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連載
ドルフィンガイド潤さんのイルカ見聞録
第6回 バハマでイルカと泳ぐ 後編

ドルフィンガイド潤さんのイルカ見聞録

人気連載「野生のイルカと泳ごう!」の筆者でダイビングガイドの長谷川潤さんによるシリーズ第2弾。長谷川さんが海の中で見聞きしてきた野生イルカの行動やイルカにまつわるストーリーを、美しい写真と動画でつれづれなるままに綴っていきます。これを読めば、野生のイルカが身近に感じられ、大好きになること間違いなし!第6回は前回に引き続き、世界で最も人馴れしていると言われる野生のイルカたちが暮らすバハマ・ビミニ諸島でのドルフィンスイム最新レポート。夜のドルフィンスイム「ナイトドルフィン」など、バハマのクルーズならではの魅力をお届けいたします。

※2026年9月の情報です

はじめに

夕暮れの海で泳ぐ仲良しの子イルカたち(2026年7月20日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

夕暮れの海で泳ぐ仲良しの子イルカたち(2026年7月20日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

さて、前回の冒頭でも書かせていただきましたが、今回の旅は、来年目指している写真展開催と写真集出版のための作品製作が目的だったこともあり、第6回もフォトグラファー視点で書いた内容が多くなりますことをご了承ください。
前回の記事の中で、バハマのイルカを撮影する時間帯について、「夕方に気に入った作品が多く撮れている」という話をしました。クルーズではない通常のドルフィンスイムですと、イルカと泳ぐ時間帯は基本的に昼間となり、夕方に撮影できるのはまさにクルーズの特権!しかしクルーズの特権はまだ他にもあります。それが、夜にイルカと泳ぐことができる「ナイトドルフィン」なのです。

クルーズの醍醐味!ナイトドルフィン

夜に泳ぐイルカたち(2026年7月21日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

夜に泳ぐイルカたち(2026年7月21日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

ナイトドルフィンは、海況が安定している日の夜21時くらいから行われます。これまでの経験からすると、実施頻度は1週間のクルーズ(イルカと泳ぐのは実質5日間)で平均2回くらいでしょうか?昼間のうちにクルーから「今夜はナイトドルフィンやるよ!」と知らされることもありますが、開催されるかどうかギリギリまで分からないこともあり、開催されない日も、正式な不開催のインフォメーションがあるまでは大好きなビールはお預け、ということになります(笑)。
不開催の場合、クルーズ船は夜の停泊地であるビミニ島までまっしぐらに向かいますが、開催する場合は船を停めて、船の照明に誘引される小魚やイカやプランクトンを目当てにイルカたちが集まってくるのを待ちます。

動画:MD 夜のイルカたち バハマ・ビミニ諸島2026.7.21

クルーズ3日目の7月21日は、夕方の割と早い時間にナイトドルフィンを開催する旨のインフォメーションがありました。実はこの日の日中、フレンドリーなタイセイヨウマダライルカの群れと泳ぐことができたのですが、撮影機材にトラブルがあり、作品にできそうな写真の撮れ高はほぼゼロでした(涙)。そんなわけで、かなり気分が落ち込んでいたところにナイト開催の知らせが入り、ぼくのテンションはV字回復。いつもは満腹になるまでいただくビュッフェ形式のディナーも控えめにして、ふたたび水着に着替え、ミラーレス一眼カメラの水中ハウジングにライトを取り付けて、デッキでイルカの出現を待ちます。船の明かりに集まってきた海鳥たちをぼんやり眺めていると、不意に沖合に複数の背びれが出現!いよいよ夜のイルカのお出ましです!!
百聞は一見に如かず、ということで、まずは動画をご覧ください。

ドルフィンドリーム号のライトと夜のイルカたち(2026年7月21日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

ドルフィンドリーム号のライトと夜のイルカたち(2026年7月21日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

クルーの「入っていいよ」という合図があり、2台のライトを取り付けた水中ハウジングを持って静かにエントリーすると、すぐ目の前にイルカの姿が!ドルフィンドリーム号のライトに照らされた海中は意外と明るく、イルカたちは「ギ、ギ、ギー」「ジー、ジー」というクリックス(音で対象を「見る」ための鳴き声)を盛んに発しながら、船の周囲で餌となる小魚を追いかけていました。

「立ち泳ぎ」のような姿勢で小魚を狙うイルカ(2026年7月21日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

「立ち泳ぎ」のような姿勢で小魚を狙うイルカ(2026年7月21日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

