連載
ドルフィンガイド潤さんのイルカ見聞録
第5回 バハマでイルカと泳ぐ 前編

人気連載「野生のイルカと泳ごう!」の筆者でダイビングガイドの長谷川潤さんによるシリーズ第2弾。長谷川さんが海の中で見聞きしてきた野生イルカの行動やイルカにまつわるストーリーを、美しい写真と動画でつれづれなるままに綴っていきます。これを読めば、野生のイルカが身近に感じられ、大好きになること間違いなし! 第5回は、世界で最も人馴れしていると言われる野生のイルカたちが暮らすバハマ・ビミニ諸島でのドルフィンスイム最新レポート・前編です。「ドルフィンスイムの聖地」と呼ばれるバハマの魅力を、2回に渡ってたっぷりお届けいたします。
※2026年8月の情報です
はじめに

マリンダイビングフェア2026で開催した写真展「碧の彼方に―Dolphins」(2026年4月3日)
僕が初めてバハマを訪れて野生のイルカと一緒に泳いだのは2019年。2023年と2024年にはミラーレス一眼とハウジングを持参して、本格的にイルカの撮影を行いました。その時の写真と動画を展示したのが、今年のマリンダイビングフェアで開催した写真展「碧の彼方に―Dolphins」です。そして来年、さらに大きな会場での写真展開催と写真集の出版を目指すことにしました。今回のバハマ行きは、そのための作品製作が目的です。撮影に使うカメラも、動画が得意なSONY α7SⅢから高解像度の写真(静止画)が撮れるα7RⅤに変更。
本来は動画が大好きなので、「嗚呼、ここ動画で撮りたいな…」という気持ちをぐっと抑えて、静止画の撮影にいそしみました(笑)。そんなわけで、今回はイルカの連載を始めて以来初の「動画ナシ」回になりますことをご了承ください!
ドルフィンスイムの聖地・バハマとは?

バハマのマップ①(オレンジ色がバハマ所属の島) adobe stockより
本題に入る前に、まずは今回訪問したバハマについて簡単にご紹介いたします。
バハマは、米国フロリダ半島の西側からキューバの北側にかけて点在する約700の島々から成る海洋国家です。首都はニュープロビデンス島にあるナッソー。人口は約40万人で、英語を公用語とし、通貨はバハマ・ドルです。美しい白砂のビーチやサンゴ礁に恵まれ、観光業が経済の中心。ドルフィンスイムの他、シャークダイビングも世界的に人気です。ちなみに、たまにカリブ海の国として紹介されているのを目にしますが、これは誤りで、北大西洋にある国です。ドルフィンスイムを行うエリアは、バハマの西の端にあるビミニ諸島です。

ドルフィンドリーム号(2026年7月19日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA
バハマでドルフィンスイムをする方法は、大きく分けて2つあります。一つはバハマ国内に滞在して、イルカが住んでいるエリアに近い島から日帰りのドルフィンスイム船に乗るという方法。もう一つは米国のフロリダ半島「ウェスト・パーム・ビーチ」から出ているクルーズ船「ドルフィンドリーム号」に乗って、1週間のドルフィンクルーズに参加する方法。ぼくはいつも後者の方法でドルフィンスイムを行っています。
いよいよバハマへ!そして夕暮れの邂逅

バハマのマップ②ドルフィンクルーズのコース adobe stockより
ドルフィンドリーム号は、米国のウェスト・パーム・ビーチを出航すると、まずはバハマへの入国手続きのために、ほぼ真東にあるグランドバハマ島の「ウエスト・エンド」を目指します。入国手続きが完了すると、ウエスト・エンドから南南西に進路を取り、イルカたちが暮らすビミニ諸島に向かいます。

ドルフィンドリーム号から見る朝の海(2026年7月19日 )フロリダ半島沖 Photo by JUN HASEGAWA
クルーズ船「ドルフィンドリーム号」は現地時間の7月18日22時頃、ウエスト・エンドに向けてウェスト・パーム・ビーチの港を出港しました。翌日の早朝に目が覚めて、船の甲板に出ると、赤く染まった入道雲が鮮やかに空を彩っていました。

ドルフィンドリーム号から見る日の出(2026年7月19日) フロリダ半島沖 Photo by JUN HASEGAWA
そして間もなく、船の左前方から朝日が上って来ました。これから始まるイルカたちとの日々を想い、胸が高まります!

