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初心者から楽しめる! アオリイカの行動に着目!!
南紀シーマンズクラブで潜る串本

南紀シーマンズクラブで潜る串本

4月に34周年を迎えた紀伊半島・串本の老舗ダイビングサービス《南紀シーマンズクラブ》がこれからの季節オススメするのが“アオリイカウオッチング”♪ 白色透明な見た目の美しさもさることながら、今の時期ならではの生態行動がめっちゃオモロイんです。

串本の海にアオリイカの季節がやってきた!

Movie by Nanki Seamans Club

毎年4月、串本ダイビング事業組合(串本にある24のダイビングサービス、ダイビングショップが参加)が「備前」「グラスワールド」「イスズミ礁」の水深15~18mにアオリイカの“産卵床(さんらんしょう)”を設置します。今年も4月12日に3つのスポットに設置されました。例年、産卵が観察されるようになるのは5月初旬からだそうです。

産卵床は2mぐらいの雑木10~15本を組んでつくられています。本来はアオリイカの産卵場所は海藻の群落だったのですが、近年温暖化の現象か、海藻が減ってきているために、その代わりに産卵床をつくることで、アオリイカの種の存続を促し、串本でのダイビングも盛り上げたいというのが狙いです。

アオリイカの見どころをチェック!

アオリイカの産卵を見たことのある方は、その面白さをご存じでしょうが、なんでアオリイカ?と思う方もいるかもしれません。
子どもの頃は水面で群れになっているところを見ることがありますが、大人になった大きな個体を見ることはそんなにありません。たぶんダイバーが潜るところよりもっと深いところに生息しているのだと考えられています。
ところが、毎年串本では5月初旬から6月終わり頃、長い時は7月頃まで、大きなアオリイカがたくさん見られる時期があります。産卵をするためにやってくるのです。体長70cm以上のアオリイカを間近で見ると相当に迫力があります。

串本ダイビング事業組合に参加していて、長年アオリイカの産卵行動の観察をじっくり行ってきていた《南紀シーマンズクラブ》の代表、島野利之さんにその見どころを伺ってみました。

☆ ☆ ☆

一度にこんなにたくさんのアオリイカに会えることも! たいてい雌雄のペアになっているのがわかるでしょうか。「イスズミ礁」

一度にこんなにたくさんのアオリイカに会えることも! たいてい雌雄のペアになっているのがわかるでしょうか。「イスズミ礁」
Photo by Nanki Seamans Club

アオリイカは産卵の際、雌雄のペアを作ります。
オスはメスの産卵を邪魔されないよう、産卵床まで優しくエスコートします。

産卵床に卵を産み付けているメスを覆いかぶさるようにしてエスコートしているオス

産卵床に卵を産み付けているメスを覆いかぶさるようにしてエスコートしているオス
Photo by Nanki Seamans Club

ペアになれないオス(はぐれオス)が、メスを横取りしようと近づいてきた時は、ペアのオスは懸命に追い払います。オス同士のメスの奪い合い(ケンカ)も見どころです。。

アオリイカは体色をくるくると変えますが、右上のはぐれオスから産卵中のメスを守る左側のオスは足を振り上げ、体色を黒っぽくして、はぐれオスを威嚇。それを見たはぐれオスもまた体色を黒っぽくし、臨戦態勢に入ったところです

アオリイカは体色をくるくると変えますが、右上のはぐれオスから産卵中のメスを守る左側のオスは足を振り上げ、体色を黒っぽくして、はぐれオスを威嚇。それを見たはぐれオスもまた体色を黒っぽくし、臨戦態勢に入ったところです
Photo by Nanki Seamans Club

たくさんのペアが集まって産卵が始まると、我先に産卵しようとして大産卵が始まります。20ペア(40匹)以上のアオリイカが産卵床を取り囲んでいる様は圧巻です。
大産卵の際は、ダイバーがいることもおかまいなく産卵するので、手が届くくらい間近で観察できるとともに、フォト派には絶好のシャッターチャンスとなります。

アオリイカが産卵した卵は、筒状(サヤのような形)です。この1本1本にたくさんの卵が詰まっています

アオリイカが産卵した卵は、筒状(サヤのような形)です。この1本1本にたくさんの卵が詰まっています
Photo by Nanki Seamans Club

☆ ☆ ☆

いかがでしょう? アオリイカたちが生命をつなぐための神聖かつ感動的な産卵行動を見てみたくなったのでは?

初心者、大物派、フォト派などすべてのダイバーにオススメの串本

串本がオススメなワケ

人気スポット「浅地(あさじ)」ではシラコダイがこんなに群れていることも!

人気スポット「浅地(あさじ)」ではシラコダイがこんなに群れていることも!
Photo by Nanki Seamans Club

数あるダイビングエリアの中でも多くのダイバーに人気の串本。紀伊半島のほぼ南端にあり(串本町は本州最南端の町としても知られています)、入り組んだ海岸線には穏やかな内湾があり、ボートで外海に出れば、大小の岩や隠れ根が、潮当たりが良い海のオアシスとなっていて、ダイビングには理想的なダイビングスポットがいくつもあります。実際、開拓されているダイビングスポットは30余りあるので、多くのダイバーが訪れても混み合うことなく潜れます。しかもいずれも遠くてもボートで15~20分、近ければ5分足らずとアクセスもいいのです。

すべてのダイバーに串本は最高!

