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現地の海から2023.05.12

バットフィッシュに恋をして~ガラパゴス諸島探訪記~
第9回 ガラパゴスの生態系を陰で支える研究所

こんにちは、ガラパゴスバットフィッシュ愛好家のバットフィッシャーアキコです!ガラパゴス諸島には、そのユニークで貴重な生態系を守るために活動する機関や団体がいくつもあります。中でも代表的なのが、チャールズ・ダーウィン研究所です。私は大学卒業後この研究所でボランティアスタッフとして働いていました。

チャールズ・ダーウィン研究所

チャールズ・ダーウィン研究所

チャールズ・ダーウィン研究所はロンサム・ジョージ(1971年にガラパゴスのピンタ島で発見された、最後の生き残りとされるピンタゾウガメ)が晩年を過ごした地としても知られています。ここでは陸海すべてのガラパゴスの生態系の保全と再生の研究を行っています。観光にも人気のスポットで、生態系を学べる展示やゾウガメやリクイグアナの保護施設などを見ることができます。

今ははく製となって隣接するガラパゴス国立公園管理局で展示されているロンサム・ジョージ

今ははく製となって隣接するガラパゴス国立公園管理局で展示されているロンサム・ジョージ

私は猛烈なガラパゴスバットフィッシュ愛から研究所では海洋部門に所属するはずだったのですが、手違いがきっかけで、植物部門のチームの1つである「プロジェクト・ガラパゴス・ベルデ2050」に所属することになりました(バットフィッシュ観察研究は個人的に週末のダイビングで実施)。このチームのミッションは、ガラパゴスの固有・在来植物の個体数の復元を通して、2050年までにガラパゴスの人間入植前の生態系をよみがえらせることです。
具体的には、ガラパゴスの各島の固有・在来植物の種を採取して、栽培し、苗木になったら元の島へ植樹し、そして毎月苗木の成長をモニタリングする…というのが主な活動です。そのため週に2~3回はフィールドワークに出て、無人島に野営することもありました。

ガラパゴス・ベルデ2050の活動を紹介する展示

ガラパゴス・ベルデ2050の活動を紹介する展示

植物は成長するスピードはゆっくりですが、生態系全体への影響の波及はとても早いのです。植物がほとんど姿を消した場所に苗木を数十株植えると、その翌月のモニタリング以降様々な嬉しい変化が現れたものでした。まず「この島から姿を消していたあの虫や鳥が帰ってきた!」と気づき、その次のモニタリング時にはそれらの個体数が増えていて、そしてその後「巣作りを始めた!」とチームのみんなでガッツポーズ。植物がよみがえるにしたがって動物たちの姿もよみがえるのだとこれほど実感した経験はありませんでした。

網で囲われているひとつひとつがサボテンの苗木

網で囲われているひとつひとつがサボテンの苗木

豊かな生態系のみでなく、それを愛し保全する人々の尽力も素晴らしいガラパゴス。ガラパゴス諸島を訪れる際は、是非チャールズ・ダーウィン研究所にも足を運んでみてくださいね。

次回は、ガラパゴス諸島の食についてお話しいたします!

◎これまでの連載記事はこちら
≫第1回「プロローグ」
第2回「なぞカワイイ」
第3回「ガラパゴスの海はキビシイ?」
第4回「海の生物たち」
第5回「すごいぞガラパゴスアシカ」
第6回「ガラパゴスの二枚看板」
第7回「ガラパゴス諸島の誤解されがちポイント3選」
≫第8回「ガラパゴスの独自ルール」

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【ガラパゴスバットフィッシュとは?】

南米エクアドルのガラパゴス諸島に生息するアンコウの一種。体長1520㎝。魚なのに泳ぎが得意でなく、ヒレを前脚と後脚のようにして海底を歩く。口紅を塗ったかのような真っ赤な唇が特徴的。生態がほとんどわかっていない謎多き存在である。

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バットフィッシャーアキコ

ガラパゴスバットフィッシュ愛好家、NPO法人日本ガラパゴスの会スタッフ。高校3年の夏に本で見たガラパゴスバットフィッシュに一目惚れし、大学の進路を決める。大学在学中にガラパゴス諸島に渡航し、卒業後現地のチャールズ・ダーウィン研究所のボランティアスタッフとして活動。現在、日本人でおそらくもっとも多くのガラパゴスバットフィッシュを観察してきた者として、講演、寄稿、メディア出演等を行っている。2022年4月、初の著書『バットフィッシュ世界一のなぞカワくん』(さくら舎)を出版。

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