海のいきもの
第25回 ニッポンの冬、チャガラ&キヌバリの季節
ご近所の海でおなじみのキヌバリ&チャガラは遊泳性のハゼの仲間。
一年中見られる上に数も多いせいかダイバーの注目度はイマイチだけれど、
地球規模で俯瞰してみれば日本と朝鮮半島だけで見られる地域限定の珍しい種類であるワケだし、
晩秋から春にかけては繁殖期。コッソリ、のぞき見も楽しいですよ。●構成・文/山本真紀
いっぱい群れてるけど、あんたら誰?
海藻が生い茂る豊かなニッポンの磯では、こんな風景がよく見られる。群れているのはチャガラというハゼの仲間で、特に珍しくもない普通種。でも、ダイバーには意外と知名度が低い(あるいはスルーされている)。というのも、チャガラは浅い岩礁や藻場を好み、よく見られる水深は1~5mくらい(深くてせいぜい10m前後)。一般ダイバーはサッサと通り過ぎてしまう深さだろう。なんともったいない! 特に秋は群れが大きくなるようなので、次回ご近所の磯で潜ることがあったら、浅場をじっくり探索してみては? ●撮影/相模湾・葉山
チャガラ&キヌバリのプロフィール
南日本の浅い海で見られる遊泳性のハゼには、チャガラとキヌバリがいる。どちらも同じハゼ科キヌバリ属で、よく似た姿と生態。ありふれた種類だが、この2種を年間を通してウオッチングしてみると新たな発見があるかも?
チャガラ
全体に淡い暖色でまとめられていて、上品だけれどイマイチ地味な印象なのが残念。美形なのにね。小さいうちは浅場の岩や海藻の陰などに隠れるように群れていることも。成長すると7~8cm。●分布/青森県以南、南日本;朝鮮半島中・南岸 ●撮影/相模湾・葉山
キヌバリ
黒帯がクッキリとし、メリハリが効いているせいかチャガラよりダイバー認知度は高いかも。太平洋型と日本海型に大別される(この画像は太平洋型で、体側の黒帯は6本。日本海型は7本)。●分布/北海道南部以南、南日本;朝鮮半島南岸 ●撮影/伊豆半島・須崎
え、あれ? お前どっちよ?
チャガラとキヌバリは姿や生態がそっくりなことから想像がつくように、非常に近い親戚だ。形態分類だけではなく、ミトコンドリアDNAの解析結果からも、「キヌバリはチャガラから分岐して生まれた種ではないか」と推測されている。しかも生息環境は同じで、繁殖時期も近いとくるから、たまに写真の個体のような「間違い」も起きてしまうらしい。●撮影/相模湾・葉山