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第11回 海のいきもの 「ヤドカリと、その仲間たち」

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海のいきもの ヤドカリと、その仲間たち

磯遊びでは子どもたちに大人気だけど、
でも、巻貝の空き殻に入り込んでその姿がよく見えないせいかイマイチ注目度が低い。
そんなヤドカリが今回のターゲット。ヤドカリってこんな生き物なんですよ。

巻貝に合わせて腹部がねじれてます

なかなか全身を見る機会がないヤドカリなので、イラストを描いてみた(右下)。稚拙ですいません。
●腹部/エビと違って柔らかく、右にねじれていることで貝殻に入りやすくなっている。
●はさみ脚/外からよく見えるので、模様や表面の状態などが種類を調べるとき大きなポイント。一般に、左手が大きいのはヤドカリ科、右手が大きいのはホンヤドカリ科。ヨコバサミの仲間などは左右ほぼ同じ大きさ。
●眼柄/先端に眼が付いている。外部からよく見えるので、はさみ脚と同様、色や模様は種類を調べるポイント。
●歩脚/「ヤドカリの脚は6本(または8本)」と誤解している人がいるが、実際はエビやカニと同じで10本(5対)ある。外から見ると「はさみ脚2本(1対)と歩脚4本(2対)」しか見えないだけのことで、実際はもう4本(2対)ある。これらは貝殻を支えるなどの役割を果たしている。
●腹肢/メスではよく発達しており、卵を産むと「左腰」に付けて孵化まで保護をする。

珍しいヤドカリのヌード

珍しいヤドカリのヌード。周囲に空き殻をたくさん置いておくと、興味津々で寄ってくる。はさみ脚でいろいろ物色し、気に入った空き殻があると素早く「引っ越し」をする

イラスト
サンゴ礁でよく見られるベニワモンヤドカリ

サンゴ礁でよく見られるベニワモンヤドカリ。頭胸甲が極端に平べったく、そのためかイモガイなど殻口の細長い貝殻によく入っている。一度引っ込むとなかなか出てこない

サンゴ礁でよく見られるアオボシヤドカリ。

これもサンゴ礁でよく見られるアオボシヤドカリ。脚に青い大きな斑紋があるのですぐわかるが、警戒心が強いのでうかつに触れないほうがいい。引っ込まれると面倒だ。

種類によって暮らし方はいろいろです

ビーチで普通に見られるオカヤドカリの仲間は、太陽の光を浴びて堂々と陸上で暮らしている。

多くのヤドカリは巻貝の空き殻を背負って海底で暮らしているが、中にはカイメンを背負ったり、ビーチ(陸)に進出したり、貝殻を背負わず定住するものもいる。ここでは、ダイバーが見るチャンスが多いユニークな生態のヤドカリを3種だけ紹介。

(左)ビーチで普通に見られるオカヤドカリの仲間は、堂々と陸上で暮らしている。といってもエラが乾燥すると呼吸できなくなるため、海岸や浜辺に生息。

塊状サンゴの表面に見られるカンザシヤドカリは、カンザシゴカイの仲間が開けた棲管に入り込んで暮らしている。

塊状サンゴの表面に見られるカンザシヤドカリは、カンザシゴカイの仲間が開けた棲管に入り込んで暮らしている。他のヤドカリのように自由に移動できないため、長く毛深い第2触角を振り回してプランクトンを捕まえて食べる。

「貝殻だけでは不安!」とばかりに貝殻にイソギンチャクをくっつける種類には、ナイトで出会うソメンヤドカリやサメハダヤドカリなどがいる。

「貝殻だけでは不安!」とばかりに貝殻にイソギンチャクをくっつける種類には、ナイトで出会うソメンヤドカリやサメハダヤドカリなどがいる。写真の個体はいくつもイソギンチャクを付けていて貝殻が見えないほどだ。

幼いときは真っ直ぐでした

幼いときは真っ直ぐでした

【卵のとき】ヤドカリもカニや多くのエビと同様、卵が孵化をするまでメスが保護している。腹部の左側にある腹肢で卵塊を抱えているので、普通は外から見えない。

【誕生!】孵化するときは、メスは貝殻から身を乗り出して「腰」をシャッフルするように動かす・・・・と、卵からゾエア(イラスト左)と呼ばれる幼生が次々に飛び出してくる。

【プランクトン時代】ゾエアの時期は、プランクトンとして海中を漂っている。浮遊生活をしながら、より小さなプランクトンを捕食し、脱皮を繰り返して成長する。まだ体は左右相称で、腹部も真っ直ぐだ。

【底生生活に突入】何度目かの脱皮で(種類によって異なる)、ゾエアはグローコテ(イラスト右)という小さなエビのような姿となる。この段階から浮遊生活から海底へと降りる(たまに泳ぐこともあるけれど)。腹部はまだ真っ直ぐなままなのだが、小さな貝殻があれば「チャンス!」とばかりに背負う。もう一度脱皮すると腹部はねじれ、ヤドカリの姿となる。

※この図はヤマトホンヤドカリの「子ども時代」。ゾエア幼生(4期)とグローコテ幼生をスケッチしたもの。

カニっぽいけどヤドカリの仲間です

ヤドカリの仲間には「異尾類」という別名もある。エビやカニと違って腹部が左右相称ではなく、ねじれていることが名前の由来。つまり、ヤドカリの仲間が必ずしも貝殻を背負っているとは限らず、ここで紹介するように一見カニのように見えるグループもある。
カニのように見えても異尾類なので、腹節が右にねじれていたり第4歩脚が矮小となって8本脚に見えるなどカニとは異なる特徴がある。例えば食用とされるタラバガニの脚は8本(実際は小さな脚がもう2本ある)、裏側を見ると腹節がねじれていることがわかる。

オルトマンワラエビ

オルトマンワラエビ
ヤギやウミトサカの上でよく見られ、甲の大きさは1cm程度と小さい。非常に細長い8本の脚が特徴で(第4歩脚もあるが短い棒状なので目立たない)、撮影時は脚のどこかがピンボケとなるため、結構イライラさせられる。

コマチコシオリエビ

コマチコシオリエビ
ウミシダと共生し、たいてい巻枝付近にいるため観察には指示棒などが必要(指では触れないこと)。個体によって色や模様にバリエーションがあり、宿主の色に似たストライプ模様となっていることが多い。甲の大きさは約1cm。

アナモリチュウコシオリエビ

アナモリチュウコシオリエビ
岩壁の小さな穴から顔とはさみ脚をのぞかせている姿がとてもかわいい。昔の人気ロボットキャラクターを連想させ、ダイバーの間では“ロボコン“と呼ばれることも。紀伊半島以南の西部太平洋に分布。大きさ1~2cm。

サクラコシオリエビ

サクラコシオリエビ
サンゴ礁や岩礁で見られる大型の壺状カイメンに共生している。きれいな和名が付けられたが、“ピンクスクワットロブスター”という愛称もある。体全体にブラシのような毛が生えていることも特徴。大きさ1cmほど。

アカホシカニダマシ

アカホシカニダマシ
ハタゴイソギンチャクなどと共生し、クマノミの仲間をウオッチングしているとき発見することも。赤い斑紋の大きさには個体差があり、「コホシカニダマシ」という和名で紹介されていることもある。大きさ1~2cm。

ヤシガニ

ヤシガニ
ココヤシやアダンの実を好み、陸の生活に最も適応したヤドカリの仲間だが、幼生の時期は海で暮らし、幼体は貝殻を背負うこともある。南の島では食用にされる(たまにシガテラ毒をもつので注意)。大きさ10~20cm。

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