【新連載】ウミウシの素顔
第1回 ウミウシの形 その1〜触角
by DSあらいぐま

ダイビングで撮りたい海の生物といえばウミウシ。マリンダイビングW E Bの連載「ダイバー調査」の「お気に入りの生物ランキング」でも人気ナンバーワンを獲得しました。そこで、世界を潜り歩き、1000種類以上のウミウシを撮影している新井隆大さんが、さまざまな視点でウミウシの魅力を紹介する新連載がスタート!まずはその形について、2回に分けてご案内します。初回はウミウシの触角に注目してみました。
※2026年7月の情報です

アンティオペラ・クリスタータ(水深20m、体長約0.5cm、撮影地:スウェーデン)
スウェーデンで潜る機会があった時に最初に目にしたウミウシです。僕にとって、図鑑でもネットでも見たことがない、そんなウミウシでした。

ホホベニモウミウシ(水深18m、体長約0.8cm、撮影地:インドネシア・バリ)
ウミウシを撮るなら見に行かないと、ということでバリに行って撮影。地元では「ピンクチーク」と呼ばれる人気のウミウシです
はじめまして! 葉山のダイビングショップ「DSあらいぐま」の新井です。実は最初は全く興味がなかったこの小さな小さな生きものに惹かれ、宮古島から知床、海外はインドネシアなどの南国からスウェーデンなど北国まで、ウミウシのいる海ならどこへでも潜りに行っています。この連載では「ウミウシとはどんな生きものか」を、ウミウシ観察を始めて間もない方や、もっとウミウシを見たいダイバーの皆さんに紹介していければと思います。まずはお世話になっているウミウシガイドの皆さん、ウミウシダイバーの先輩方、そしてショップのゲストの皆さま、そしてお世話になっているウミウシガイドの方々、Web図鑑「世界のウミウシ」運営者の木元さんにお礼を申し上げたいと思います。いつもありがとうございます。
そもそもウミウシとは?
貝殻を脱ぎ捨てた軟体動物
「海の宝石」とも称されるウミウシ。その多様な色彩とユニークな形態は、ダイバーだけでなく写真家や一般の方々をも魅了してやみません。しかし、一言で「ウミウシ」と言っても、その姿は千差万別です。まずは、ウミウシを「形」という切り口で、それぞれの特徴をご紹介していきたいと思います。
ウミウシは、生物学的には巻貝と同じ「軟体動物門 腹足綱」に属します。このうち、進化の過程で、身を守るための重い貝殻を退化、消失させたグループが総じてウミウシと呼ばれています。

サビウライロウミウシ(水深15m、体長約1.5cm、撮影地:沖縄本島)
ウミウシは冬~春が多いということで夏は沖縄本島に行っていませんでしたが、いざ行ってみると見せてもらえたウミウシです。思い込みはいけないですね。
ウミウシは貝殻を持たない代わりに、化学的な毒を体内に蓄えたり、派手な警告色を身にまとったりすることで外敵から身を守っているのです。この「自由な身体」こそが、驚くほど多様な形態を生み出すことになりました。
実は正確な分類と、日本のスキューバダイビングで呼ばれる「ウミウシ」には少し違いがあります。学術的な厳密さよりも、見た目の可愛らしさや生態の共通点などから、我々ダイバーの間では貝殻を持つ仲間もまとめて「ウミウシ」として、親しまれているのです。

ベニヤカタガイ(水深1m、体長約1cm、撮影地:沖縄本島)
夜になると出てくるウミウシもいます。貝殻をもつベニヤカタガイなどがそのタイプ。昼は見られないウミウシを求め、ウミウシダイバーは夜の海に繰り出します。
ウミウシの形
ウミウシを楽しむ上で覚えておきたい部位を3つ紹介します。撮影する時のヒントになると思うので、参考にしてみてください。
①触角:「角」のような1対の突起
②鰓(エラ):お尻の近くにある花のような器官
③眼点:よくよく見ないと分からない黒い点
この3つを意識すると、「次はこう撮ってみよう」「このウミウシの眼点を撮ってみたいな」など、キレイな背景だけでない、撮り方の楽しみが増えてくるのではないでしょうか。
①触角
海〝牛〟と呼ばれる理由にもなっている、頭に生えている二本の突起。センサーのような役割を果たしています。ウミウシはこれを用いて仲間を見つけたり、餌を見つけたりしています。
触角の形は、
・平らなもの
・ヒダ状のもの
・電波塔型のもの
・丸まっているもの
・先が枝分かれしているもの
などなど、さまざまです。

触角が平らなアカエラミノウミウシ属の一種(水深20m、体長約0.8cm、撮影地:大瀬崎)
例えば、アカエラミノウミウシの仲間は平らな(平滑な)触角をしています。ただし、その中でも先端のみ白かったり、触角が黄色かったり、と違いがあります。

触角がヒダ状のサーシャコヤナギウミウシ(水深15m、体長約1.5cm、撮影地:沖縄本島)
タイトルバックでも紹介した写真上のサーシャコヤナギウミウシの触角は、ヒダ状になっています。もしかしたらこれは、触角の表面積を増やすための進化なのかもしれませんね。

触角が電波塔型のアカメミノウミウシ(水深10m、体長約0.8cm、撮影地:葉山)
アカメミノウミウシの触角には2つの輪があり、電波塔のような形をしています。ほかに、チゴミノウミウシやネアカミノウミウシなども同じような形の触角をしています。

触角が丸まっているウミフクロウ(水深3m、体長約1cm、撮影地:葉山)
ウミフクロウの触角は外側に丸まっています。実はマンタの頭鰭と同じような丸まり方をしているのですが、ここが開くのを私は見たことはありません(笑)

触角の先が枝分かれしているユビノウハナガサウミウシ(水深3m、体長約1cm、撮影地:葉山)
ユビノウハナガサウミウシの触角には太い軸があり、その周りを細い枝状の突起が囲んでいます。ユビノウハナガサウミウシをはじめとする「シロハナガサウミウシ」の仲間は、これと同じ形の触角をしています。
ということで、まずは形に注目してさまざまなウミウシを紹介してみました。ウミウシの形について、残りの②鰓(エラ)、③眼点は、2回目でさらに詳しく紹介していくのでお楽しみに!
Profile
新井隆大
Takahiro Arai
「一緒にウミウシ探してみない?」そんな妻のなんとなくの一言から、すっかりウミウシ探しに夢中になりました。葉山をウミウシ探しの拠点としつつ、水温0℃の北の海から水温30℃の南国まで、海水さえあれば様々なところでウミウシ探しをしています。これまで見たウミウシは1000種類以上になりました。今、行きたいけど予定が立たない海はザンジバル。「そこまでしろとは言っていない」、妻には最近そう言われます(笑)
⚫︎ダイビング歴:10年
⚫︎経験本数:約1,700本











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