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第10回 海のいきもの 最高のパーフォーマー、その名はイカ!

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海のいきもの 最高のパフォーマー、その名はイカ!

初夏は近場の海でアオリイカ、冬は沖縄でコブシメの繁殖行動が見られるわれらがニッポン、
ダイバーにとっては最高に素敵なイカ天国。
どんなイカがいて、どんなパフォーマンスが見られるかチラリと紹介いたします。

こんな体のつくりです

こんな体のつくりです

イカの体をヒトに置き換えてみると、「頭の上に胴体が乗っかって、足は頭から生えている」ことになる。ヒトから見ると実に奇妙な構造で、このためイカの仲間は「頭足類」と呼ばれている(タコも同じ仲間)。

●胴(内臓部分)/肝臓や消化器官、エラなどが収納されている部分。
●外套膜/内臓を包む筋肉部分。お刺身などに使われる部分でもある。
●頭部/両側に大きな眼を有する部分。意外と小さい。
●漏斗/頭部の腹側にある筒状の器官。水流を噴出して推進力や浮力を得る。前後左右に動かせる。
●腕・触腕/いわゆる「ゲソ」。イカには4対(8本)の腕と1対(2本)の触腕がある。背側から第1-2-3-4腕と数え、第3腕と第4腕の間に触腕という特別な腕がある。触腕は伸縮自在で、獲物を捕えるときに本領を発揮する。タコの腕がイカより1対(2本)少ない8本であるのは、この触腕を欠いているためだ。
●ひれ/「耳」「えんぺら」ともいう。舵またはオールとして働く。
●口/球状の筋肉の中に、顎板という黒褐色の硬いくちばし状のものがあり、これで獲物をガリガリ食べる。顎板はいわゆる「からすとんび」のこと。大型イカの口球は「いかくち」など酒のつまみに加工されている。

ハンティング用の腕があります!

ハンティング用の腕があります!

周囲に群れている小型甲殻類を狙っているところ。矢印で示したものが触腕で、小刻みに入れたり出したりしながら狙いを定めている。

一瞬のチャンスにシュッと触腕を伸ばし、先端の吸盤で獲物を引っかけるように捕えた決定的瞬間。吸盤にはリングがあり、獲物を引っかけやすくなっている。

獲物を捕え、どこか自慢げに見える若いアオリイカ

獲物を捕え、どこか自慢げに見える若いアオリイカ

イカの仲間は100%肉食で、産まれたばかりの稚イカでさえもエビやアミなど小さな甲殻類や魚の仔魚などを狩って食べている。獲物を捕えるときは、イカの10本の腕の中でも特別な触腕という2本(1対)を使う。
触腕は伸縮自在。イカを一杯(あるいはゲソ部分を)丸ごと買ってくると、1対だけ異様に長い腕があることがわかる。それが触腕。大切な狩りの道具であるため、ふだんは外には出さない。コウイカの仲間には、触腕を収納するためのポケットまであり、ふだんは8本足のように見える。

ちょっとノゾキ見

イカの仲間はオスがメスに精莢というカプセルを渡すため、交接を行なう。でも、そのスタイルは種類によっていろいろ。

アオリイカ

アオリイカやヤリイカの場合、オスが下からメスを抱きかかえるスタイルで、写真はアオリイカのオス(下)とメス(上)。ヤリイカはナイトでたまに観察され、抱きかかえた状態のときは水中ライトを照射しても離れないそうだ。

コウイカ

コウイカの仲間では、オスとメスが真正面から10本の腕を絡め合うようにドッキングする種類が多い。ハナイカ(写真)やコブシメでウオッチングしやすい。なんだか食い合っているようにも相撲のがっぷり四つにも見える。

種類によって卵いろいろ

イカは種類によって様々な形態の卵塊を産む。あまりに奇妙で、ときに「謎の物体」として話題になることも・・・・。

産卵中のヤリイカ

産卵中のヤリイカ
写真は真冬の城ヶ島、ナイトで撮影された。ヤリイカは岩棚など固いところに、白い卵嚢(中に卵が30~50個)をぶら下げるように産み付ける。ときに大集団で産卵し、場所がないと砂地に植え付けるように産むこともある。

ソデイカの卵塊(半壊)

ソデイカの卵塊(半壊)
大きさ1m×直径30cmにもなり、たまに撮影されると「謎の物体」として話題になる(写真の卵塊は半分欠けている)。ソデイカは胴長80cmにもなる大型種で、食材としてはモンゴウイカなどの代用品になることもある。

コブシメの卵

コブシメの卵
コウイカの仲間は1個ずつ卵を産み付ける。大型コウイカであるコブシメは胴長50cmにもなり、枝状サンゴの隙間に産み付けられた卵もピンポン玉ほどある。冬から春にかけて、沖縄や奄美諸島などで繁殖行動が見られる。

スナイソギンチャク(嘘です)

スナイソギンチャク(嘘です)
砂地に産み付けられた卵嚢。おそらくケンサキイカかジンドウイカのものと思われ、ケンサキイカの場合は1本の卵嚢に200~400個ほど入っているそうだ。ヤリイカ(左上)もたまに砂地に産み付けることがある。

人気のイカたち

ダイバーがよく見るイカの中でも、人気者&識別しやすい種類を紹介。10cm前後の小さなコウイカの仲間もよく水中写真に撮られているのだが、ザッと名前を挙げるだけでスジコウイカ、ボウズコウイカ、ヒメコウイカ、ミサキコウイカ、シシイカ、ヒョウモンコウイカなど多種がおり、しかも写真同定が難しいのでここでは省略させていただきます。

ヒメイカ

ヒメイカ
名前の通り胴長1~2cm、浅いアマモ場などで見られる世界最小クラスのイカ。胴の背中側に粘液物質を出す組織があり、アマモなどにくっついて生活している。写真では左側にこの個体が産んだと思われる卵も見える。

ミミイカの仲間

ミミイカの仲間
夜、砂地のスポットを潜るとしばしば遭遇する2~5cmほどのミミイカの仲間。大きなヒレがかわいらしく、まるでダンボのよう。ミミイカやダンゴイカ、ヒメダンゴイカなど複数種がいるが、写真同定はちょっと難しい。

ハナイカ

ハナイカ
胴長5cmほどの小型種だが、鮮やかな色彩、クルクルと変化する模様や体色、太い腕を使って海底を歩くように移動する様子などがかわいらしい。三宅島などでは初夏、毎年のように交接や産卵、卵などが観察されている。

コブシメ

コブシメ
インド-太平洋のサンゴ礁でよく見られる大型のコウイカ(日本では奄美諸島以南)で、胴長50cmほどにもなる。標準和名コブシメは、沖縄の方言「くぶしみ」が由来。雌雄で模様パターンが異なり、写真では手前がメス、奥にいるのがオスとなる。

アオリイカ

アオリイカ
初夏、各地で人工の産卵床が沈められるようになり、時期を合わせれば比較的容易に産卵行動を見られるようになった。写真は八丈島「八重根」で撮影されたもので、産卵中のメスやエスコートするオスなどが写っている。

ヤリイカ

ヤリイカ
名前の通りスマートな体形で、大きな三角のヒレをもつ。普段は沖合に生息するためダイバーの目には触れないが、繁殖期(冬~春)になると沿岸に寄ってくる。産卵行動は夜だが、たまに昼間こうして姿を見せることも。

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