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第12回 海のいきもの 似てない親子~マネっこ編

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海のいきもの 似てない親子~マネっこ編

晩夏から秋にかけて、近場の海は季節来遊魚たちで大にぎわい!
特に人気なのが、ミナミハコフグやツユベラなど南の海の魚の子どもたち。
でも、成長すると姿や模様がまったく変わってしまいます。どうして似てない親子が多いのか?
理由はいろいろありますが、今回は誰か(または何か)のマネをしている幼魚を紹介します。

葉っぱに化けてます

昆虫に葉っぱそっくりのガや、蘭の花そっくりのカマキリがいるように、海の中にも植物に似ている魚がいる。たとえば、幼魚のときだけ枯葉や葉っぱに似ている種類で有名な魚には下記などがいる。
●テンスの仲間の幼魚:砂地の海底近くをユラユラ~と漂い、危険を察知すると砂中に潜る。
●ブチススキベラの幼魚:海底近くを波に揺られてユラユラ~と漂っている。
●オニカマスの幼魚:汽水域の表層付近で、マングローブ(ヒルギ類)の「タネ」にそっくりな姿と姿勢をとる。
●ソウシハギの幼魚:内湾の吹きだまりなどのゴミや枯葉に紛れている。
●マツダイの幼魚:表層でユラユラと漂い、葉っぱや枯葉に寄り添っていることも。

幼魚

ナンヨウツバメウオ

銀色ボディの成魚は熱帯のサンゴ礁で群れているが、幼魚は季節来遊魚として伊豆半島などにもやってくる。港や内湾の吹きだまりなどにいることも多く、ホントに枯葉そっくり。
●写真左は斎藤光一さん撮影による「地球の海フォトコンテスト2012」自由部門 第3位受賞「擬態」。本体は右下、その上は水面に映った影、左上は本物の枯葉。
●写真下は成魚の群れ。成長につれ、模様や形がダイナミックに変わるのはツバメウオの仲間全般で見られる。

成魚
幼魚
成魚

オビテンスモドキ

幼魚は海藻の切れっ端が波に揺られているようにしか見えない。成魚になるとベラらしい大胆な性格となり、好奇心も強くダイバーが海底で何か作業でもしていると向こうから寄ってくるほど。

「不味い」ヤツに化けてます

モデルの一例

ダイバーに人気のウミウシや平べったいくせに妙に奇抜な模様が多いヒラムシは、どちらも有毒であったり食べても不味かったりするので、魚たちの獲物としてはまったく人気がなく、襲われることも少ない。そのためか、いろいろな幼魚がウミウシやヒラムシのふりをしている。

アカククリ(幼魚)のモデル?

暗褐色に赤い縁取りという模様のヒラムシは数種類いる。写真の左もそのひとつでクロスジニセツノヒラムシの仲間(学名Pseudobiceros gloriosus)。しばしば低層に泳ぎ出す生態とこの模様から、アカククリの幼魚の擬態モデルのひとつと言われている

幼魚
成魚

アカククリ

成魚は他のツバメウオの仲間同様に銀色だが、幼魚のときは和名そのままの独特の模様。岩や根の亀裂やテーブルサンゴの下などに隠れており、ユラユラした動きもヒラムシの遊泳を思わせる。

幼魚
成魚

ツユベラ

季節来遊魚として見る機会が多いツユベラの幼魚。奇抜な模様で、海底近くをユラユラ~、クネクネ~と独特の動きでと泳ぐ姿は、ヒラムシやウミウシを真似ていると言われている。

幼魚
成魚

イロブダイ

幼魚の模様と独特の動きはツユベラ同様にヒラムシなどの擬態と考えられている。季節来遊魚として、紀伊半島や三宅・八丈の海では毎年のように姿を見せてくれる。

「人気者」に化けてます

モデル 成魚

敵や捕食者が少ない理由には、ウミウシやヒラムシのように「毒がある」「食感が悪い」ことが挙げられる。つまり不人気なわけだが、その逆に人気者に化けることでメリットを得ている幼魚たちもいる。

ホンソメワケベラ

魚たちの人気者といえば、なんといってもこの魚。寄生虫やケガをした部分などを食べてくれるため、クリーナーと呼ばれ、この目立つストライプ模様(幼魚と成魚で微妙に変わる)と飛び跳ねるような独特の泳ぎ方をしているだけで、魚たちのほうから「掃除してくれ!」と集まってくるのだ(そんな場所をクリーニングステーションという)。

モデル 幼魚
マネ

キツネアマダイ(幼魚)

成魚になると色が薄くなってしまうのだが、幼魚のときはパッと見、ホンソメワケベラとよく似ている。クリーナーと似ていることで、捕食者の目をごまかせるのだろう。

マネ

ニセクロスジギンポ(幼魚)

幼魚のときも成魚のときもホンソメワケベラに酷似したこの魚、独特の泳ぎ方までそっくりだ。そうして魚たちを油断させて身を守る。ときにヒフなどを食いちぎることも。

「アブナイ」ヤツに化けてます

危険な生き物に擬態することで身を守っている海の生物は多種多様。例えば東南アジアに生息するミミックオクトパスは有毒のウミヘビやイソギンチャク、オニカサゴなどに化けるし、ノコギリハギは有毒のシマキンチャクフグそっくりだ。そして、幼魚のときだけ「アブナイ」ヤツのふりをする魚にはこんなヤツがいる。

マネ

コンビクトブレニー(幼魚)

模様が異なる親子が、サンゴ礁の海底に巣穴をつくって長期間一緒に暮らすという謎多きこの魚、幼魚のときはゴンズイそっくりだ。姿だけではなく、群れで行動するところも似ている。

モデル

ゴンズイの仲間(幼魚)

背ビレや胸ビレに強い毒棘を持つ海のナマズ、ゴンズイ。幼魚のうちは密集隊形の群れをつくることが知られている。なお、写真は日本近海の黄味が強いゴンズイとは違う種類と思われる。

「すばしこい」ヤツに化けてます

ニザダイ科の魚の中には、キンチャクダイ科の魚に化けるものがいる。「神経質で、岩陰から岩陰へすばしっこく逃げる」という、一部の小型キンチャクダイの性質が敵や魚食魚に攻撃や捕食をあきらめさせやすいためと考えられている。日本産の種類ではクログチニザの幼魚(模様に2タイプあり)がコガネヤッコ、ナメラヤッコに酷似していることが知られている。

マネ

ミミック・サージョンフィッシュ(幼魚)

インド洋から中・西部太平洋にかけて生息するニザダイ科の魚。成魚になるとまったく模様が変わる。えらぶたにトゲがないことでモデルと見分けられる。

モデル

エイブルズ・エンジェルフィッシュ

インド-西太平洋に生息するキンチャクダイ科の魚。えらぶたにある1本の棘は、キンチャクダイ科に共通した特徴。ここでニザダイ科と見分けられる。

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