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海のいきもの
第34回 夏といえばスプラッシュ!~イルカ~

第34回 夏といえばスプラッシュ!~イルカ~

流線型のボディで自由自在に大海を泳ぎ回るイルカ。夏の御蔵島や小笠原ではドルフィンスイムが花盛り、
水族館では老若男女を問わず、年間を通して人気ナンバーワン!
今回はそんな海に暮らす美しい獣を紹介。●構成・文/山本真紀(2017年8月制作)

海に還った 哺乳類ほにゅうるい 、イルカ

イルカは一生を海中で過ごす生き物だが、ヒトやイヌ、ネコ、ウマ、ネズミ、ゾウなどと同じ動物グループ(哺乳類)。その証拠に、卵ではなく母体内である程度育ってから子イルカとして生まれ、生まれたばかりの子供は母乳で育つ。一定の体温をキープする能力があり、ある程度の温度差に耐えられる。
ところが不思議なことに、イルカの流線形のボディはメジロザメの仲間を連想させる。よく似てはいるが、イルカとメジロザメは哺乳類と軟骨魚類、同じ脊椎動物ではあるけれど、かなり遠縁の生き物だ。両者が似ているのは、同じような環境や生態に暮らす生き物が似たような姿形となる現象「収斂(しゅうれん)進化」として説明されている。また、太古の海に暮らしていたイクチオサウルスなどの魚竜(爬虫類)もイルカに似ており、同様に収斂進化と言われている。撮影/パラオ《ドルフィンズ・パシフィック》

イルカは「小さなハクジラ(歯鯨)」です

イルカ・クジラの仲間は、基本的に鯨類という同じグループに含まれる。しかし、分類学の視点からは、鯨類は「イルカとクジラ」ではなく、「ハクジラ類とヒゲクジラ類」に大別される。大きな違いは次の通り。
●ハクジラ類/立派な歯を持ち、魚やイカなどを捕食する。ハクジラ類の中で体長4~5m以下の小さな種類はイルカと呼ばれ、大型種はクジラと呼ばれる(マッコウクジラ、ツチクジラなど)。ただし明確な規定があるわけではない。例えば、ゴンドウクジラの仲間は大きさ4~5mだがイルカとは呼ばないし、シャチはシャチだ。
●ヒゲクジラ類/鋭い歯はなく、密生した長い「ヒゲ」を持つ(いわゆる鯨髭)。オキアミや小魚などを海水ごと大きな口に含み、この「ヒゲ」で濾し取って食べる。ザトウクジラやミンククジラ、セミクジラなど。

ハクジラの仲間①~ハンドウイルカ

コレが一般にイメージされるイルカの顔。口には鋭い歯がびっしり。獲物をガッチリ捕獲し、咀嚼することはなく丸呑みしてしまう。撮影/カリブ海・バハマ

ハクジラの仲間②~オキゴンドウ

「ひたい」部分がないので、イルカと顔つきが違う印象だけれど、ハクジラ類という点で同じ仲間。歯の形が全部同じ点にも注目。撮影/《下田海中水族園》

ハクジラの仲間③~マッコウクジラ

成長すると10m以上となるハクジラ類の中では最大種で、深海をもフィールドとするディープダイバー。歯は細長い下アゴにしかない。撮影/小笠原

ヒゲクジラの仲間~ザトウクジラ

大きな口で海水ごと小エビや小魚をすくい取り、口内の長い鯨髭(くじらひげ)で濾し取って食べる。口を閉じていてすいません。撮影/タヒチ・ルルトゥ

海に生きる体の不思議

太古の昔、鯨類(イルカ・クジラ)の祖先は海辺で暮らす四つ足の動物だった。それがいつか海の中へ。その長い進化の過程において、陸上の獣とはまったく違う姿となった。例えば、目立つのはこのへん。
◆毛皮の消失/水中では体温保持に役立たないうえ、遊泳の際に水の抵抗も大きいため毛皮は捨てた。その代わりツルツルした皮膚と厚い脂肪層がある。
◆四肢の変形/前脚は胸ビレに(骨格を見ると5本の指がある)、後ろ脚は不要なので退化した(大型鯨類では体内に痕跡程度の骨がある)。尾ビレは尾の先端に筋肉のヒレが発達したもので、イルカが泳ぐときの動き方は、陸上動物が走るときの動きと基本的に同じ。
◆鼻の移動/多くの陸上動物は、吻の先端に鼻の穴がある。が、これでは呼吸のためにいちいち頭を海上に出さなくてはならず、不便だし疲れる。そこで、頭のてっぺんに鼻の穴は移動した(写真)。これなら視界を確保したまま呼吸ができる。ちょうどスノーケルを装着したような感じ。

