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◆SPECIALインタビュー MDWバージョン
鍵井靖章
海中世界を表現するために…

鍵井靖章さん愛用の
セイコー プロスペックス マリーンマスター プロフェッショナル
詳しくはこちら!

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◆SPECIALインタビュー MDWバージョン
鍵井靖章
海中世界を表現するために…

今、ノリに乗っている水中写真家・鍵井靖章さん。
『マリンダイビング』2月号の水中写真大特集号にもグラフとインタビューを掲載しているが、
ここでも本誌で載せられなかったエピソードなどを含めてご紹介!

鍵井靖章

鍵井靖章
Yasuaki Kagii
1971年、兵庫県生まれ。水中写真家。世界中の海をフィールドとし、様々な事象の撮影に取り組む。また、自然のリズムに寄り添い、生き物にできるだけストレスを与えないような撮影スタイルを心がける。2011年3月11日の東日本大震災以降は、岩手県の海を定期的に記録している。TV、ラジオなどのメディア出演、写真集などの著作、受賞歴など多数。

水中写真家、鍵井靖章が
誕生した

――鍵井さんは水中写真家にはどうしてなりたかったのですか?

鍵井
大学時代に伊藤勝敏さんの写真展に出会ったのがきっかけです。
百貨店のショーウインドーに伊藤先生の海中写真が飾られていたんです。
それを見て、「こういう写真撮りたい! 写真家になりたいな」と言ったら隣に歩いている友達が「私、この先生知ってるよ」と。
伊藤先生のアシスタントをしたことがあった人で、「紹介してあげるよ」って言われて。

――それまで仲間内でそういう話はしてなかったんですね。

鍵井
してなかったです。初めて言葉を発した(笑)。

――では、そのときはダイビングもしていなかったってことですよね?

鍵井
してなかった(笑)。須磨の海にしか行ったことはなかったですよ。それも海水浴。

――では、それからダイビングを? 伊藤先生に電話したんですか?

鍵井
そう。伊藤先生に電話したんです。弟子にしてくれって言ったら断られて。

――まあそうですよね。ダイビングもしていないんじゃ。

鍵井
ほんと、19か20のときのことなのですが、すごく覚えていて、家の2階の黒電話から
「すみません。鍵井と申します。弟子にしてください」と話したら
先生「君はダイビングをやったことはあるのか?」
「いや、してないです」
先生「君は写真を撮ったことがあるのか?」
「いや、撮ったことはないです」
先生「君が何を言っているのかわからない」
ガシャン!って切られたんです。

――でも伊藤先生のおっしゃるとおりですもんね(笑)。

鍵井
僕も今、もしそんな電話がかかってきたらガシャン!って切りますよ(大笑)。
でも、僕の友人のお母さんが
「鍵井君、ええ子だからちょっと見てやって、先生」と言ってくれて。
周りのバックアップがあったんです。
「そんなん言うんだったら、連れていってやろうか、鍵井君」と伊藤先生も言ってくれて、串本に連れていってもらい、そこですぐにダイビングの講習を受けた。
そうして、何度か海にアシスタントとして同行させてもらった時に、
「鍵井君、なんかこの世界に向いているかもしれへんな」と、
伊藤先生に言われて。
その言葉はすごく印象に残っています。

――ダイビングを始めて、カメラも買ったのですか?

鍵井
最初にニコンのF4を買ったんですよ。最初から当時一番いいカメラを買った。
あれが成功でしたね。(声を潜めて)撮れるもん(笑)。
当時はフィルムカメラで、現像後まで結果がわからない。
今とは違いコンパクトなカメラは、思い通りの撮影はとても難しかった。
もし、それから始めていたら、こんなに続かなかったかもしれない。
F4という、当時は水中に持ち込める最高機種で、アクションファインダーという大きめのファインダーに変更したのですが、マニュアルで最初はピント合わせが難しくて……。
後ろから師匠にバーンとはたかれました(笑)。
「ピント合わすの遅~い!」とか言って。

――それが今では……すごいですよね。

シンプルな撮影術

――鍵井さんとは何度か一緒に潜ったことがあるのですが、ホント、コレという被写体があったらずっと固まって撮ってますよね。
しかもエアが長い。

鍵井
自分でも理由はよくわからないんですが、なぜか他人よりエアが長い(空気消費量が少ない)んですよ。
撮影するのに息をいっぱい止めているくせに、意外と小さな体の女性ガイドさんと同じぐらいの使用量しかないんです。

――長年の経験で進化しちゃったんですかね。

鍵井
やはり、経験が大きいと思います。
ダイビングを始めた当初、人よりがエアの消費が早いことを少し悩んだ時期もありました。
1996年からモルディブでガイドを始めた頃から、エアの消費が少なくなっていたのを自覚しています。
僕の撮影方法って、シャッタースピードしか変えないの。
ストロボの光と絞りはほぼほぼそのままで、シャッタースピードしか変えない。

――そうなんですね。いや、絞りとかしょっちゅう変えているんだとと思ってました。

鍵井
絞りはF5とF7.1を主に使用します。
あと最近では、F1.4ですね。

――絞り1.4ってすごい明るいですね。

鍵井
1.4で撮ったらこんなふうになる(※『マリンダイビング』2月号P.8~9)。
このレンズ(注:シグマ35mmF1.4 DG HSM)を使ってるときは全部1.4で撮っているんです。