ドルフィンドリーム号から見るウエスト・エンドの風景(2026年7月19日) グランドバハマ島 Photo by JUN HASEGAWA
朝8時頃、ドルフィンドリーム号は南国ムード溢れる静かな町、ウエスト・エンドに到着しました。キャプテンのスコットが上陸して入国手続きをする間、ぼくらは船の中で朝食をとったり、リビングで談笑したり、ちょっとだけ上陸してみたり…思い思いに過ごします。

船のリビングでドルフィンスイムのブリーフィング(2026年7月19日)バハマ海域 Photo by JUN HASEGAWA
ウエスト・エンドでの入国手続きを終えたドルフィンドリーム号は、イルカたちが暮らすビミニ諸島を目指してグランドバハマ島を出港しました。ビミニへの到着予想時刻は17時頃。バハマは20時くらいまでは明るいので、うまくイルカを見つけることができれば、この日の内にスイムをすることも可能です。
16時頃からリビングで、ガイドのコナーによるドルフィンスイムのブリーフィング。その後ぼくも甲板に行ってイルカを探しました。クルーが遠くにボトルノーズ(ハンドウイルカ)の群れを見つけましたが残念ながらロスト。その後イルカは姿を現さず。船は夜の停泊地であるビミニ島に向けて転舵し、全体に諦めムードが漂いはじめます。

夕暮れの海で戯れるイルカたち①(2026年7月19日) バハマ・ビミニ諸島 Photo by JUN HASEGAWA

夕暮れの海でイルカと泳ぐYuki(2026年7月19日)バハマ・ビミニ諸島 Photo by JUN HASEGAWA
しかしくじけず、気を取り直して本気のイルカ探しを継続。すると船の右斜め前から、水面スレスレの浅いところを泳いで来る複数のグレーの影が!大本命のタイセイヨウマダライルカです!!
ぼくが「ドルフィン!スポテッド!!」と叫んでクルーに伝えると、船は減速し、クルーとゲストは慌ただしくスイムの準備を始めます。準備をしながら海面のイルカたちの様子を確認すると、どうやら数組の親子イルカを含む10頭弱の群れのようです。
日没前のやや薄暗い海にエントリーすると、そこはドルフィン・パラダイス。世界一フレンドリーと言われるバハマのタイセイヨウマダライルカの本領発揮です。群れのイルカ全体が、ぼくらを歓迎してくれているようでした。

夕暮れの海で戯れるイルカたち②(2026年7月19日)バハマ・ビミニ諸島 Photo by JUN HASEGAWA
感動的なウェルカム・スイムは、日没で海の中が暗くなってしまったため50分ほどで終了。まだまだ遊び足りない感じのイルカに後ろ髪を引かれつつ、船に戻りました。

ドルフィンドリーム号のスコット船長とゲストたち(2026年7月19日)バハマ・ビミニ諸島 Photo by JUN HASEGAWA
海から船に上がると、デッキにはクルーとゲストたちの歓喜の渦が!やっぱり諦めないって大事ですね(笑)
遅い午後の光とイルカたち

夕暮れの海にエントリーするゲスト(2026年7月20日)バハマ・ビミニ諸島 Photo by JUN HASEGAWA
1日目(7月19日)は基本移動日のため、2日目(7月20日)から、いよいよ本格的なドルフィンスイムの日々に突入です。ドルフィンドリーム号は、皆がほぼ朝食を済ませた朝9時頃、夜間停泊地のビミニ島を離れてイルカ探しに出発します。しかし、探しても探してもイルカは現れず。
ランチタイムと昼休み(13時30分から16時30分)は一旦ビミニ島に戻り、その後ふたたびイルカ探しに出かけます。出発して約1時間後、クルーの「Dolphins!!」という叫び声。昨日と同じくタイセイヨウマダライルカです!クルーの「Guys、Go!Go!」という掛け声に促されて、ゲストたちは次々に陽が大きく傾いた海へ飛び込んでいきます。

