリンレジャーの道具を作ろうということになり、当時の《鬼怒川ゴム》の社長の息子さんが代表となって《鬼怒川パシフィック》が立ち上がったのが今から53年前(1967年)です。当時はまだ国産のダイビング器材はなく、海外からの輸入品しかなかった時代。「世界一のマスク、フィン、スノーケルをつくる!」と一大スローガンを掲げ、メイドインジャパンのダイビング器材として、第一歩を踏み出しました。

――当時はどのような製品を作っていたのですか?

藤田:実はダイビング器材を作る前、最初はゴムのおもちゃを作っていました。スーパーボールや、年配の方はご存知かと思いますが、縁日で売っているカエルのおもちゃ(ポンプで空気を送るとカエルがピョンと跳ぶもの)を製造していました。工場のあった立石が下町ということもあり、関連業者も多かったことから、縁日で見かけるおもちゃからスタートしたそうです。

鬼怒川パシフィック時代の最初の頃に製造していたカエルのおもちゃ

鬼怒川パシフィック時代の最初の頃に製造していたカエルのおもちゃ

株式会社キヌガワの沿革

こだわりのゴムはどのように作られる?

――時代を感じますね。その後、マスク、スノーケル、フィンの製造に進み、今のGULLの製品へと続いていくと思うのですが、GULLの製品に使われているゴムはどのように作られているのでしょうか?

藤田:GULLの製品のゴムのベースとなっているのが「天然ゴム」です。ブロックで輸入した天然ゴムに、ロールと呼ばれる練り機でいろいろな薬品を入れて混ぜて練ることで、必要な反発や硬さなどを調整し、熱と圧力を使って成型するというのが全体的な流れです。

――天然のゴムを使っているんですか。

藤田:GULLの製品の最大のこだわりが、この天然ゴムを使うということです。天然ゴムは、輪ゴムをイメージしていただけるとわかると思いますが、非常に反発力や弾性に優れており、これに勝るゴムはないと考えています。ただし、天然ゴムだけだと、時間が経つと劣化して弱くなってしまうので、いろいろな薬品やそれに見合う合成ゴムを混ぜて、必要な硬さを出すことで、やっと製品ができ上がります。

天然ゴム

天然ゴム

合成ゴム

合成ゴム

――ベースになる素材としては天然ゴムが最高で、そこに何を加えるかによって、より用途に合ったフィンにしていくというのが、メーカーとしての腕の見せ所というわけですね。

藤田:いわゆる「配合」という言葉を使うのですが、様々なレシピがあり、多種多様なゴムがつくり出されています。また、天然ゴムは「天然」というだけあって、採れる産地や年代によって、必ずしも硬度や色などが一定ではありません。それをいかに安定させるかというところも最大の研究どころとなっています。

――天然ゴムはなかなか難しい素材なのですね。

藤田:それでも天然ゴムに勝る素材はないという信条でやっています。海外製のフィンなどは合成ゴムだけで作られていたり、天然ゴムが使われていてもほんの少しの割合だったりということが少なくありませんが、GULLの製品は天然ゴムの配合率が非常に高く、それがGULLのフィンのしなりや蹴り心地に対する高い評価につながっていると信じています。最近は技術が進んでいるので、だいぶ天然ゴムに近い合成ゴムというのも出てきているのですが、それでもやはり比べると、天然ゴムが一番ですね。

――食品でいう天然ものと養殖ものの違いのようなものでしょうか(笑)

藤田:そうですね。合成ゴムは同じ規格で同じように作られているので、安定していてバラつきは少なく、業者から常に一定のものを仕入れることができます。それに対して天然ゴムは、先ほどもお話ししたように硬度や色などもバラつきがあるので、一定にさせるのが至難の技ではあります。うどん屋さんでいえば、いかに一定のコシを出すかといったところでしょうか(笑)。気候であったり、湿度であったり、その時の状況を加味しながら、最高の状態にゴムを仕上げるようにしています。

――すごいこだわりですね。その判断はどのようにしているのですか?

藤田:もちろん最終的には機械をとおして検査をするのですが、基本的には熟練の職人技ですね。長年の経験を生かして調整をしています。色についても、元々ゴムは黒いものしかなく、色をつけるのは非常に難しいものでした。そこに配合を工夫することで着色しているのですが、天然ゴムであるが故に、去年のものと今年のものでは若干色が違ってしまったりすることもあります。

――それもプラスチック製のものにはない、個性や味といえますね。ちなみにゴムに、つけやすい色とつけにくい色はあるのですか?

