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第6回 初夏の「卵」ウオッチング編

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海のいきもの 初夏の「卵」ウオッチング編

水温む季節は生き物たちの恋の季節。真冬に繁殖する種類ももちろんいるが(ダンゴウオやヤリイカなど)、やっぱり暖かいほうが体もラクだし、餌も多いし、子育てにも成長にも何かと都合がいい。というわけで、比較的ダイバーがウオッチングしやすい初夏の産卵生態を紹介します。
写真:卵(岩肌の赤いツブツブ)の世話をするハマクマノミ(オス)。撮影地/沖縄本島

何はともあれアオリイカ

春先から夏にかけて繁殖シーズンを迎えるアオリイカ。伊豆半島などでは産卵床を入れるダイビングエリアが多く、卵はもちろんのこと産卵シーンやオス同士のケンカといった繁殖生態も非常に高い確率で見ることができる。
また、日本で見られるアオリイカには3タイプある。外見ではまず区別できないが、産卵場所と卵嚢によって見分けられるところが面白い。

①通称「白いか」

伊豆半島など南日本で見られる、最も普通のタイプ。胴長30〜40cm。浅場で産卵し、自然界では海藻やサンゴ、ヤギなどに産卵する(1本の卵嚢内に5〜10卵)。

②通称「赤いか」

八丈島などで見られ、「白いか」より大型(胴長40〜50cm)。やや深場(水深20〜30m)で産卵することが多い(1本の卵嚢内に6〜13卵)。

③通称「くぁいか」

沖縄で見られ、3タイプの中で最も小さい(胴長15cmほど)。浅く穏やかなリーフ内で、死んだテーブルサンゴの裏側などに産み付ける(1本の卵嚢に2卵)。

人為的な産卵床に産み付けられたアオリイカの卵嚢(白いソーセージのようなもの)。撮影地//三宅島

人為的な産卵床に産み付けられたアオリイカの卵嚢(白いソーセージのようなもの)。撮影地//三宅島

ヤギに産み付けらればかりで、まだ真っ白な卵嚢。時間が経つと表面が汚れてくる。撮影地/西伊豆・田子

ヤギに産み付けらればかりで、まだ真っ白な卵嚢。時間が経つと表面が汚れてくる。撮影地/西伊豆・田子

産卵中のメス。1本ずつていねいに産み付けてゆく。産卵場所が深いこと、卵嚢が長いことなどから、「赤いか」と思われる。撮影地/八丈島

産卵中のメス。1本ずつていねいに産み付けてゆく。産卵場所が深いこと、卵嚢が長いことなどから、「赤いか」と思われる。八丈島では毎年、4月下旬から5月中旬くらいが産卵シーズン。一度に十数匹見られる こともあり、サイズも大きく迫力満点。 撮影地/八丈島

ハナイカも負けてない

初夏に産卵が見られるイカには、派手な体色&腕を使って海底を歩くユニークな仕草などで人気のハナイカも挙げられる(やや南方系のため紀伊半島以南、伊豆諸島でないと見られない)。この時期、浅い海底に数尾が集まっていたら要チェック! オス同士のケンカやペアの交接などが見られるかもしれない。

