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【新連載】ウミウシの素顔
第2回 ウミウシの形 その2〜鰓(エラ)と眼点(ガンテン)
by DSあらいぐま

ウミウシの素顔

人気のウミウシ・ダイビングを様々なテーマでオンライン・ガイドしていく新感覚連載。案内してくれるのは、世界を旅し、1000種類以上を撮影する葉山のダイビングショップ《DSあらいぐま》の新井隆大さんです。初回に続き、第2回もテーマは「形」。今回は鰓(エラ)と眼点(ガンテン)に注目してセレクトしてくれました。ぜひ、作品づくりの参考にしてくださいね!

※2026年8月の情報です

ウミウシのここに注目!

《DSあらいぐま》の新井です。この連載では「ウミウシとはどんな生きものか」を、ウミウシ観察を始めて間もない方や、もっとウミウシを見たいダイバーの皆さんに紹介していきたいと思います。第一回の繰り返しになりますが、ウミウシを楽しむ上で覚えておきたい部位がこちら。
①触角:「角」のような1対の突起
②鰓(エラ):お尻の近くにある花のような器官
③眼点(ガンテン):よくよく見ないと分からない黒い点
この3つを意識すると、「次はこう撮ってみよう」「このウミウシの眼点を撮ってみたい」など、キレイな背景だけでない、撮り方の楽しみが増えてくるのではないでしょうか。今回は、ウミウシの鰓と眼点について紹介します。

ウミウシの形② 鰓(エラ)

「ウミウシ」と聞いて多くの人が思い浮かべる、あのお尻のフサフサ——それが「二次鰓(ニジエラ)」です。これを用いてウミウシは呼吸(ガス交換)を行っています。「二次」鰓があるのに「一次」鰓はないのか?そう聞かれることも多いのですが、「一次鰓」は軟体動物の中で、体の中に隠れている鰓を指すそうです。なので「二次鰓」を持つウミウシと「一次鰓」を持つウミウシがいるのです。

二次鰓(ニジエラ)

前回の「触角」と同様、二次鰓も形や色が様々です。
・外側に開いているもの
・内側に丸まっているもの
・半月状のもの
などがあります。
ちなみにこの二次鰓はウミウシの肛門を囲むように存在することが多く、二次鰓の中から排泄を行っているように見えることもありますが、二次鰓の機能はあくまで呼吸です。

〈外側に開いているもの〉ミゾレウミウシ(水深15m、体長約2cm 撮影地:沖縄本島)

〈外側に開いているもの〉
ミゾレウミウシ(水深15m、体長約2cm 撮影地:沖縄本島)

ミゾレウミウシの二次鰓は、特に成体になると大きく外側に開くことがあります。うねりに揺られることもあり、きれいな形で写真に納めるのが意外と難しいです。

〈内側に丸まっているもの〉ハラックサウミウシ(水深6m、体長約0.8cm 撮影地:葉山)

〈内側に丸まっているもの〉
ハラックサウミウシ(水深6m、体長約0.8cm 撮影地:葉山)

ハラックサウミウシの二次鰓は内側に丸まっています。ぼんぼりのようで可愛いですね。うねりに揺られることが少なく、撮りやすいです。

〈半月状のもの〉アオクシエラウミウシ(水深1m、体長約0.8cm  撮影地:葉山)

〈半月状のもの〉
アオクシエラウミウシ(水深1m、体長約0.8cm  撮影地:葉山)

二次鰓は全てが上から見て肛門を囲むように丸く付いているわけではありません。かなり見づらいですが、アオクシエラウミウシの二次鰓は半月状をしており、鰓が後ろ向きに付いています。一眼で写真を撮っている人はぼかしすぎたりすると鰓がすぐ識別できなくなってしまうので要注意です。

二次鰓の収納

そして二次鰓には形だけではなく、見逃してはいけない要素があります。それは「二次鰓は引っ込む」ことです。

カンムリハラックサウミウシ(水深15m、体長約0.8cm、トランバン)

カンムリハラックサウミウシ(水深15m、体長約0.8cm、トランバン)

これはウミウシの写真を分かりやすく、識別しやすく撮るための重要な要素です。全ての二次鰓がそうではないのですが、二次鰓には引っ込むものがあります。そして一回引っ込んでしまうと、なかなか出てこないものもあります。ウミウシの写真を撮った後は「しっかり二次鰓、出てるかな?」ということも確認しましょう。
この写真はどうしても二次鰓が出ていないときに撮ってしまった写真です。このカンムリハラックサウミウシには、ハラックサウミウシと同様に内側に丸まる二次鰓があるのですが、二次鰓が出てくるはずの場所に穴だけがあります。これでは分かりやすい写真とは言えなくなってしまいますね。

一次鰓

一次鰓は隠れて写真には納めることが難しいのですが、ひらりとウミウシが動いた瞬間に見ることができます。
・上から確認できるもの
・横から生えているもの
・下から確認できるもの
などこちらも様々です。

〈上から確認できるもの〉アカキセワタ(水深4m、体長約0.8cm 撮影地:葉山)

〈上から確認できるもの〉
アカキセワタ(水深4m、体長約0.8cm 撮影地:葉山)

アカキセワタの鰓はまれに上から確認することができます。普段は隠れているのですが、確かによく見れば鰓があることが分かります。動いている瞬間や、小さなうねりによって開いている瞬間を上手くとらえてみましょう‥‥といってもそう簡単に撮れるものではないので運も大事ですね。

〈横から確認できるもの〉ウミフクロウ(水深3m、体長約1cm、撮影地:葉山)

〈横から確認できるもの〉
ウミフクロウ(水深3m、体長約1cm、撮影地:葉山)

