新連載 ドルフィンガイド潤さんのイルカ見聞録
第3回 「利島のイルカって、どうなの?」後編

人気連載「野生のイルカと泳ごう!」の筆者でダイビングガイドの長谷川潤さんによるシリーズ第2弾。長谷川さんが海の中で見聞きしてきた野生イルカの行動やイルカにまつわるストーリーを、美しい写真と動画でつれづれなるままに綴っていきます。これを読めば、野生のイルカが身近に感じられ、大好きになること間違いなし! 前回に続いて、約20頭のミナミハンドウイルカが定住している伊豆諸島、利島(としま)のドルフィンスイムの後編を紹介します。まだ前編をご覧になっていない方は、ぜひこちらもお読みください!
※2026年6月の情報です
はじめに

真正面から向かってくるイルカ (2022年11月19日 利島) Photo by JUN HASEGAWA
こんにちは!素潜りツアーガイドの長谷川です。今回は、伊豆諸島は利島のイルカとドルフィンスイムについて、2回に分けて紹介しています。利島のドルフィンスイムの特徴は「ハイリスク・ハイリターン」。他の島との距離が近い利島のイルカは他所にお出かけしてしまうことがあり、「せっかく島に着けたのに…イルカがいない!!(涙)」なんてこともあります。その反面、ひとたびイルカと出会うことができれば、ハイテンションなイルカたちが群れ全体でスイマーたちを大歓迎!!なんていう幸せ体験を味わうこともあるのです。
この後編では、イルカがいなかった場合の「プランB」であるボートでのスキンダイビングの魅力、そして、個人的にベストシーズンだと感じている「11月の利島イルカ」の感動体験について、写真と動画をふんだんに使って解説いたします。
あれ?イルカがいない!?そんな時の楽しみ方

いきなり不吉なことを書いてしまい恐縮ですが(苦笑)、前回からたびたび書いて来た通り、利島にはイルカが不在の場合があります。その理由ははっきり分かってはいませんが、利島は新島・式根島・神津島などの島々との距離が近いため、おそらく餌を求めてこれらの島にお出かけしているのではないかと考えられています(利島でイルカが不在の期間は、実際にこれらの島々でイルカが頻繁に目撃されています)。よく考えてみれば、御蔵島のようにその島から離れずにずっと暮らしていることの方が珍しいわけで、イルカたちからしたらごく自然な行動と言えるかもしれません。利島にイルカが不在の場合、お隣の無人島・鵜渡根島(うどねじま)まではイルカを探しに行きますが、そこにもいなかった場合は、ドルフィンスイムはあきらめてボートでのスキンダイビングに切り替えることになります。でも、このスキンダイビングがメチャ楽しいのです!

アオウミガメの間近で泳ぐ(2021年9月11日 利島) Photo by JUN HASEGAWA
利島の海で泳ぐと、とにかくウミガメによく出会います。そのほとんどはアオウミガメです(稀にタイマイに会うこともあります)。多くはまだ体が小さい子どもと思われるカメですが、上の写真のように大きな大人のカメに出会うことも。この時は、近づいても逃げずに一緒に泳いでくれました!

ハンマーヘッドシャーク(アカシュモクザメ)(2025年7月19日 利島) Photo by JUN HASEGAWA
そして今、利島のスキンダイビングで熱いのがハンマーヘッドシャーク(アカシュモクザメ)。利島のスキューバダイビングは、昔からハンマーヘッドが売りでしたが、実はスキンダイビングでも見ることができてしまうのです。しかも出現ポイントは港のすぐそば!
上の写真は水深約5mで撮影しました。この時は2匹のハンマーヘッドに会うことができましたが、運が良ければ数十~百匹以上の群れが現れることもあるそうです。
ちなみにぼくがガイドをする時は、ツアーのラスト15分くらいを「ハンマー待ち」に当てることが多いです(イルカの不在時限定になります)。