ハナイカを含むコウイカの仲間は、卵を1つずつ産み付ける。どこに産卵するかは種類によって異なり、ハナイカは海底近くの岩の下の天井などを産卵床とする

ハナイカを含むコウイカの仲間は、卵を1つずつ産み付ける。どこに産卵するかは種類によって異なり、ハナイカは海底近くの岩の下の天井などを産卵床とする

お互いに感情を表わにするかのようにクルクルと模様を変え、電飾のような波打つ色変化を披露する。このあとケンカしたり交接したりする。撮影地/2点とも三宅島

お互いに感情を表わにするかのようにクルクルと模様を変え、電飾のような波打つ色変化を披露する。このあとケンカしたり交接したりする。撮影地/2点とも三宅島

卵を守る魚たち

海の生き物の多くは、卵は生みっぱなしで運を天に任せるタイプが多い。比較的ダイバーに観察されやすいベラやニシキテグリの放卵・放精シーンを思い出すとわかるように、受精卵は潮に乗ってどこか遠くへ運ばれてしまう。
その一方、卵が孵化するまで保護する生き物もいる。エビ・カニ・ヤドカリはメスが腹部に抱えているし、飲まず食わずで卵を守り、ちょうど孵化するころに寿命を迎えるマダコなどは、「献身的な母親像」としてよく知られている。
が、魚にはオスが卵を保護する種類が多い。むしろ、子(卵)育てはオスの仕事という雰囲気だ。そこだけ見て「メスのくせに育児放棄かよ」「オスは健気だなぁ」という感想を抱く人もいるが、それは浅はかな考え。オスが子育て(というか卵の保護)をしている間、メスの体は次の産卵準備に入っていることが多いからだ。産卵数を増やすためには、この作業分担は自然な流れだろう。

卵(左の赤いツブツブ)の世話をするクマノミ。魚には珍しくペアで保護をするが、オスのおほうが世話好きらしい。撮影/沖永良部

卵(左の赤いツブツブ)の世話をするクマノミ。魚には珍しくペアで保護をするが、オスのほうが世話好きらしい。この時期、ダイバーも卵に近づく敵と見なされ噛みつかれることがある。けっこう痛い。 撮影/沖永良部島

テンジクダイの仲間は、オスが口内保育をすることで非常に有名。この時期、角張った口の個体がいたら、たいてい卵塊をくわえている。写真はオオスジイシモチ。撮影地/東伊豆・八幡野

テンジクダイの仲間は、オスが口内保育をすることで非常に有名。この時期、角張った口の個体がいたら、たいてい卵塊をくわえている。写真はオオスジイシモチ。撮影地/東伊豆・八幡野

「オスが出産する」と言われるタツノオトシゴの仲間。実際はオスの腹部にある育児嚢にメスが卵を産み付けている(そのため外部から卵は見えない)。撮影地/三宅島

「オスが出産する」と言われるタツノオトシゴの仲間。実際はオスの腹部にある育児嚢にメスが卵を産み付けている(そのため外部から卵は見えない)。撮影地/三宅島

タツノオトシゴの親戚であるヨウジウオの仲間も、オスが腹部に卵を付けて孵化するまで守る。卵が丸見えなのでウオッチングしやすい。写真はノコギリヨウジ。撮影地/三宅島

タツノオトシゴの親戚であるヨウジウオの仲間も、オスが腹部に卵を付けて孵化するまで守る。卵が丸見えなのでウオッチングしやすい。写真はノコギリヨウジ。撮影地/三宅島

何かと人気のサンゴの産卵

サンゴ礁を形成するイシサンゴの仲間は、ある夜にいっせいに産卵することが知られている。「夏の大潮の夜」とよく言われるが、種類によって大潮当日のこともあれば数日後であったりする。また、どの月の大潮であるかは積算水温と密接な関係があり、「例年6月のことが多いが、去年は水温が低かったせいか7月だった」ということもある。
沖縄などには、何年にもわたってサンゴの産卵記録をとっているダイビングサービスやガイドさんがいるので、「サンゴの産卵を見たい」という方は連絡してみよう。

塊状サンゴの産卵。ポリプ内に見えるピンク色に注目。①ポリプから「卵」が外に出てきた瞬間。「卵」といっても1個の受精卵というわけではなく、中に卵と精子が詰まったカプセル。バンドルと呼ばれるもので、海中に出ると中の卵と精子が出てきて受精する②まだポリプ内にあるバンドル。撮影地/沖縄・西表島

塊状サンゴの産卵。ポリプ内に見えるピンク色に注目。
①ポリプから「卵」が外に出てきた瞬間。「卵」といっても1個の受精卵というわけではなく、中に卵と精子が詰まったカプセル。バンドルと呼ばれるもので、海中に出ると中の卵と精子が出てきて受精する
②まだポリプ内にあるバンドル。撮影地/沖縄・西表島

枝状サンゴの産卵。ピンクのツブがバンドル。なお、一口にサンゴといっても種類はいろいろ繁殖スタイルも様々で、ポリプ内で幼生になるまで育ててから放出する種類もある。撮影地/西表島

枝状サンゴの産卵。ピンクのツブがバンドル。なお、一口にサンゴといっても種類はいろいろ繁殖スタイルも様々で、ポリプ内で幼生になるまで育ててから放出する種類もある。撮影地/西表島

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