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レポート2025.06.30

ジンベエザメウオッチングの方法とマナー@タイ編

ジンベエザメの頭の右上にいるのは大村健さん。「ジンベエのコースを読んで待ち構えて動画を撮っている私を、反対側からスタッフの阪田が写真で撮った」ものだそうです

ジンベエザメの頭の右上にいるのは大村健さん。「ジンベエのコースを読んで待ち構えて動画を撮っている私を、反対側からスタッフの阪田が写真で撮った」ものだそうです

ジンベエザメは世界最大の魚類として、ダイバーなら一度は見てみたい憧れの魚でしょう。会いたい魚の中でもトップクラスといえます。ジンベエ様と呼ぶ人もいるほど!

そんな憧れのジンベエザメにダイビング中、頻繁に会える海は、世界中指折り数えても5本で余るほどだと思います(スノーケリングも入れると増えますが)。中でも神出鬼没で一年を通していつ現れるかわからないのに、いったん訪れると数日間出続けたり、かなりのインパクトでダイバーの目の前に現れるのが、タイのタオ島です。今回、SNS等でよくジンベエザメのエキサイティングな画像をアップしている《ビッグブルーダイビング》の大村健(おおむら たけし)さんに、ジンベエザメの遭遇率、そしてジンベエザメとの泳ぎ方、ウオッチング方法、マナーなどをお伺いします。

タイでジンベエザメ出現率が高いのはタオ島!

タイには半島の西と東にダイビングエリアがありますが、大村さん率いる《ビッグブルーダイビング》は東のタオ島と西のカオラックにダイビングショップがあります。どちらでジンベエザメとよく会えるのでしょう?

「ジンベエザメに関しては、カオラック(シミラン)よりもタオ島のほうが遭遇率は圧倒的に高いです。ダイブサイトとしては、セイルロック、チュンポンピナクルがより出現率が高く、次いでサウスウェストピナクルが続きます。これがタオ島の3大ポイントで、滞在中にこれらのポイントにどれだけ潜りに行けるかがジンベエ遭遇の確率に関わります。その他のタオ島の周辺のポイントでは、たまに出ても通り過ぎて居着かないことが多いので、たまたまそのタイミングで潜っていたダイバーが運よく見られる感じです」

年によって遭遇率はマチマチ

タオ島は世界的に会える確率が高い海といわれますが、実際行くとなかなか会えないダイバーも。遭遇頻度はどれぐらいなのでしょう?

「これに関しては、どのシーズンに出やすいというよりは、年によって、当たり年、普通年、ハズレ年があると思います。出る年の出る月には同時多発的にジンベエが3大ポイントで出まくります。普通の年は月に12回とか23回出る感じです。ハズレの時は1回も出ない月が続くこともあります。 以前は、セイルロックやチュンポンピナクルでジンベエが出ると、翌日も出て、長い時は1週間くらい居続け、毎日見られることも多々ありました。しかし、最近は、1日ジンベエが出ても、翌日には居ないパターンが多いです。これはタオ島のダイブショップが増え、ダイバーが増えたことが原因だと感じています」

戻ってくるジンベエザメ

世界のジンベエザメウオッチングスポットには、いろいろなアクセス方法があります。タオ島ではどんな風にジンベエザメに遭遇できるのですか?
「タオ島ではダイビング中に水中で出会うジンベエです。潜っていて偶然遭遇するパターンもありますし、事前に潜っている他のボートが無線で教えてくれることもあります」

ジンベエ出現!の場合、どんな風にガイドされているのでしょう。
「タオ島の海の地形的特徴として、広大な浅い砂地が広がる海域のところどころ岩の地質が隆起して隠れ根ポイントを形成しています。特に大きな隠れ根がある場所は餌となるプランクトンが溜まるからだと思うのですが、ジンベエザメのお気に入りの場所となります。ジンベエザメはそのまま泳ぎ去らないで、ぐるぐると隠れ根の周りと泳ぎ続けてくれます。つまり、ジンベエザメはまた戻ってくるのです。なので、追いかけなくても、その後ろ姿を見ながら、次にどのコースで戻ってくるかを遠くから見守るのです。そうすると、そろそろこの辺りに戻ってくるということがわかるので、そのコースに先回りして待つのです」

ジンベエが出た時のガイディング

「ジンベエザメはダイバーに追いかけ回されることをとても嫌がります。でも、フィンの動きを止めてじっとしているダイバーのことはさほど気にしません。大きなジンベエザメからしたら我々ダイバーは小さい生物に過ぎません。気配を殺して大人しくしていると、ジンベエはダイバーの存在を気にせずすぐ近くまで近づいて来てくれますが、進路妨害をしてはいけません。ジンベエが泳いでくるとほかの魚は避けます。大きなマンタですらジンベエに進路を譲った光景を見たことがあります。ジンベエにとってはそれが普通なのです。我々ダイバーもジンベエが近づいてくると進路を譲ります。そうするとジンベエは特に嫌がらず、リラックスしたままぐるぐる同じポイントで泳ぎ続けてくれます。
我々はマナー良く、次のジンベエのコースを読み、他のチームのダイバーの迷惑にならない範囲で場所を修正して待ちます。そういうことをゲストに伝え、マナー良くジンベエにストレスを与えず、でもちゃっかりベストポジションでジンベエを見たり撮影したりできるというガイディングを心がけています」

ダイバーとして気をつけるべき注意点

では、ガイドされるダイバーとしては、何を気をつけるべきなのでしょう? ブリーフィングではどんなことを説明されるのでしょう?
「ブリーフィングで必ず話しているのは、絶対に追いかけ回さないこと。進路妨害をしないこと。もちろんお触り禁止。ほかのダイバーのことも尊重すること。水深の上下に注意すること。はぐれないこと。残圧のチェックをいつもよりも頻繁にすること。などです」

大事なことですね。ジンベエザメの巨大な姿が目に飛び込んできたら、頭が真っ白になって、注意点を忘れてしまいそうですが、泳ぎ出す前に思い出してください。

最後に大村さんからコメントをいただきました。
「世界のほかのジンベエで有名な海に比べて、タイの海はさほどジンベエザメが頻繁に見られるエリアとは言えないと思います。ジンベエが出ることもありますが、ジンベエを見られないで帰るゲストのほうがよっぽど多いです。出たらラッキーですが、ジンベエ抜きでも十分面白い海として紹介させてもらっています。 そして、タイのジンベエは偶然の出会いの素晴らしさがあります。餌付けや生簀でそこに居るのがわかっていて潜るのと、ナチュラルな生態のジンベエとの遭遇とでは意味や感動が違うと思います。またスノーケルで見るのとスクーバで見るのも体験として違いがあります。特に隠れ根に居着き、ぐるぐると泳ぎ回ってくれるジンベエはじっくりゆっくり見て、撮影できるので、通り過ぎるジンベエとは全然違います。また、セイルロックなど、もともとめちゃくちゃ魚影の濃いポイントでジンベエが出ると、ほかの魚と絡むジンベエというスペシャルな状況で見ることが当たり前です。遭遇率ではなく、出たときのインパクトの強さがタイ、タオ島のジンベエの特筆すべき点だと思います」

タオ島でジンベエザメに会えなくても会えても、大村さんの言葉を胸に留めておきたいですね。いや、皆さま、ぜひジンベエに会ってきてくださいね!

◎ 画像・情報提供≫ 大村健、阪田朋宏《Big Blue Diving

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