海のいきもの
第29回 魚の権兵衛さんたち
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特別に人気のあるグループではないし華やかさもあんまりないけれど(クダゴンベを除く)、
ご近所の海でもサンゴ礁の海でもふとした拍子によく目が合うかわいいヤツら、
それがゴンベの仲間たち(個人的印象です)。
よく見られる種類にはどんなのがいるのかな。●構成・文/山本真紀(2017年3月制作)
ゴンベの仲間の特徴は・・・・。
ゴンベ科に属する魚は世界に30種以上が確認され、主にインド-太平洋の温帯~熱帯にかけての浅い海に生息している。日本では現在のところ14種(日本産魚類検索 第3版)。背ビレの棘条先端に糸状の皮弁(❶)があることが大きな特徴で、これが江戸時代の権兵衛(子供の後頭部に剃り残された一束の毛)を連想させることが和名の由来といわれている。もう1つの特徴は長く立派な胸ビレ(❷)。底生性のゴンベたちは、これでガッチリ体を支えている。
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オキゴンベ
分布域はかなり広く、伊豆半島をはじめ南日本で最もよく出会うおなじみさん。岩礁や砂地の根などでよく見られ、好奇心が強いのかダイバーが近寄ってもあまり逃げない。ヤギやソフトコーラル上にいるときは、水中写真の練習モデルにぴったりだ。10cmほどになる成魚(ⓐ)はでっぷりとオッサン体形だが、幼魚(ⓑ)のうちは目玉もクリクリとかわいらしい。
●分布/東部インド洋~西部太平洋の温・熱帯域 ●撮影/成魚は東伊豆・八幡野、幼魚は西伊豆・雲見
ゴンベ界のスーパースター
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クダゴンベ
スレンダーな体と美しい模様で、ゴンベ界の一番人気のスーパースター。生息環境はウミトサカやヤギの上で、写真を撮るにもバッチリ。危険を感じると枝上をチョコマカと素早く移動するが、よそへ逃げ出すことはまずない。分布域はインド洋から東部太平洋までと非常に広く、伊豆半島でも季節来遊魚としてしばしば見られる。細く長い吻を使って、小さな甲殻類や稚魚などを食べるところが観察されている。大きさ10cmほど●分布/インド・汎太平洋 ●撮影/インドネシア・バリ
カラーバリエーションあり
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ホシゴンベ
サンゴ礁の浅場で普通に見られ、枝上サンゴの上にチョコンと乗っている。全体に黒っぽいものや赤味が強いもの、黄色が濃いものなど色彩変異はあるが、顔に小さな斑点が多数あることが特徴。ただし、幼魚(Ⓐ)ではないこともある。●分布/インド-太平洋 ●撮影/幼魚はインド洋クリスマス島、成魚(Ⓑ)はモルディブ
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メガネゴンベ
こちらもサンゴ礁の浅場に多く、見張りをしているかのようにサンゴの上に乗っている。目の後ろにU字型の模様があり、これが和名の由来。赤や黒など個体によって色彩変異はあるが、このメガネ模様で識別は簡単。●分布/インド-太平洋 ●撮影/赤っぽい個体は沖縄石垣島(Ⓒ)、黒っぽい個体は小笠原(Ⓓ)
きれいどころ4種類
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ベニゴンベ
派手な模様の割りにシャイで、浅場のハナヤサイサンゴの仲間の枝の奥深くに潜んでいる。写真のように全身を撮るのは結構大変。沖縄にはあまりいないが、グアム・サイパンや小笠原では比較格的よく見られる。●分布/中・西部太平洋の熱帯域 ●撮影/グアム
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ウイゴンベ
ゴンベの仲間の中では珍しく遊泳性が強く、海底から離れていることが多い(写真ではトサカの上に乗っていますけれど)。一見、ハナダイっぽく見えるかもしれないが、背ビレの先端に房飾りがあるかチェック。●分布/インド-西太平洋 ●撮影/東伊豆・富戸
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サラサゴンベ
きれいな和名と模様のゴンベ。岩やサンゴの上に乗っていることが多い。よく似た種類にヒメゴンベがいる。●分布/インド-太平洋 ●撮影/サイパン
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スミツキゴンベ
赤味の強い個体はきれい(黒っぽい個体もいます)。尾の付け根にある黒点が和名の由来。やや珍しい。●分布/中・西部太平洋の熱帯域 ●撮影/八丈島
ゴンベ界のジャイアンツ
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ジャイアント・ホークフィッシュ
カリフォルニアからガラパゴスにかけて生息するゴンベで、日本では見られない。成長すると40~50cmにもなる大型種。幼魚と成魚でかなり模様が変わる。●分布/東部太平洋 ●撮影/ラパス
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イレズミゴンベ
成長すると30cm以上となる大型種。体色には写真のようなタイプと、全身が黒っぽく体側中央に白い斑点が1つあるタイプがいる。●分布/東部インド洋~中・西部太平洋の熱帯域 ●撮影/ポナペ
ゴンベじゃなくてハナダイです
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なぜか名前にゴンベと付いているが、ハタ科ハナダイ亜科に分類される種類。要するにハナダイの仲間なのだが、他のハナダイのように活発に中層に泳ぎ出ることはなく、海底からあまり離れない。写真は若魚で、体が小さいほどスマートなのだが、成長するとハナダイらしからぬ丸っこい体形となる(このへんがゴンベと名付けられた理由かもしれない)。大きさは7~8cm。●分布/西部太平洋の熱帯域 ●撮影/紀伊半島・串本