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【連載】ウミウシの素顔
第4回 貝殻のあるウミウシ①
by DSあらいぐま

ウミウシの素顔

海の宝石、ウミウシをひたすら探し求めるウミウシ・ダイビングのWeb版。ガイドは珍種、希少種を撮影してきた葉山のダイビングショップ《DSあらいぐま》新井隆大さんです。AIでは「貝殻を持たない巻貝の仲間」とされるウミウシですが、今月のテーマは、貝殻のあるウミウシ。その第1弾です。

※2026年10月の情報です

ウミウシとは?

《DSあらいぐま》の新井です。この連載では「ウミウシとはどんな生きものか」を、ウミウシ観察を始めて間もない方や、もっとウミウシを見たいダイバーの皆さんに紹介していきたいと思います。
ウミウシとは? 近年はやりのAIに聞いてみると、こんな答えが返ってきました。
「ウミウシは、貝殻を持たない巻貝の仲間で軟体動物の一種です」
なるほど、ウミウシは貝殻を持たない巻貝の仲間なのか。ということで、手持ちのウミウシ図鑑を見てみましょう。

ウミウシ図鑑の最初の一枚

まずは、(株)誠文堂新光社から出ている新版ウミウシ1260種 特徴がひと目でわかる図解付きから。最初に紹介されているのがこの「オオシイノミガイ」です。

オオシイノミガイ 写真/《天草よかよかダイビング》中野誠志

オオシイノミガイ 写真/《天草よかよかダイビング》中野誠志

次に同じ(株)誠文堂新光社発行の沖縄のウミウシDNA解析による最新の分類図鑑1089種の図鑑パートで最初に紹介されているのがこちら。

コシイノミガイ (水深3m 体長1cm  撮影地:城ヶ島)

コシイノミガイ (水深3m 体長1cm 撮影地:城ヶ島)

続いて、文一総合出版発行の日本のウミウシ第二版、最初の掲載種がこのムラクモキジビキガイ。

ムラクモキジビキガイ(水深3m 体長1cm  撮影地:天草) 写真/《天草よかよかダイビング》中野誠志

ムラクモキジビキガイ(水深3m 体長1cm 撮影地:天草)
写真/《天草よかよかダイビング》中野誠志

そして、(株)誠文堂新光社発行ウミウシの生態観察図鑑 食餌、飼育記録から繁殖まで 知られざる生存戦略を知る、最初の掲載種はミスガイです。

ミスガイ(水深0.5m  体長5㎝  撮影地:葉山)

ミスガイ(水深0.5m 体長5㎝ 撮影地:葉山)

洋書のNudibranchs of the Coral Triangle、最初の掲載種はヘキサブランクス・サングイネウス。

ヘキサブランクス・サングイネウス(水深15m 体長20㎝  撮影地:宮古島)

ヘキサブランクス・サングイネウス(水深15m 体長20㎝ 撮影地:宮古島)

最後に同じく洋書のNudibranch &Sea Slug Identification INDO-PACIFIC。主に西インド洋に生息するらしいウミウシを収録しているようです。この本のウミウシの写真は持っていないので、代わりに同じ属で、よく似たマメウラシマガイ(Ringicula doliaris)を紹介します。

マメウラシマガイ(水深15m  体長1㎝  撮影地:大瀬崎)

マメウラシマガイ(水深15m 体長1㎝ 撮影地:大瀬崎)

ということで、6分の5のウミウシはどう見ても貝殻がありますね。

ウミウシガイド的貝持ちウミウシ雑分類

つまり日本語で言う「ウミウシ」とは、意外と定義が曖昧なものだったりします。学術的な分類学の話は専門家に任せるとして、ここでは一人のダイビングガイドとして、特に貝殻があるウミウシたちを今回は、以下に分けて紹介していきます。
・貝殻から軟体部が少し見える「ほぼ貝」のウミウシ
・背中に貝殻のある「カタツムリ型」のウミウシ
・よくみたら貝殻がある「貝殻埋没型」ウミウシ
・貝殻が透けて見えるよ「スケルトン」ウミウシ
生物学上の分類でなく、あくまで見た目の印象で分けています。今回はそのうちの2つ、「ほぼ貝」のウミウシと「カタツムリ型」のウミウシを紹介したいと思います。

「ほぼ貝」のウミウシ

ヨワコメツブガイ(水深4m 体長0.8cm 撮影地:葉山)

ヨワコメツブガイ(水深4m 体長0.8cm 撮影地:葉山)

これを見て「ウミウシだ」!と言えるダイバーは、もう相当ウミウシ好きに分類されると言っていいでしょう。「カタツムリ型」と何が違うのか?と言われると、ほぼ貝です。パッと海で見たときはただの貝殻なのですが、よ〜く見続けると軟体部が出てきます。ちゃんと眼点もあるんですよ?可愛いですね。