4頭のイルカと泳ぐYuki①(2026年7月20日)バハマ・ビミニ諸島 Photo by JUN HASEGAWA

4頭のイルカと泳ぐYuki②(2026年7月20日)バハマ・ビミニ諸島 Photo by JUN HASEGAWA
海にエントリーすると、小さな子どものイルカ2頭、少し大きくなった子どものイルカ1頭、全身にマダラ模様がある大人のイルカ1頭の計4頭がぼくらを出迎えてくれました。
この4頭はいずれも大の遊び好きで、スイマーたちの周囲を順番に巡って、顔を覗き込んだり、周囲をぐるぐる回ったり…人もイルカもメチャ楽しそう!

遅い午後の光の中で泳ぐイルカたち①(2026年7月20日)バハマ・ビミニ諸島 Photo by JUN HASEGAWA
昨日よりもエントリーした時間が早かったため、海の中も明るく、遅い午後特有の暖かくて柔らかい光の中、幸福感に満たされた時間がゆったりと流れます。光のカーテンの下で踊るように泳ぐイルカたちの姿は、可愛いくもあり、また神々しくもあります。

遅い午後の光の中で泳ぐイルカたち②(2026年7月20日)バハマ・ビミニ諸島 Photo by JUN HASEGAWA
2頭のチビッ子イルカのうちの1頭が近づいてきて、しばらく一緒に泳いでくれました。至福のひと時‥‥4頭イルカたちは、約1時間たっぷり遊んでから、夕暮れの大海原へと去って行きました。これでも遊ぶ時間は標準的なもので、長い時には2時間以上続けて遊んでくれることもあります。やっぱりバハマのイルカのフレンドリーさは破格です!
まとめ
さて、イルカ好きの多くの方は「バハマのイルカの写真」と聞くと、抜けるような青空と燦々と降り注ぐ太陽の光の下、ベタ凪かつ透視度抜群の海でイルカが泳ぐ光景を想起するのではないかと思います。ですが、そのような撮影条件に当たるのは、正直なところ1週間のクルーズで1日あるかどうか、というところです。
今回のクルーズでは全体を通してやや風が強くて波があり、そのためか透視度もベストとは言い難い状況でした。でも実は、イルカ写真の撮影条件としては、自分的にはとても良かったのです。

遅い午後の光の中でイルカと泳ぐYuki(2026年7月20日)バハマ・ビミニ諸島 Photo by JUN HASEGAWA
自分がバハマで撮影したこれまでの写真作品を見返してみると、どちらかと言うと透明度が良くない日の夕方に、気に入った作品が多く撮れています。強すぎない穏やかな光が適度な濁りで拡散されて、優しい空間が形成され、この空間を舞台に繰り広げられるイルカと人の交流に、被写体として大きな魅力を感じるのです。
いやホント、イルカの写真は奥が深いです!
次回の「バハマでイルカと泳ぐ 後編」は、野性味あふれる夜のイルカたちと泳ぐ「ナイトドルフィン」のレポートを中心にお届けする予定です。乞うご期待!
ダイビングガイド・自然保護活動家
長谷川 潤(HASEGAWA, Jun)
素潜り・ドルフィンスイムがメインのダイビングショップdive station baseのツアーガイド。海の美しさ・楽しさ、そして環境問題を、映像・写真・文章のすべてを駆使して発信することがライフワーク。1992年に小笠原でスキューバダイビングとスキンダイビングを初体験して以来、海の魅力にどっぷりはまる。1997年からは御蔵島のドルフィンスイムに通い始め、イルカの魅力に取り憑かれる。2022年末に長年勤めていた科学館を退職し、ダイビングガイドの道に入る。また2016年に、ドルフィンスイムガイドの草地ゆきと共に「御蔵島のオオミズナギドリを守りたい有志の会」を立ち上げ、鳥を捕食する御蔵島の野生化ネコを捕獲・譲渡する活動を行っている。
第34回「マリンダイビングフェア2026」では、雑誌『マリンダイビング2026』保存版の表紙写真を担当し、野生のイルカの写真展やトークイベントを開催した。
長谷川さんがガイドを務めるdive station base のバハマドルフィンスイムクルーズはこちら(来年の予定が決まり次第掲載いたします)











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