目の前のイルカが突然「立ち泳ぎ」のような姿勢になり、ターゲットの小魚に狙いを定めました。ナイトドルフィンで出会うのは、昼間のフレンドリーな振る舞いとはまったく異なる、野性味あふれるハンターとしてのイルカたち。その俊敏な動きも、獰猛な表情も、日中に一緒に泳いだイルカたちとは全くの別物です。
日中のドルフィンスイムは、イルカたちとアイコンタクトやコミュニケーションを取りながら「一緒に泳ぐ」ことが主な目的になるのに対して、ナイトドルフィンでは、イルカたちの行動になるべく干渉せず、自然のままの姿を観察することがメインになります。そして、この時間帯しか見ることができないイルカたちの精悍な姿や表情が、ナイトドルフィン最大の魅力だと感じています。

魚を捕食するために泳ぎ回る夜のイルカたち(2026年7月21日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

魚を捕食するために泳ぎ回る夜のイルカたち(2026年7月21日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

そんなわけでナイトドルフィンでは、イルカを驚かせないように、ストロボは使用せず水中ライトの定常光で撮影しています(これで十分キレイに撮れます)。ちなみにドルフィンドリーム号のナイトドルフィンでは、イルカの撮影時にストロボを使ってはいけないという決まりは特にないようですが、思い返してみると、これまでストロボを使っている人は見たことがありません。もっとも夜のイルカたちは食事に夢中で、人間はほとんど眼中にないようなので、ストロボの光もあまり気にしないのかもしれませんが。

船上の風景

ドルフィンドリーム号の上部甲板から見る海と空(2026年7月19日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

ドルフィンドリーム号の上部甲板から見る海と空(2026年7月19日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

さて、次のイルカのトピックに行く前にちょっと一休み。ということで、クルーズ中の船上の風景を写真と動画でご紹介いたします。クルーズ中はもちろんずっと海の上にいますので、様々な海と空の表情を楽しむことができます。

双眼鏡でイルカを探すクルー(2026年7月20日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

双眼鏡でイルカを探すクルー(2026年7月20日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

日中、クルーは交代でデッキの最上階に上がり、双眼鏡でイルカを探します。バハマの海は基本的に穏やかで、遮るものもないため、イルカがかなり遠くにいても見つけることができます。

船に寄り添って飛ぶ海鳥(2026年7月19日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

船に寄り添って飛ぶ海鳥(2026年7月19日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

クルーズ中は、様々な種類の鳥も見ることができます。残念ながら鳥にはまったく詳しくないため名前は分からないのですが、クルーズ船に寄り添って飛ぶかっこいい海鳥(笑)に出会いました。そして写真は撮れなかったのですが、海を渡っていく3羽のフラミンゴを見ることができて感動!!

ドルフィンドリーム号から見る夕景(2026年7月21日 バハマ・ビミニ島沖) Photo by JUN HASEGAWA

ドルフィンドリーム号から見る夕景(2026年7月21日 バハマ・ビミニ島沖) Photo by JUN HASEGAWA

日中のスイムが終了すると、ドルフィンドリーム号はビミニ諸島で最も大きな島であるビミニ島が見える位置まで移動し、夜のナイトドルフィンに備えます。茜色に染まる雲を眺めながらいただくビュッフェ形式のディナーは最高!

動画:MD ドルフィンドリーム号の船上から バハマ・ドルフィンクルーズ (2026.7.19-7.23)

「帰ってきた!!」大団円のラストスイム

泳ぎ去っていくハンドウイルカ(2026年7月22日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

泳ぎ去っていくハンドウイルカ(2026年7月22日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

クルーズ4日目の7月22日は海が荒れ気味でなかなかイルカを見つけることができず、夕方にようやく見つけたボトルノーズ(ハンドウイルカ)も、気分が乗っていなかったようで、海の中でこちらをチラ見しながら素通りでした。でも写真は意外と良く撮れていたかも(笑)。
そしてナイトドルフィンにもチャレンジしましたが、今回はイルカ来たらず(涙)。これは、これまで参加したのべ6週間のクルーズで初めての経験です。以前から「ナイトではイルカが来ないこともあるよ」と聞いていたので、これまでの自分はかなりラッキーだったのだと今更ながら気付かされました。
夜間停泊地のビミニ島に向かって走る船のデッキで、船の明かりに群がって飛ぶカモメの群れを眺めながら、「こんな日もあるさ。でも明日はよい日になるといいな」と心の中で呟やき、大好きなIPAを飲み干すのでした。

フレンドリーなイルカたち(2026年7月23日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

フレンドリーなイルカたち(2026年7月23日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

そして迎えたクルーズ最終日の7月23日。この日は夕方の早い時間からフロリダ州のウエスト・パーム・ビーチに向けて帰途に就かなければならないため、イルカと泳ぐチャンスは朝からお昼過ぎまでの時間帯に限られます。しかし午前中は、探しても探してもイルカは現れず。実は今回のクルーズでイルカと泳いだのは、全て午後の時間帯でした。これまでの日々と同じく、イルカと会えないまま昼休みに入って、今回のスイムは終了かな‥‥と諦めムードが漂いはじめ、皆がランチを食べ始めたその時です。クルーから「ドルフィン!」という叫び声が!
ランチを中断して、急いでスイムの支度をして海にエントリーすると、複数の母子を含む6~7頭のタイセイヨウマダライルカがぼくらを出迎えてくれました!!

