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テツ先生の新・海のいきもの
連載第11回 コロコロ変わるコロダイ

新・海のいきもの

海の生物といきもの観察の楽しさを、ダイビングインストラクターで東海大学海洋生物学科准教授の鉄先生が教えてくれる連載。第11回目は夏から観察が楽しくなるコロダイ(英名Painted sweetlips)。成長過程で姿がコロコロ変わっておもしろい!

※2026年7月の情報です

英語での表現が多いサカナ

コロダイの幼魚 英名:Painted sweetlips 撮影地:三保真崎 水深:6m 体長2cm Photo by Tetsu Takashi

コロダイの幼魚 英名:Painted sweetlips 撮影地:三保真崎 水深:6m 体長2cm
Photo by Tetsu Takashi

今回は、幼魚から若齢個体、若魚、成魚へと色彩や模様が変化するコロダイをとりあげます。英語表記を調べてみると、上のキャプションにある表現がどうやら一般的らしく、他にもsweetlipsが名称に組み込まれる魚種がいますが、おしなべて唇が厚い傾向のコロダイ属に付与されているようです。
英語表記には、
Painted thick-lipped grunt
Slate sweetlips
Thicklip bream
Yellowdot sweetlips
Sailfin rubberlip
などなど、イサキ科を示す名称、唇が厚いタイと表現、成魚期の黄色い斑点を表す名称、背ビレが伸長している中間の様子を示す名称まであり、成長によって姿形や色彩、デザインが変化するので、以前紹介したキンギョハナダイとはまた違った意味で、英語による表現が多い魚です。

それでは、これから徐々に幼魚が出現してくる季節に向かっているコロダイの生息環境や生態などの解説に入っていきたいと思います。

成長過程で姿や生息域もコロコロ変化

少し成長したコロダイの幼魚 撮影地:三保真崎 水深:6m 体長:4cm Photo by Tetsu Takashi

少し成長したコロダイの幼魚 撮影地:三保真崎 水深:6m 体長:4cm
Photo by Tetsu Takashi

幼魚期の特徴としては、幅に対して体長が細長く、常にクネクネと動いています。動きは成長に伴って徐々に遅くなります。観察初期の2cmほどの大きさの時は、砂利のくぼみや石の隙間を好んで生息しています。黄色と黒の縦のラインがハッキリしてくる幼魚期は体のサイズと同じような大きさの石が堆積している場所を好みます。このサイズまでは、比較的水深が浅いので、潜降直後の落ち着きたい時や逆に浮上直前の安全停止中に探すことができます。

幼魚期を脱したクネクネしなくなるサイズ 撮影地:三保真崎 水深:20m 体長:8cm Photo by Tetsu Takashi

幼魚期を脱したクネクネしなくなるサイズ 撮影地:三保真崎 水深:20m 体長:8cm
Photo by Tetsu Takashi

仮に初期の形態をステージ1として、ステージ2、3においては背ビレの伸長があり、英名のSailfinは、このステージを示しているではないか?と想像できます。

黒いラインが薄くなり背ビレの伸長も止まる 撮影地:三保真崎 水深:20m 体長:15cm Photo by Tetsu Takashi

黒いラインが薄くなり背ビレの伸長も止まる 撮影地:三保真崎 水深:20m 体長:15cm
Photo by Tetsu Takashi

ステージ3後期のサイズまでは、基本的に単体で行動をしています。クネクネ動く幼魚期は基本的に水深10mよりも浅い砂利や転石のある場所を好み、それ以降では一旦、底に降りてゆき、成魚に近い形態になると再び見られる水深が10m前後になり、群れで現れます。観察をしていると、底に降りてきた単体が徐々に集まり、25cmほどの大きさになると10匹ほどの群れを形成して水深6〜10m付近でワチャワチャし出すようになります。

何故かこのサイズになると群れるコロダイ 撮影地:三保真崎 水深:6m 体長:30cm Photo by Tetsu Takashi

何故かこのサイズになると群れるコロダイ 撮影地:三保真崎 水深:6m 体長:30cm
Photo by Tetsu Takashi

自分が出現した水深(場所)を確かめる(懐かしむ)かのように、集まっている姿を観察していると不思議に感じます。まるでその様子は若者が街に集まって戯れているようにも見えます(笑)。一般的な生息水深の変化は、餌生物が変わることで、より食性に適した水深を選択しているのではないかと考えることができるのですが、どぉもコヤツらのハシャギっぷりを観察していると、食性よりも繁殖行動のほうに関連性があるように感じます。控えめに見ても、“意気揚々とナンパに向かう輩”な感じが否めないのです。

成魚になったコロダイ 撮影地:三保真崎 体長50㎝ 水深10m Photo by Tetsu Takashi

成魚になったコロダイ 撮影地:三保真崎 体長50㎝ 水深10m
Photo by Tetsu Takashi

今夏、成長記録に挑戦してみては?

三保真崎におけるコロダイの成長段階別の個体と水深は、色彩や模様・形状の変化と相まって複雑です。成魚になると再び単体の行動になりますが、繁殖期を迎えるとペアないし、ペアをストーキングするオスが加わった3匹の「やきもち」と言われる行動でいることもあります。

グラフ

成長や大きさによって生息する水深の変化が起きることは、他の生物にもあることですが、コロダイにおいては中間的な大きさの時にだけ群れ行動をすることが、なんだか人間の若者男子っぽくて、「またキミたち集まってんのぉ」と見るたびに思います。

そんな感じで、コロダイの成長を見守ると、今まで以上に親近感が湧いて変化の記録を追いたくなるのではないでしょうか。
この夏は、コロダイの成長記録にチャレンジしてみませんか。

Profile

鉄 多加志
Tetsu Takashi

1965年(昭和40年)生まれ 静岡市出身
東海大学海洋学部 海洋生物学科准教授

鉄 多加志

ダイビング歴41年、潜水時間約1万3800時間。
国内70数カ所、海外20数カ所を含む約100カ所で潜っている。「ひとつの知識と経験が、同じ場所の同じ風景、生物をもっと魅力的にする」というモットーの下、同じ場所に潜って観察を続けるダイバーで、潜水歴の約8割は三保真崎。大学でも、「好奇心を持ち続けることで、同じ風景や生きものが同じように見えることはない」という観点で履修学生を指導している。

専門は潜水法で「浅海域での長時間潜水時におけるEANガス使用の研究」、「水中遺跡(沈船)潜水調査における安全対策の検討」「水中遺跡(沈没船)調査における安全な潜水方法の研究」(いずれも東海大学海洋研究所研究報告)をはじめ研究論文は多数。

主な著書(共著)に、オーシャンエクササイズ、駿河湾学、海洋考古学入門(いずれも東海大学出版)、THE DEEP SEA(静岡新聞社)、図版 世界の水中遺跡(グラフィック社)などがある。