鵜渡根島 (2021年7月24日) Photo by JUN HASEGAWA
本章の冒頭でチラっと触れましたが、利島からボートで20分ほど南に向かうと、鵜渡根島(うどねじま)という無人島に着きます。ここが利島からイルカを探しに行ける「南限」で、イルカはこの島の周囲にいることもあります。小さな島ですが、切り立った岩山が連なる風景は迫力があり、秘境ムードを楽しむことができます。

イサキの群れ(2025年7月20日 鵜渡根島) Photo by JUN HASEGAWA
潮通しの良い鵜渡根島は利島よりも透視度が良いことが多く、魚影も濃厚。潮が当たる南側の岩礁域にはイサキやタカベが群れをなして泳いでいて、見応えがあります。

ツノダシの群れ(2025年7月20日 鵜渡根島) Photo by JUN HASEGAWA
カラフルなツノダシの群れ。その背後にはオトメベラやヤマブキベラといった南方系の魚も見え、ここは沖縄か!?と錯覚してしまうほどトロピカルな雰囲気が漂っていました。

「ハンマー待ち」の間にバブルリングに挑戦!(2025年7月19日 利島) Photo by JUN HASEGAWA
本章の写真のラストは「バブルリング」。前出のハンマーヘッドシャークの出現を待っている時に、ツアーのゲストさんが見事なリングを連発していました!!きれいな海では何をやっても楽しいんですよね(笑)。
本章のラストは、紹介したシーンがすべて含まれている動画をご覧ください。
動画:利島の海を楽しむ
個人的に超おすすめ!11月の利島イルカ
さて、この辺でイルカの話に戻りたいと思います。利島のドルフィンスイムシーズン終了日は、御蔵島より半月遅い11月30日。さすがに11月下旬になると海は荒れ気味で、船上の風は肌を刺すような寒さになることも。しかし、そんな厳しめの自然条件であっても、ぼくはこの時期の利島イルカが大好きです。いつもに増してたくさん遊んでくれるし、心なしか在島率が普段よりも高い気がするからです。
そんなわけでこの章では、ぼくが個人的に利島のベストシーズンと感じている11月のドルフィンスイムの魅力をお伝えしたいと思います。
とある日の「神スイム」体験

「遊ぼうよ!」と近づいてくるイルカ(2021年11月28日 利島) Photo by JUN HASEGAWA
2021年のイルカシーズン最終盤の11月28日。この日のドルフィンスイムは、とても思い出深いものになりました。北西の風がやや強く、波もあってややハードなコンディションでしたが、ベテラン揃いのゲストは余裕の表情です。ボートが出港してすぐにイルカの群れに遭遇し海にエントリー。柔らかな初冬の陽光に照らされて、イルカたちが近づいてきます。

一緒に泳ぎながらこっちを見るイルカ(2021年11月28日 利島) Photo by JUN HASEGAWA
イルカは人間に寄り添って泳ぐ時、完全に並ぶのではなく、ほとんどの場合は少し前に出て泳ぎます。この少し前のポジションから「流し目」でスイマーを見る時の少し笑ったような顔つきが、たまらなく可愛いのです!

交代で遊びにくるイルカたち(2021年11月28日 利島) Photo by JUN HASEGAWA
イルカたちは、かわるがわる次から次へと遊びに来てくれます。群れ全体に「遊ぶぞ~!!」という意思がみなぎっている感じがします。

初冬の穏やかな陽光の下で泳ぐイルカ(2021年11月28日 利島) Photo by JUN HASEGAWA
少し荒れ気味の海面から差し込む初冬の陽光は、夏ほどギラギラしておらず、イルカも人もやさしく包み込んでくれました。11月のドルフィンスイムは、撮影条件的にもとても好みなのです。
群れ全体がエンドレスで遊び続ける利島ドルフィンスイムの「神回」「神スイム」の感動体験をぜひ皆さんと共有いたしたく、ラストは動画をご覧ください!
動画:MD 利島のイルカたち③ 11月のイルカはすごい!!
こんなおもしろ行動も!「茶柱」そして仲間の背中に甘噛み!!