縦横無尽に泳ぎまわるイルカ(2026年7月23日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

縦横無尽に泳ぎまわるイルカ(2026年7月23日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

群れ全体がとてもフレンドリーで、イルカたちはゲストの周囲を代わるがわる巡って縦横無尽に泳ぎ回ったり、じーっと顔をのぞきこんできたり…最高にハッピーな時間!

踊るように泳ぐ母子イルカ(2026年7月23日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

踊るように泳ぐ母子イルカ(2026年7月23日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

2頭で踊るように泳ぐ母子イルカ。この日は今回のクルーズで最も透視度が良く、青く澄んだ水にタイセイヨウマダライルカの美しいフォルムが映えます。
結局、同じ群れに数回エントリーして合計2時間ほど遊ぶことができて、みな大満足!
‥‥しかし、それだけでは終わらず、更なる「ご褒美」が待っていたのです。

動画:MD ランチタイムに現れたイルカ_バハマ・ドルフィンクルーズ2026.7.23

ゲストが全員海から上がり、中断していたランチを再開するために船のエンジンを止めてアンカリングした途端、またもや「ドルフィン!」の叫び声が!なんと、先ほどの群れが戻って来てくれたのです。クルーが船の後尾からブイが付いたロープを流してくれて「入っていいよ!」の合図。もちろんランチは再び後回しです(笑)。

戻って来てくれたイルカたち(2026年7月23日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

戻って来てくれたイルカたち(2026年7月23日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

戻って来てくれたイルカたちは、先ほどと同じく最高にフレンドリー!さらに30分ほどたっぷり遊び、大充実の最終日となりました。

まとめ

スイムが終了し、ドルフィンドリーム号のお迎えを待つ(2026年7月21日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

スイムが終了し、ドルフィンドリーム号のお迎えを待つ(2026年7月21日 バハマ・ビミニ諸島) Photo by JUN HASEGAWA

今回は2回にわたってバハマのドルフィンスイムのレポートを書かせていただきましたが、クルーズの雰囲気は伝わりましたでしょうか?ドルフィンスイムは、予測不能で気まぐれな自然が相手のアクティビティ。当然人間の思い通りにはいかないわけですが、それだけに、イルカたちとの素晴らしい出会いがあった時の喜びは大きいのです。そして、その感動を伝える写真を撮るためには、刻々と変化する海況や天候をポジティブに捉えて生かし、イルカや人の動きと融和させることが必要になります。しかし、頭で分かっていても、それを実行に移して良い作品に仕上げるのは、本当に難しい!ということを痛感させられる毎日でした。

ドルフィンドリーム号のキャプテン・スコットと筆者(2026年7月24日 米国フロリダ州ウエスト・パーム・ビーチ)

ドルフィンドリーム号のキャプテン・スコットと筆者(2026年7月24日 米国フロリダ州ウエスト・パーム・ビーチ)

もちろん、撮影を抜きにしてもイルカたちと一緒に泳ぐのは無条件で楽しいし、イルカに待ち焦がれる時間も、(英語はほとんど話せませんが)仲間たちと語らう時間も、かけがえのない宝物。そんな素敵な体験をプロデュースしてれるドルフィンドリーム号のキャプテン・スコットやクルーたちには、いつも感謝しかありません!
もっともっと写真のスキルを磨いて、また来年の夏にバハマの海に帰ることができたらいいな、と思っています。

次回からはまた日本のイルカたちのレポートに戻りたいと思います。乞うご期待!

ダイビングガイド・自然保護活動家
長谷川 潤(HASEGAWA, Jun)


素潜り・ドルフィンスイムがメインのダイビングショップdive station baseのツアーガイド。海の美しさ・楽しさ、そして環境問題を、映像・写真・文章のすべてを駆使して発信することがライフワーク。1992年に小笠原でスキューバダイビングとスキンダイビングを初体験して以来、海の魅力にどっぷりはまる。1997年からは御蔵島のドルフィンスイムに通い始め、イルカの魅力に取り憑かれる。2022年末に長年勤めていた科学館を退職し、ダイビングガイドの道に入る。また2016年に、ドルフィンスイムガイドの草地ゆきと共に「御蔵島のオオミズナギドリを守りたい有志の会」を立ち上げ、鳥を捕食する御蔵島の野生化ネコを捕獲・譲渡する活動を行っている。
第34回「マリンダイビングフェア2026」では、雑誌『マリンダイビング2026』保存版の表紙写真を担当し、野生のイルカの写真展やトークイベントを開催した。
長谷川さんがガイドを務めるdive station base のバハマドルフィンスイムクルーズはこちら(来年の予定が決まり次第掲載いたします)

長谷川 潤