ハデヤママユガイ(水深12m 体長0.8cm 撮影地:天草)

ハデヤママユガイ(水深12m 体長0.8cm 撮影地:天草)

この手の「ほぼ貝」のウミウシは、見つけた段階では軟体部は引っ込んでいることがほとんどで、「待つ」フェーズが必要です。なのですが‥‥待って出てくるのがウミウシではないときも多々あります。ヤドカリだったり、イカリムシの仲間(?)だったり‥‥。そのぶん、ちゃんと軟体部が出てきたときの喜びはひとしおです。

アミメアワツブガイ(水深5m 体長0.5㎝ 撮影地:伊豆大島)

アミメアワツブガイ(水深5m 体長0.5㎝ 撮影地:伊豆大島)

この「ほぼ貝」のようなウミウシは、大抵、砂地に埋まっていることが多いのですが、違う環境で見つかることもあります。これは伊豆大島の「ケイカイ」で見つけたアミメアワツブガイ。早朝にハンマーヘッドシャークが見られることで有名なスポットですが、実は伊豆大島きってのウミウシスポットだったりもします。ベストシーズンに行くと3本で80種類以上もウミウシが見られることも‥‥。

「カタツムリ型」のウミウシ

次は「カタツムリ型」のウミウシです。比較的ウミウシらしいウミウシたちです。SNSなどで目にする「貝殻のあるウミウシ」は、大抵このタイプかもしれません。軟体部が大きく、貝殻内に格納されている時でも貝殻からはみ出ていることもしばしば‥‥。

タマゴガイ(水面10m  体長3cm 撮影地:台湾・懇丁)

タマゴガイ(水面10m 体長3cm 撮影地:台湾・懇丁)

こちらは台湾で見たタマゴガイ。この手のウミウシは軟体部だけでなく、貝殻も見分けるポイントとなります。このタマゴガイは貝殻も特徴的で分かりやすいですね。

ブラ・グールディアナ(水面1m  体長1.5cm 撮影地:サンディエゴ)

ブラ・グールディアナ(水面1m 体長1.5cm 撮影地:サンディエゴ)

こちらはサンディエゴの透明度がほぼないような砂地のナイトダイビングで見つけたナツメガイの仲間。ブラ・グールディアナです。何もない中、これだけがいてくれました。体から粘液を出してそれに砂がくっついています。

ヒメヤカタガイ(水面8m  体長1cm 撮影地:早川)

ヒメヤカタガイ(水面8m 体長1cm 撮影地:早川)

ついつい海外で見た「カタツムリ型」のウミウシを紹介してしまいましたが、国内にも様々な種類がいます。こちらはヒメヤカタガイ。神奈川県小田原市早川のナイトダイビングで見たウミウシです。このような貝殻のあるウミウシは、日中は砂に潜っていることも多く、ナイトダイビングでしか見られないこともあります。

ミスガイ(水面1m  体長0.8cm 撮影地:葉山)

ミスガイ(水面1m 体長0.8cm 撮影地:葉山)

葉山にも貝殻を持つウミウシがいます。冒頭に紹介したミスガイですが、小さいと軟体部の青いラメが分かりやすく、可愛いですね。この「カタツムリ型」と勝手に僕が呼んでいるウミウシたちは目が少し垂れ目になっていて、写真を撮りたくなる風貌をしていることが多いです。今回は貝殻を持つウミウシの前編として、「ほぼ貝」のウミウシと「カタツムリ型」のウミウシを紹介しました。次回は、実はよく見れば貝殻があるような、一見、貝殻がなさそうな「貝殻を持つウミウシ」を紹介してみたいと思います。お楽しみに!
なお、今回は熊本県天草諸島を拠点とするダイビングショップ《天草よかよかダイビング》オーナーの中野さんに写真をお借りしました。託児もお願いできるウミウシ好きのダイビングショップです。ありがとうございました。

Profile

新井隆大
Takahiro Arai

ダイビングショップ《DSあらいぐま》代表

「一緒にウミウシ探してみない?」そんな妻のなんとなくの一言から、すっかりウミウシ探しに夢中になりました。葉山をウミウシ探しの拠点としつつ、水温0℃の北の海から水温30℃の南国まで、海水さえあれば様々なところでウミウシ探しをしています。これまで見たウミウシは1000種類以上になりました。今、行きたいけど予定が立たない海はザンジバル。「そこまでしろとは言っていない」、妻には最近そう言われます(笑)
⚫︎ダイビング歴:10年
⚫︎経験本数:約1,700本

新井隆大