海のいきもの
第36回 ミナミハコフグと、その仲間たち
秋、ご近所の海にはサンゴ礁からのゲストたちがいっぱい。
季節来遊魚(死滅回遊魚)と呼ばれる、黒潮に乗って運ばれてきた熱帯・亜熱帯性の魚や生き物たちだ。
その中でも一番人気のミナミハコフグとその親戚筋を紹介。●構成・文/山本真紀(2017年10月制作)
トップバッターはもちろんミナミ君
ハコフグの仲間(ハコフグ科)はフグの仲間(フグ目)に属しており、名前の通り箱形の角張った体が特徴。英語圏でもBoxfish、Trunkfishなどと呼ばれている。この角張った体は多角形のプレートが組み合わさってできており、触れてみると柔らかい感触のフグとは違って、かなり硬いことがわかる(㊟ ただしダイビング中は「お触り」厳禁)。なお、ハコフグ科は世界の海に30種以上が知られており、日本にも10種ほど分布している。
ミナミハコフグ
成魚はインド-太平洋のサンゴ礁でしか見られないが、幼魚は初夏から秋にかけて伊豆半島や伊豆諸島、紀伊半島などで普通に見られる。成長につれて、キュートな模様がすっかり変わってしまう。
●幼魚/浅い岩礁の岩穴や亀裂などに潜んでおり、スノーケリングでも見られる。特徴的な黒い水玉模様は、敵に眼の位置をわからなくする効果があるらしい。そう言われてみれば、黒点のサイズはちょうど瞳孔と同じくらいだ。記者は愛着を込めて「妖怪百目小僧」と呼んでいる。撮影/沖永良部島
●成魚(オス)/幼魚は1~5cmくらいだが、成長すると20~40cmに達する。メスはイエローやモスグリーンの地色に黒い縁取りのある白い斑点模様。撮影/沖縄・ケラマ諸島
「ミナミ」の付かないハコフグ
ハコフグ(幼魚)
岩手県以南の南日本、伊豆・小笠原諸島、朝鮮半島などに分布するハコフグの仲間。個体や成長段階によって模様にバリエーションがある。ミナミハコフグの幼魚とたまに間違えられることも。
●幼魚A/一見ミナミハコフグっぽいのだが、よく見ると青白い斑紋が混じっている(写真の腕が悪くて、見づらくてすみません)。この青白~白い水玉があることがハコフグの幼魚の特徴。撮影/伊豆大島
●幼魚B/こちらは典型的なハコフグの幼魚(頭に寄生虫が付いてるけど)。撮影/東伊豆・八幡野
ハコフグ(成魚)
成長すると20~30cmとなる。メスとオスで模様が違うこともミナミハコフグと同じだが、ハコフグは幼魚・成魚ともにサンゴ礁では見られない。なお、市場には出ないが一部地域では食用となる。そのまま火で炙り、焼けたところで硬い殻を割って味噌を投入、体を器代わりに食すという調理法がユニーク。
●成魚(メス)/写真の個体ではくすんでいるが、普通は白斑がもう少し目立つ。撮影/伊豆大島
●成魚(オス)/背中の青が特に印象的。ミナミハコフグの成魚はサンゴ礁でもあまり見られないが、ハコフグの成魚は南日本の岩礁域で比較的よく見られる。撮影/伊豆大島
「ハコフグ御三家」のラストバッター
クロハコフグ
インド-太平洋のサンゴ礁に広く分布し、日本でも沖縄で見られる。成長すると20cmほどになる。
●メス/幼魚とメスは黒地に多数の白点があり、これが和名の由来。撮影/ケラマ諸島
●オス/背中の地色は黒いが、その他の部分は青みが強くなる。斑点も黄色となり派手さが増す。こうしてみると、ハコフグ御三家(ミナミハコフグ、ハコフグ、クロハコフグ)のオスは皆さんブルー。撮影/ケラマ諸島
角があるハコフグたち
ハコフグ御三家(上の3種類)はハコフグ科ハコフグ属という同じグループなのだが、ハコフグ科にはコンゴウフグ属というグループもある(他にも数属あるけど省略)。コンゴウフグの仲間は眼と尻ビレ付近に1対のトゲがあることが特徴。これを角に見立てて、英語圏ではCowfishと呼ばれる。
シマウミスズメ
背にも強大なトゲが1本あり、英語圏ではThornback cowfishと呼ばれる。ウミスズメというよく似た種類もいるが、青い虫食い状の模様の有無で識別は容易。成長すると15cmほどになる。インド-太平洋(日本では南日本の太平洋岸、伊豆・小笠原諸島、琉球列島)、大西洋南東部に分布。撮影/東伊豆・川奈
コンゴウフグ
体のプロポーションや2対のトゲ(眼の上と尻ビレ付近)の長さは成長段階でかなり変わる。潮通しがいい開けた砂地の浅場という環境でよく見られるが、日本ではなかなかお目にかかれない。分布はインド-太平洋(日本では南日本の太平洋岸、八丈島、琉球列島)。成長すると40cmほどになる。撮影/沖縄本島
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