藤田:やはり蛍光色などの明るい色はなかなか難しいですね。およそ数百度くらいの熱と圧力をかけて成型するものなので、蛍光色など発色の良い色は熱で色が飛んでしまうのです。
特に人気のホワイトは毎年苦戦しています。

天然ゴムにいろいろなものを混ぜていきます

天然ゴムにいろいろなものを混ぜていきます

着色されたゴム

着色されたゴム

――GULLのラバーフィンはとてもカラーバリエーションが豊富ですが。

藤田:実はこれはすごいことで、天然ゴムをこれだけ配合していながらこれだけ色を出せるのは、正直なところ世界中でも非常に珍しいと思います。営業部からは毎年、細かな色の希望が出るのですが(笑)、苦労しながらなんとか作っています。昔だと黒や緑、赤、黄色ぐらいだったのですが、今はすごく微妙な色合いのものも作れるようになり、硬度も含めてゴム業界ではかなり異色なことをしていますね。

――当たり前のように見えても、実はかなり特殊で難しいことをやっているのですね。

トライアルを繰り返し、本当に使いやすいフィンを開発

――こうしてできたゴムをフィンにする場合、硬さや形についてはどのように決めているのですか?

藤田:シンプルな形であればこれくらいの硬さだなとか、最近のフィンのように複雑な形であればこれくらいの硬さだなとか、あるいはフィンの長さによってこれくらいだと蹴りやすいのではないか、これぐらいだと推進力が出やすいのではないかなど、ある程度イメージをしつつ、いくつものサンプルを作り、それを営業部のスタッフも交えてトライアルをして、最終的に決定するという流れです。

――データ的なところよりも、人間的なところで決めるのですね。

藤田:そうですね。やはり最後は人が使うものなので、最終判断は使ってみてというところですね。

――最初に形とか硬さというのは誰がリクエストするのですか?

五味:基本的には、現場やお客様からのニーズを受けて営業部から要望を出します。そこで、今あるフィンのもう少しブレードの短いものが欲しいとなったら、今あるフィンを少し削って、どこまで短くすればいいか試してみるなど、たくさんサンプルを作って(笑)いろいろと試してみます。現場にカッターを持っていき、切っては試し、切っては試し。ブレードを切ったり、キールを削ったりしました。逆に長いフィン、たとえばバラクーダを作るときは、ミューを切って継ぎ足して試してみたりしました。金型を作るのは非常に時間と労力がかかるので、作ってみてダメだとは簡単に言えません。今あるものを生かして試作品を作り、それである程度まとまってから型をつくるといった感じですね。

熱と圧力により成型します

熱と圧力により成型します

型から出されたフィン。まだバリがついています

型から出されたフィン。まだバリがついています

藤田:金型ができてからも、たとえばハイブリッドと呼ばれるフィンは、キールの部分だけ硬いゴムを仕込むなど工夫をしています。フィンの場合、ブレードの「長さ」、ゴムの「硬さ」、「厚さ」の3つが大きなポイントになりますので、それらを試行錯誤しながら調整し、完成品に近づけていきます。GULLは歴史があるだけに、経験値があり、サンプルもあり、みんなでトライアル繰り返して、データが全てではなく、最終的には人が決めることをポリシーとしています。

――「データが全てではなく、最終的には人が決める」。いい言葉ですね。いろいろと試しながらゴムの硬さを自由自在に調整できるのも、自社で天然ゴムをベースにゴムづくりをしているGULLならではの特徴でしょうか。1つのフィンができるまで、こんなに手がかけられているのがわかると、ますますGULLのフィンに愛着がわきますね。

藤田:とても人間味のある、アナログなものづくりなのですよ。

プラスチックのパーツの組み合わせでなく、複数のゴムを熱と圧力で成型するため、色の混ざり具合もフィンによって違いがあります。これも天然ゴムを使っているが故の味

プラスチックのパーツの組み合わせでなく、複数のゴムを熱と圧力で成型するため、色の混ざり具合もフィンによって違いがあります。これも天然ゴムを使っているが故の味

自分に合ったフィンはどのように選べばいい?

――GULLのラバーフィンに対する情熱がとても良くわかりました。では数あるGULLのラバーフィンの中で、自分に合ったフィンはどのように選べばいいでしょうか?

石井:藤田からも話がありましたが、まず1つ目に長さ、キールの硬さ、ブレードの厚さなどフィンの特徴を考慮すること、2つ目が一番重要で、自分のダイビングスタイルやシチュエーションに応じてフィンを選ぶのがいいと思います。たとえば、より力強く泳ぎたいと思うなら、ミューよりもスーパーミューにしてみようか?など、カタログなども見ながら、製品の特徴を踏まえて選んでいただければと思います。

GULLのフィン一覧

――具体的には、脚力に自信がない、キックの仕方に慣れていない初心者ダイバーには、どのフィンがおすすめでしょうか。

石井:それならサイファーのようにブレードが短めのフィンです。長いとやはり扱いが難しく、サンゴを蹴ってしまったり、砂を巻き上げてしまいやすくなります。ブレードの厚さも薄めなので、しなりやすいのも特徴です。自転車こぎになりにくく、しっかりと蹴り切ることができるので、フィンキックの練習にも適しています。

五味:ラバー(ゴム)フィンのメリットは、やはり反発力の良さですね。少ない力でもある程度キックしやすいというのが特徴です。サイファーのように短くて柔らかいラバーフィンであれば、蹴った時にフィンが主張しすぎず、気持ちよくキックすることができます。長さがあって硬さがあると、蹴った時に足がフィンに負けてしまうことがありますが、サイファーは力をより効率良く使えて、その力をしっかりと推進力に生かすことができます。