水面に出た瞬間の鼻の穴(噴気孔)。パカッと開けて、呼吸をしている。ちなみに穴は1つ。

潜る直前、鼻の穴(噴気孔)をピッチリと閉じる。これは便利だ。撮影/2点とも《油壺マリンパーク》

メスとオスの見分け方

イルカの腹部はツルツルで、ヒトのように目立つ性差がないため、見た目では雌雄の区別は付けにくい。でも、やっぱりポイントは下半身。ココに注目するとわかるかも。

「小」の字が見えればメス

問題の「部分」は画面右隅。見づらくてすいません。
Ⓐ中央のスリットは生殖孔のある溝で、その両側の点は乳頭がおさめられた溝。「小」という字に見えれば、その個体はメス。子イルカが乳頭部分に口をつけると、母イルカは乳腺周囲の筋肉を収縮させ、短時間でピュッと乳を口の中に送り出す。撮影/バハマ

ふだんは収納しています

イルカはオスであっても、常態ではペニスに相当するものは見当たらない。どこにあるかといえば下腹部の生殖孔の中に収納されており、使用時に外に出す。が、若いオスがじゃれあっているときは、興奮するのかたまにチョロッとのぞいてしまうことも。クジラの死体などでも、デロンと外に出ている。撮影/御蔵島

ダイバーが会えるイルカたち

今も生きて海に暮らす鯨類(イルカ・クジラの仲間)は80種以上。このうちハクジラ類は約70種で、イルカと呼ばれる小型ハクジラ類は約30種。その中でダイバーに最も馴染み深いのはハンドウイルカだろう。

ハンドウイルカ

●分布/世界中の温帯~熱帯海域 ●体長/2~4m ●特徴/分布が広いうえ沿岸性。しかも好奇心旺盛で人に馴れやすく、水族館でもお馴染みの種類。自然界でもダイバーとよく遊んでくれる(御蔵島や小笠原のドルフィンスイムで会えるのもハンドウイルカ)。海域によって変異がいろいろあり、がっしりした体型で外洋に多いトランキータス型と、沿岸性のアダンカス型(ミナミハンドウイルカ)に大別される(亜種とされている)。写真はおそらく母子。撮影/御蔵島

ハシナガイルカ

●分布/太平洋、インド洋、大西洋の熱帯~亜熱帯海域 ●体長/1~2m ●特徴/きりもみ飛行や回転ジャンプなど華麗な曲芸が得意で、これが英名(スピナードルフィン)の由来。神経質な性格で、水中でダイバーと遊ぶことはほとんどないが、ボートでの移動中に併泳したりジャンプを披露する。撮影/ハワイ

タイセイヨウマダライルカ

●分布/大西洋 ●体長/1.5~2.5m ●特徴/名前の通り、全身に斑紋がある(ただし、子イルカはほとんどないらしい)。バハマのドルフィンサイトなど、ドルフィンスイムの歴史が長いところでは個体識別もされていて、現地ガイドと顔見知りのイルカも多い。人なつっこくて愛嬌たっぷり。撮影/バハマ

セッパリイルカ

●分布/ニュージーランド周辺 ●体長/1~1.5m ●特徴/英名は一般的にヘクターズドルフィンだが、背ビレの丸い形から「ミッキーマウスの耳」というニックネームもある。撮影/ニュージーランド

ハラジロカマイルカ

●分布/ニュージーランド周辺、南アメリカ沿岸、アフリカ南部の温帯域 ●体長/1.5~2m ●特徴/イルカの中でも最も曲芸好きといわれている。写真は水族館ではなく、野生の個体。撮影/ニュージーランド

水族館で会えるイルカたち

日本をはじめ世界各地でいろいろな種類のイルカが飼育されている。諸事情でダイビングやドルフィンスイムに出かけられない方は、ぜひお近くの水族館へGO!

シロイルカ

●分布/北太平洋の高緯度海域(スカンジナビア半島、グリーンランド、アラスカなど) ●体長/3~5m ●特徴/名前の通り明るい体色、よく動く首、丸っこい額などが特徴の愛嬌者。別名ベルーガ。鳥のさえずりのような「声」を発することから、「海のカナリア」とも呼ばれる。撮影/《八景島シーパラダイス》

イロワケイルカ

●分布/南アメリカ南部、フォークランド諸島、インド洋のケルゲレン諸島 ●体長/1.3~1.7m ●特徴/独特のパンダのような模様で、見分けは簡単。下腹部の黒い斑紋は雌雄で異なる(メスは馬の蹄鉄形、オスでは水滴のような形)。好奇心旺盛で、ボートによく近寄ってくるという。撮影/《鳥羽水族館》

カマイルカ

●分布/北太平洋の亜寒帯~亜熱帯の海域 ●体長/1.5~2.5m ●特徴/好奇心旺盛で活動的。高速で泳ぎ回り、航跡に乗って遊んだり華麗なスピンやジャンプを見せる。水族館の曲芸でも大活躍。鎌形の背ビレから和名が付いた。撮影/《八景島シーパラダイス》

オキゴンドウ

●分布/全世界の温帯~熱帯海域 ●体長/4~6m ●特徴/ゴンドウクジラの仲間で、しばしばイルカと一緒に飼育されている。体が大きいので迫力満点(①はオキゴンドウ、②はハンドウイルカ)。顔は記事上のほうを参照ください。撮影/《新江ノ島水族館》

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