新しいレンズで写真の幅を広げたい

――こだわりがあるんですね

鍵井
こだわりといえば、キヤノンから最近出た11-24ミリのレンズや35ミリなど、新しいレンズを使用することで、いろいろな可能性を試してみたいと思っています。
もちろん、今まで持っているカメラだって大切にしていますよ(笑)。
揺れるボートの上ではフィンやスーツの上にカメラを載せたりして衝撃から守ったり。
毎回毎回、面倒でもダイビングが終わったら全部ばらして、塩抜きして、乾かして、すべて解体しています。
ちょっと怠るとダメになっちゃう。
アームを外さずに帰国したらちょっとゆがんでいたとか、過去にはあったので、そこはもう毎回頑張っています。

――そういえば、ここ最近ずっとそのダイバーズウオッチを着けていますね。

鍵井
2015年の夏からセイコーの「プロスペックス マリーンマスター プロフェッショナル」っていうダイバーズウオッチを愛用しているのですが、これって陸上の時間を刻んでくれているじゃないですか。
だから命綱になっているってことはある。
これまで僕はダイブコンピュータしか使っていなかったから、地上の世界の時間は気にしていなかったんです。
インド洋で、マダラトビエイの写真を夢中で撮っていたら一人ぼっちになって。
ダイバーズウオッチを見たら、夕方4時を過ぎていた。
「おれ、これでみんなとはぐれたら日が暮れて大捜索になってしまう……」とすごく思った。
海の中では陸上の時間なんて知る必要はないんじゃないの?って思っていたのですが、いざ使い始めてみると、もうちょっと大きく撮影に取り組むことができる。
何よりも僕と地上をつなげてくれる役割をはたしてくれているので、安心感もある。
今の僕にとっては帰る場所と時をちゃんと示してくれているものになりつつあるかなと。

――それにしても鍵井さん、右利きなのに右に着けているのもこだわりか。

鍵井
ずっともう右に着けているんです。な~んか、こだわっちゃうんだよね(笑)。

メイドインジャパンは、日本人の水中写真家としてのモチベーションをUP

――ダイバーズウオッチがなくてはならない存在に?

鍵井
昔、先輩やかっこいいダイバーたちがこの先代のモデルを使っていて、かっこいいなぁと憧れていたんです。それが今、ある広告の仕事が縁で愛用しているわけですが、周りの人たちから「かっこいい!」って言われるんです。
「じゃあ、どうぞ」って実際にはめてもらうんですよ。
他人が着けているのを見てもやっぱりカッコイイですよね。
あれ、僕、こんな感じではめているの?みたいなね(笑)。
このピンクゴールドカラーの差し色が今っぽくてかっこいい。僕が昔、憧れていたのは真っ黒のやつだったけれど。

――70~80年代、セイコーのダイバーズウオッチは確かにダイバーの憧れであり、ステータスでしたよね。

鍵井
メイドインジャパンなのもいい。
一時期はちょっと海外ブランドとかに興味を引かれ……ということも正直あったけれど、メイドインジャパンはやっぱり「いい」ですよ。
日本の誇りって大切だと思う。
僕がいい写真を撮って、「おおっ!」と言われるようになればいい。
そういうモチベーションを上げてくれますよね。
あと、皆さんもご存じのように僕は東日本大震災以降、岩手県の海を潜っています。
震災後の海中の再生の様子を記録しているのですが、このダイバーズウオッチは同じ岩手県で生まれた時計なんですよ。
これも一つの出会いかなと思いましたけどね。

環境に配慮できる
かっこいいダイバーになりたい

――撮影するときにこだわっていることもあるのでは?

鍵井
生き物にストレスを与えないように撮影をすることですね。
震災直後はまったく着底をしなかった時期もあったんです。
あまり海底に負担をかけないように撮影しようと。
あと、すごく理想的なことを言うと、魚たちが変わらずそこにいてくれること。
僕たちってやっぱりストレスを与えるわけじゃないですか。
ストロボを当てたり、近づくだけで逃げていくお魚とかいるわけじゃないですか。
でも、撮影したのにその場所にそのままお魚がいてくれたら、そういう撮影ができたときは、うれしいですし、満足感も大きい。

――撮影だけではなくてダイバー全員に言えることですね。

鍵井
かっこいいダイバーになりたいという気持ちがすごく高くて。
かっこいいダイバーって何だろうと考えたら、着底をしないとか、自然環境を守ることかなと。
ファッションや音楽と融合しているサーフィンやスノボーはかっこいいなと思うけれど、でも、僕らダイバーにもできることはある。
見た目がかっこいいというだけじゃなくて、“生き方”、姿勢でかっこよさを出せるのではと。

鍵井靖章さんの愛用品

セイコー プロスペックス マリーンマスター プロフェッショナル
1000m飽和潜水用防水モデル/メカニカル自動巻
SBDX014 ¥350,000+税
セラミックス製外胴プロテクター/チタンケース/サファイアガラス/シリコンバンド
ケースサイズ 52.4mm
問い合わせ先 セイコーウオッチ(株)お客さま相談室 フリーダイヤル0120-061-012

詳しくはこちら!!
URL: https://www.seiko-watch.co.jp/prospex/

鍵井氏愛用品と色違いのオールブラックモデルをラインアップ

鍵井氏の愛用品と色違いのオールブラックモデルもラインアップ

■撮影/原田雅章 ■聞き手・構成/後藤ゆかり(マリンダイビング)

鍵井さんのインタビューは
『マリンダイビング』2月号にも掲載されています!

月刊『マリンダイビング』2月号
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