――気持ちよく楽に泳げるフィンというわけですね。

五味:そうですね。自分の脚力に合わないフィンを使うと、エアの消費が大きくなったり、足の変なところが筋肉痛になったり、快適にダイビングが楽しめません。エアの消費が多いとか、ダイビングで疲れやすいという人は、意外と今使っているフィンを見直してみると、改善することが多いと思いますよ。サイファーは、極端にいえば「生まれて初めてフィンを履いた人でも快適にキックができる」というコンセプトで生まれました。水中での取り回しもいいですし、長時間泳いでも疲れにくいので、初心者ダイバーの皆さんにぜひおすすめしたいです。

――ありがとうございます。逆にある程度ダイビング経験があり、中層で回遊魚の群れを見たいとか、しっかりと泳ぎたいという人には、どんなフィンがおすすめですか?

石井:それならブレードの長めのフィンがおすすめです。フルフットタイプでしっかりと足にフィットして、キールの厚さもブレードの長さもあるタイプがいいですね。GULLのフィンでいうと、バラクーダやワープ、スーパーミューがそれにあたりますが、バラクーダは最もブレードが長く、しなりやすいのが特徴です。バラクーダは2種類硬さがありスタンダードはしなりやすいので、意外と女性や年配のダイバーからも好評をいただいています。

――脚力がないと使えないフィンというわけではないのですね。

石井:そうですね。ワープはバラクーダに比べると長さは短いのですが、カラーによって硬さのバリエーションが用意されており、硬いのを使いたい方は黒、柔らかいのを使いたい方には黄色や昨年登場したカリビアンブルーなど、好みによって選ぶことができます。一方、スーパーミューは、ブレードの先端の形状が上記の2つとは異なっており、蹴った時の水の抜けがいいため、蹴り心地が楽という特徴があります。中層を泳ぐだけでなく、水底近くで写真を撮るフォト派ダイバーや、サンゴ礁などをゆったりと泳ぎたいダイバーにもおすすめですね。

フィン選びは、スキーの板を選ぶのにも少し似ているかと思います。その人のスキルや滑る場所によって、長さや幅など、適した板は変わってきますよね。

――脚力はもちろん、自分がどのようなスタイルで、どのような環境を潜るかによっても、適したフィンは変わってくるのですね。

藤田:フィン選びは、スキーの板を選ぶのにも少し似ているかと思います。その人のスキルや滑る場所によって、長さや幅など、適した板は変わってきますよね。

――どうしても「フィン選び=脚力によって」というイメージが強いのですが、どういう目的で、どういうシチュエーションで使うのかもすごく大事ですね。そういった意味では、ウエットスーツで潜るときとドライスーツで潜るときでも、適したフィンは変わってくると思うのですが・・・。

石井:伊豆半島や紀伊半島などの国内エリアで潜ろうとすると、ドライスーツで潜るシーズンが長いと思います。そうなるとドライスーツで、特にビーチダイビングで使う機会が多くなりますので、GULLもオープンヒール(ストラップ式)のドライスーツ用のフィンに力を入れています。大きな特徴は、フットポケットに足が入れやすいこと。ドライスーツのブーツのほうが通常のブーツより大きめにできているので、GULLはフィット感にもこだわって、フットポケットの大きなドライスーツ用のフィンや、アンクルウエイトがいらないように重量を重くしたフィンなどを用意しています。

――アンクルウエイトなしで使えるフィンがあるのもいいですね。これも重量のあるラバーフィンならではのメリットだと思います。

フィンは実際に使って試してみるのがおすすめ

石井:それぞれのフィンの特徴はカタログやウェブサイトを見ていただけるとわかりますが、できれば実際に使って試してみるのが一番の方法だと思います。少しでもダイバーの皆さんが実際に使う機会を増やせるよう、モニター会なども積極的に開催していく予定です。

藤田:そうですね、お店でもフィンのしなり具合や足のフィット感を試すことはできると思いますが、海で実際に使ってみるのが一番いいですね。

――今は、なかなか難しい状況ではありますが、今後実際にGULLのフィンを使えるモニター会の予定などはありますか?

五味:今後の状況にもよると思いますが、なかなか大規模なイベントは難しいと思いますので、GULLでは各ダイビングショップを通じてダイバーの皆さんにモニターしていただけるような試みも実施したいと思っています。「この器材を使いたい」というリクエストを、普段通っているショップさんに言っていただき、そこに弊社から製品をお貸出しすることで、皆さんに使っていただける。あるいはショップ単位でのモニター会だとか。やはりフィンをはじめ器材は、使っていただいて初めて、その良さを感じていただけるものだと思っていますので、少しでも使っていただける環境を広げていきたいですね。

石井:モニター会の情報などは随時GULLのSNSで更新していく予定ですので、ぜひチェックしてください。

――それはすごく楽しみですね。

五味:やはり、自分に合わない器材を知らずに使い続けているのは、とてもしんどいことだと思います。ダイビングを気持ちよく楽しむために、自分に最適な器材が何なのか、気づける機会を増やしていきたいと思っています。

――本日はありがとうございました。

本日はありがとうございました。
GULL

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