茶柱イルカの撮影(2022年11月19日 利島) Photo by JUN HASEGAWA
イルカが直立姿勢で泡を吐きながらゆっくり沈んでいく「茶柱」と呼ばれる不思議な行動。御蔵島のイルカが人間と遊んでいる時によく見られるのですが、御蔵島の「分家」とも言える利島のイルカでも見られました。この行動については、野生のイルカと泳ごう!第4回「イルカと仲良くなるために① イルカの行動を知る」で解説していますので、よろしければリンクの記事をご覧ください。

茶柱イルカ(2022年11月19日 利島) Photo by JUN HASEGAWA

茶柱の後で遊びまくるイルカ(2022年11月19日 利島) Photo by JUN HASEGAWA
茶柱の終了後は、ぼくらと激しく遊んでくれました!「茶柱→爆遊び」のパターンは御蔵島系イルカの定番で、人間と遊びたくて、人間の興味を惹くためにやっているのかな?という気がしています。

甘噛みするイルカ(2021年11月28日 利島) Photo by JUN HASEGAWA
本章のラストは、仲間の背中を甘噛みするイルカ。前章と同じ2021年11月28日のスイムで撮影したものです。噛んではいるものの、攻撃している感じはまったくなく、仲のいい友だちとじゃれあっている、といった和やかな雰囲気でした。この甘噛み行動についても、野生のイルカと泳ごう!第4回「イルカと仲良くなるために① イルカの行動を知る」で解説していますので、よろしければリンクの記事をご覧ください。
そしてこの章も〆は動画です。茶柱はやっぱり動画で見るのが面白い!
動画:MD 利島のイルカたち④ 茶柱からの爆遊び・仲間の背中に甘噛み
まとめ

一緒に人間と遊ぶ子イルカたち 2021年11月28日 利島 Photo by JUN HASEGAWA
2回にわたって利島のドルフィンスイムの魅力を紹介してきましたが、いかがでしたか?
イルカが不在なこともあるため、利島を敬遠する方も当然いらっしゃると思いますが、ぼく個人としては、イルカがいない時にしか味わえない利島の海の魅力を味わえる絶好の機会として「イルカ不在」も前向きに捉えているのです。そして11月は「欠航の確率が上がる」「荒れ気味の海で泳ぐことが多くなる」というリスクが加わりますが、その代わり、島に着けてイルカと泳げさえすれば「大当たり」の可能性が高いのです。シーズン終盤になるとドルフィンスイマーの数も減るで、イルカも遊び足りなくて人恋しくなるのかもしれません。でもそんなふうに人間のことを想ってくれているとしたら、ちょっと嬉しいですよね。
気まぐれな自然が相手のアクティビティの中でも不確定要素が高い利島のドルフィンスイムですが、おおらかな気持ちで臨めば、100パーセント楽しめると思いますので、ぜひ一度チャレンジしてみてください!
ダイビングガイド・自然保護活動家
長谷川 潤(HASEGAWA, Jun)
素潜り・ドルフィンスイムがメインのダイビングショップdive station baseのツアーガイド。海の美しさ・楽しさ、そして環境問題を、映像・写真・文章のすべてを駆使して発信することがライフワーク。1992年に小笠原でスキューバダイビングとスキンダイビングを初体験して以来、海の魅力にどっぷりはまる。1997年からは御蔵島のドルフィンスイムに通い始め、イルカの魅力に取り憑かれる。2022年末に長年勤めていた科学館を退職し、ダイビングガイドの道に入る。また2016年に、ドルフィンスイムガイドの草地ゆきと共に「御蔵島のオオミズナギドリを守りたい有志の会」を立ち上げ、鳥を捕食する御蔵島の野生化ネコを捕獲・譲渡する活動を行っている。
第34回「マリンダイビングフェア2026」では、雑誌『マリンダイビング2026』保存版の表紙写真を担当し、野生のイルカの写真展やトークイベントを開催した。
※dive station baseでは利島ドルフィンスイムツアーを開催しています。ツアーのスケジュールはこちらからご覧ください。










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