海のいきもの
第39回 海の天狗とか矢柄とか
前々回で「ニシキフウライウオと、その仲間たち」、前回で「タツノオトシゴ&ヨウジウオ」。
というわけで、今回はダイビングで見かけるヨウジウオ亜目の他の仲間たちを紹介。
これまた飛び抜けてヘンな連中です。●構成・文/山本真紀(2018年1月制作)
天狗と、その落とし子?
ヨウジウオ亜目には前回・前々回で紹介したヨウジウオ上科(カミソリウオの仲間、ヨウジウオ&タツノオトシゴの仲間)の他に、今回紹介する3つのグループがある(ウミテング上科、ヘラヤガラ上科、ヘコアユ上科)。
というわけで、まずは名前も姿もユニークなウミテングの仲間たち。
ウミテング
よく目立つ長い吻(口)が天狗の鼻のように見えるところから名前が付いた。大きな胸ビレも、まるで天狗の翼のようだ。砂地の海底に生息し、細長い腹ビレを使って這いまわる。大きさ4~7cm。分布/南日本の太平洋岸、伊豆・小笠原諸島、琉球列島;インド-太平洋(クレ環礁~ハワイ諸島を除く)●撮影/伊豆大島
テングノオトシゴ
大きな胸ビレや腹ビレで歩く習性などウミテングとよく似ているが、やや吻が短く、体のデコボコもひかえめだ。写真の個体はオスで、吻の先端が膨らんでいる(メスは尖る)。体色は茶や白など個体変異がある(ウミテングも同様)。大きさ5~8cm。分布/南日本;インド-西太平洋 ●撮影/東伊豆・富戸
ポピュラーな矢柄さんたち
1本の棒のような姿から「矢柄」と呼ばれる魚たちは、ヘラヤガラ科とヤガラ科に大別される。
ヘラヤガラ科は世界に3種(それぞれインド-太平洋、西部大西洋と東部大西洋に分布)。
ヤガラ科は世界に4種、日本ではアカヤガラ(高級食材!)とアオヤガラが知られている。
ヘラヤガラ
日本をはじめインド-太平洋で見られるものは、すべて同じヘラヤガラという種類。体色は個体によっていろいろで、茶系統や黄色など様々。ときに横帯を出すこともある。筒状の口がやや平べったいところから「ヘラ」ヤガラとなった。この長い吻で、小さな甲殻類などを吸い込むようにして捕食する。大きさ30~70cm。分布/南日本、伊豆・小笠原諸島、琉球列島:インド-汎太平洋 ●撮影/紀伊半島・串本
環境に溶け込みます
写真のように倒立してヤギやサンゴ、岩陰に隠れる習性が知られている。こうして身を守ったり、獲物を待ち伏せする。なお、この個体は日本で見るヘラヤガラとは別種で、西部大西洋に分布。東部大西洋にはまた別の種類がいる。●撮影/カリブ海・ケイマン諸島
隠れてるつもり?
ヘラヤガラには他の魚に寄り添って泳ぐ習性がある。写真ではベラの仲間だが、大きめのハタやフグなどにくっついていることも。他の魚を隠れ蓑にして獲物に近づくそうだが、かえって目立つような気がしないでもないのだが・・・。●撮影/タヒチ
アオヤガラ
ヤガラ科4種のうち、日本人ダイバーが最もよく見かける種類。なお、アカヤガラは沖合い深場に生息しているためかあまり見かけない。面白いことにアカヤガラは刺身や唐揚げ、塩焼き、鍋など何でも美味な高級魚だが、アオヤガラは市場価値が低い。大きさ70~150cm。分布/北海道以南、南日本の太平洋岸、伊豆・小笠原諸島、琉球列島;インド-汎太平洋 ●撮影/紀伊半島・串本
逆立ちがデフォです
最後にヘコアユ上科。ここまで見ての通り、ヨウジウオ亜目の共通の特徴は、筒状に突き出した長い吻(口)。ヘコアユ上科の仲間も例外ではなく、また基本的に逆立ち(または頭を斜め下)という姿勢がユニーク。
ヘコアユ
浅いサンゴ礁に生息し、枝状サンゴやヤギなどの近くに群れる。逆立ちした状態がデフォルトで、そのまま器用に移動もするが、危険を感じると姿勢を水平に戻して泳ぐ。大きさ5~12cm。分布/南日本の太平洋岸、琉球列島;インド-太平洋 ●撮影/沖縄本島
サギフエ
沖合い深場に生息しているが、伊豆半島にはしばしば現れる。写真の個体は水深30mほどの深場だが、トップで紹介している個体は緑藻ミルが生える浅場で撮影。大きさ8~10cm。分布/北海道以南、南日本;インド-西太平洋、大西洋 ●撮影/東伊豆・八幡野
バックナンバー
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