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Fromスタッフ2021.01.20
水中写真家・吉野雄輔さん写真集絶好調の理由を探る!
吉野雄輔さん著『世界で一番美しい海のいきもの』が最近の水中写真集としては絶好調
2015年に発売された『世界で一番美しい海のいきもの』(創元社刊)が今なおamazonなどインターネット書店で売れに売れているということで、『マリンダイビング』にも時々著書をプレゼントしていただいていて、交流のある『マリンダイビング』編集長・後藤が著者の水中写真家・吉野雄輔さんに直撃インタビュー! といっても、コロナ禍の折、出来るだけ人とは会わないようにして気をつけていらっしゃるとのことで、オンラインでのインタビューとなりました。
1本の電話からその話は決まった
写真提供/吉野雄輔フォトオフィス
黒バックのいきものの写真を使った写真集が作りたかった
編集長・後藤(以下、編):水中写真といえば青い背景というのがお決まりで、今までの魚図鑑はたいていが青バックです。この写真集は黒バックになっていて、いきものの美しさがとても際立っていると思いました。
吉野雄輔さん(以下、吉野):「写真としては青く抜くほうが難しい。黒バックにするというのは実はとても簡単で、ストロボをバンとたけば昼間でも黒くなる。今、海外の水中フォト派の間で黒バックの写真が結構流行っているけど、20年以上前からこういう黒バックの写真を僕は撮っていたの。だって簡単だから(笑)。それで、その当時あった出版社に黒バックの写真で図鑑を組まないかと企画を出したんだけど、お互い望んでいるものが違って出さなかった。
昔もいろいろな浮遊系のプランクトンを撮っていたの。でもフィルムだったので、写真集にするまでの質にならない。ところが、デジタルカメラを使うようになったら、3mm、5mmという小さなものが撮れるようになった。“5mmのプランクトンから50トンのクジラまで一冊に詰まっている”というのが、この本の謳い文句なんだけど、ほとんどが20年前までに撮っていたもの。デジタル化して撮れた小さなプランクトンを足して、創元社に企画を出したところ、最初は断られたんだけど、社長がその気になってくれて出版することができた」
編:でも、黒バックの写真は簡単だと言われても、浮遊系を撮るのはなかなか難しいのではないでしょうか。
吉野:「そうだね。写真によってはガイドさん2人に協力してもらって、被写体を目の前に来るようにしてもらい、さっと撮る。でも一瞬にしていなくなってしまうから、本当に大変だったことも。現地ダイビングサービスのガイドの皆さんの協力なしにはできないこともあるから、本当にありがたいよね」
インタビューで楽しそうに語ってくださった吉野さん
写真提供/吉野雄輔フォトオフィス
表紙は自分でデザインした
吉野:「今の時代、書店に行って本を買う人が少なくなっている。これはインターネット上でのネット書店で勝負しないと!と思って。そのためには表紙が命。表紙を気に入ってもらわないといけないと考えたんだよ。
でも、最初編集者やデザイナー、みんなが考えて出てきたものが全然ピンと来なかった。海の世界ってこうなんだよ、光と青い世界が上にあって、その下に思いもよらないカラフルな生き物がいるんだよってことを知ってもらうために、自分で写真をどう置くかとか、全部決めたの。書籍の帯って、誰かの推薦文とかいろいろ文字が書かれているけれど、この本は帯にカラフルな生き物や魚の写真を入れちゃえと。文字で目を引くよりも、いきもので目を引こうと。表紙にこの本の中身のすべてが出ている。そういう表紙にしたかったから、こうなったの」
編:これまでもたくさんの写真集や図鑑を出してきている吉野さんならではの行動力とセンス。そして、これが大いに当たったのです。
いきものが主役の写真図鑑が作りたかった
編:黒バックの写真といい、中も黒バックの水中写真が多用されているのですが、発売当初、この写真集が発売された時に“あ~、これはいい。これは売れるなぁ”と編集者魂を揺さぶられた筆者。吉野さんにお話をうかがうと、写真選びもまた徹底していて、編集者負けのスゴ技でした。
吉野:「この本はカメラマンが主役ではなくて、被写体だけを見つめてくださいというのが目的。誰が撮ったとか、誰がデザインしたとか、そんなことはどうでもいい。海のいきものたちの色、フォルム、立体感を正確に描写したかったから。いきものの美しさをきれいに再現することが、海のすごさを語ってくれると思ったから。だから黒バックで撮っていたんです。
僕も写真家だから一生懸命撮ったものを見てもらいたいというのはあるんだけど、そうじゃなくて、海のいきものってさ、ハナダイみたいに本当に美しいものもいるし、浮遊系生物みたいに形がおもしろいものもいる。微妙な色の付き方なども黒バックなら印刷しても再現できるだろうなと。
でも、この本は13章に分かれているんだけど、並べていくと黒バックが続いて疲れるんだよ(笑)。だから、各章の扉には青い海とシルエットだけの写真を使ったの。ストロボを使わない写真。これって本来、ダイバーが海の中で見る、自然な色なんだよね。海に入った時に見える、自然な海の姿。ダイビングを始めた時を思い出す一番好きな写真なのね。ありのままのって、ディズニーみたいだな(笑)」
編:初めて海に潜った時の感動が表現され、なおかつ海のいきものたちのそのままの姿をより美しく撮影した吉野さん。それが一冊になっているのだから、やっぱり見ていて楽しいのかもしれませんね。
画面の向こうには『マリンダイビング』編集長の後藤が(笑)
写真提供/吉野雄輔フォトオフィス
なお、『マリンダイビング』1・2月合併号ではもう少し深く吉野さんにお話をしていただいています。ぜひこちらも併せてご覧ください。マリンダイビングSHOPからもお買い求めいただけます。
PROFILE
吉野 雄輔(よしのゆうすけ)
1954年、東京生まれ
海と海の生物すべてをこよなく愛する海の写真家
30数年スチール写真を専門とする
訪れた国は80カ国ほど
《吉野雄輔フォトオフィス》を主宰
ストック数20万点
広く大きな海の写真から、マクロの世界まで
日本・外国の海洋生物5000種
海洋風景、ダイビングシーン、
マリンイメージなど幅広く撮影
写真集、図鑑、児童書、雑誌、広告の世界と幅広く活躍
吉野雄輔の海底探検
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