ホウライヒメジの群れなど魚影がとても濃い「住崎」

ホウライヒメジの群れなど魚影がとても濃い「住崎」
Photo by Nanki Seamans Club

有名なだけに、もしかしたらベテラン向けの海なのでは?と勘違いしてしまいそうですが、「串本は初心者からどなたでも楽しめます!」と先述の島野さん。
「初心者の方には近場ポイントがおすすめです。波、風に強く、移動時間もボートで6~7分と近く、船酔いが心配な方も安心です。魚影が濃く、流れも少ないので、のんびりと楽しめます」とのこと。

おすすめのダイビングスポットとしては「住崎」「グラスワールド」を挙げてくれました。

■住崎

ピカチューウミウシことウデフリツノザヤウミウシに会えることも!

ピカチューウミウシことウデフリツノザヤウミウシに会えることも!
Photo by Nanki Seamans Club

串本のボートポイントの元祖。アンカーを降りると魚群に囲まれ、根の割れ目を覗くと、大きなイセエビが! 浅場には「アザハタの根」があって、いい写真やムービーが撮れる格好の被写体になっています。潮の入り方によっては回遊魚が回ってくることもあるので、時々中層を見るようにしましょう。最大水深25m。

■グラスワールド

ベラが多いことから「Good Wrasse」を略して「グラス」と名付けられたスポット。ベラのほかにもジョーフィッシュなどダイバーの人気アイドルがたくさん生息。このポイントの名物はカゴカキダイ。群れで移動する姿はダイバーを癒してくれます。砂溜まりやガレ場をじっくり探すと、いろいろとかわいい生物が見つかるかも!?
(アオリイカの産卵床もあります)

アドバンス以上、大物派に推すのは外洋スポット

外洋スポットは透明度が良く、ダイナミックな地形が楽しめます

外洋スポットは透明度が良く、ダイナミックな地形が楽しめます
Photo by Nanki Seamans Club

それではアドバンス以上のダイバーや、大物やワイドな海が好きな方にはどんな海が串本にあるのでしょう?
「外洋ポイントがおすすめです。ポイントまではボートで20分ほど。地形がダイナミックで魚影が濃く、根魚の大群から回遊魚まで楽しんでいただけます」と島野さんは胸を張って答えてくれました。

オススメのスポットは「浅地」「双島沖2の根」です。

■浅地

大型回遊魚カンパチがダイバーの吐く泡を小魚だと思ったのだろうか? それとも体に当てると気持ちいいのだろうか? いきなり回ってきたりします

大型回遊魚カンパチがダイバーの吐く泡を小魚だと思ったのだろうか? それとも体に当てると気持ちいいのだろうか? いきなり回ってきたりします
Photo by Nanki Seamans Club

串本No.1のビッグスポットともいわれる「浅地」。
水深40mの海底からそびえ立つ巨大な根の周りを泳ぐスタイルですが、泳いでいる最中に中層にブリやカンパチなどの大型回遊魚が現れたり、ハンマーヘッドシャークが出現することも! 根の先端ではキンギョハナダイが乱舞し、とっても華やか。流れが強くなることもありますので、中~上級者向け。

■双島沖2の根

キンギョハナダイの大乱舞がフォトジェニックなスポット。切り立った大きな根のトップ、水深12mにその華やかな世界が広がっています。根の西側はストンと落ちたドロップオフになっていて、海底は白砂が続き、透明度のいい日の景観は抜群です。最大水深32m。根の壁28mのオドリカラマツにはクダゴンベがいつも見られます。

串本ではいい水中写真が撮れること間違いなし!

本当にウミウシに隠れているウミウシカクレエビ。フォトジェニックと「備前」では人気の被写体です

本当にウミウシに隠れているウミウシカクレエビ。フォトジェニックと「備前」では人気の被写体です
Photo by Nanki Seamans Club

実は串本の海は、水中写真や動画を撮るダイバーの方にとても人気があるのをご存じでしょうか?
海がいいのはもちろん、《南紀シーマンズクラブ》のように写真のことをよく理解しているスタッフが撮りやすい場所を案内してくれるうえ、施設も使いやすいからです。
そんなフォト派にオススメのスポットを島野さんにお伺いしました。
「おすすめはマクロ系の被写体が多い近場ポイントですね。『備前(びぜん)』『住崎』にお連れすると皆さん、がっつり被写体と時間を過ごしていらっしゃいます」とのこと。
※「住崎」の紹介は上記をご覧ください。

■備前

帆を立てたような背ビレが特徴のホタテツノハゼも「備前」のアイドル

帆を立てたような背ビレが特徴のホタテツノハゼも「備前」のアイドル
Photo by Nanki Seamans Club

アンカーのすぐそばに大きな根があり、周りには根魚がいっぱい。じっくりと壁面を探すとカエルアンコウの仲間やウミウシの仲間も。砂地ではネジリンボウやホタテツノハゼなど人気のハゼが多く見られるほか、エビ・カニ類も豊富です。

これから水温も気温も上がってベストシーズンへ一直線の串本。ぜひ皆さんに潜っていただきたいですね!