これは第1回「触角」でも紹介したウミフクロウです。ウミフクロウをはじめとするフシエラガイの仲間は体の右側に鰓があります。必ず”右側”にあります。なぜかというと、ウミウシが巻貝の仲間であるからと言われています。
貝は専門ではないのですが、巻貝の仲間には「左巻き」と「右巻き」があり、海に生きる貝の大半は「右巻き」であると言われています。その影響で臓器が片方に寄っているのだとか。より学術的な説明は専門書や専門分野の先生方にお任せしようと思います。

〈下から確認できるもの〉ツノキイボウミウシ(水深15m、体長約4cm、撮影地:沖縄本島)Photo by 00000 Ogawa

〈下から確認できるもの〉
ツノキイボウミウシ(水深15m、体長約4cm、撮影地:沖縄本島)
写真/小河亮俊

「イボウミウシに二次鰓ってあるんですか?」
ウミウシガイドをしていると稀に聞かれることがありますが、イボウミウシの仲間の鰓は実は下から見ないとわからないようになっています。こちらはウミフクロウなどのフシエラガイの仲間とは違い、体の両側に鰓が生えています。
うまい具合に転がっている写真はなかなかないので、今回の写真は熊本県在住のウミウシダイバー、小河氏よりお写真をお借りしました。あまり撮る人はいないですが、本当に確実に種の同定を行いたいのであれば、ウミウシの裏面を撮る必要があります。

ウミウシの形③ 眼点

ウミウシにも「眼」はあります。「眼」といえども眼としての機能はほとんどなく、黒色の小さな2つの点が眼点です。

葉山のご当地キャラクター、アオウミウシのミューシー(水深: 地上、体長:15cm、撮影地:葉山)

葉山のご当地キャラクター、アオウミウシのミューシー
(水深: 地上、体長:15cm、撮影地:葉山)

ウミウシの眼、といえば皆さんがお持ち(?)のウミウシぬいぐるみの眼はどこにありますか? たいてい触角の前にあると思います。可愛いからね。
だがしかし、ウミウシの眼点の場所はウミウシの種類によっても様々。そのウミウシが属するグループによって、だいたい同じ場所にあります。
眼点の場所は大まかに、
・触角の間
・触角の後
・正面
・体の下に隠れている
のいずれかです。

〈触角の間〉カノコウロコウミウシ(水深10m、体長約1cm、撮影地:奄美大島)

〈触角の間〉
カノコウロコウミウシ(水深10m、体長約1cm、撮影地:奄美大島)

カサノリタマナウミウシの眼点は触角と触角の間にあります。このタイプの眼点が一番、「ウミウシの眼」と感じることができます。第1回で紹介したホホベニモウミウシなどもこの位置に眼があります。

〈触角の付け根〉アカヒゲミノウミウシ(水深3m、体長約0.8cm、撮影地:葉山)

〈触角の付け根〉
アカヒゲミノウミウシ(水深3m、体長約0.8cm、撮影地:葉山)

アカヒゲミノウミウシの眼点は触角の真下にあります。分かりやすいですね。触角の間にある眼点の次に「眼」を感じることのできる眼点です。多くのミノウミウシの仲間はこの位置に眼点があります。

〈触角の後ろ〉アオウミウシ(水深10m、体長約0.8cm、撮影地:葉山)

〈触角の後ろ〉
アオウミウシ(水深10m、体長約0.8cm、撮影地:葉山)

このタイプの眼点はあまり認識されないことが多いです。アオウミウシのぬいぐるみを見ると別の場所に眼が付いていることが多いですが、その度に「眼点は後ろなんだよ。」とひそかに思っています。でも正面のほうが可愛いから仕方ないですね。

〈正面〉ビウウェ属の一種2(水深1m、体長約1cm、撮影地:懇丁)

〈正面〉
ビウウェ属の一種2(水深1m、体長約1cm、撮影地:懇丁)

このウミコチョウや、ツバメガイの仲間は正面に眼があります。真正面から撮ると眼の位置が分かりやすくなります。触角がないので正面と書きましたが、触角の間と大差ないかもしれないですね。

〈体の下に隠れている〉ルンキナウミウシ属の一種4(水深5m、体長約0.5cm、撮影地:葉山)

〈体の下に隠れている〉
ルンキナウミウシ属の一種4(水深5m、体長約0.5cm、撮影地:葉山)

一見すると眼がないように見えるウミウシも、知っていれば撮れる眼があります。このルンキナウミウシ属の仲間は、下から撮ると体の下に隠れています。
ここまで「ウミウシの形」を考えるうえで、どのような特徴があるのか、どのような部位を見たら面白いのかを簡単に紹介してみました。特に眼点については、知っている、知っていないで「あーー!眼が写ってる!」と、撮る楽しみがまた一つ変わるのではないでしょうか? 次回は、一見、「これはウミウシ?」と思うようなウミウシたち、「泳ぐウミウシ/浮いてるウミウシ」を紹介していきたいと思います。

Profile

新井隆大
Takahiro Arai

ダイビングショップ《DSあらいぐま》代表

「一緒にウミウシ探してみない?」そんな妻のなんとなくの一言から、すっかりウミウシ探しに夢中になりました。葉山をウミウシ探しの拠点としつつ、水温0℃の北の海から水温30℃の南国まで、海水さえあれば様々なところでウミウシ探しをしています。これまで見たウミウシは1000種類以上になりました。今、行きたいけど予定が立たない海はザンジバル。「そこまでしろとは言っていない」、妻には最近そう言われます(笑)
⚫︎ダイビング歴:10年
⚫︎経験本数:約1,700本

新井隆大