
フィッシュウォッチング500
アニメ映画『ファインディング・ニモ』(2003米国)のニモが「カクレクマノミではない」、
ということはよく知られるようになり、ダイバーやアクアリストの間ではもはや常識。
今さら15年も前のアニメキャラクターをネタにするのも何ですが、
少しだけ突っ込んでみました。●構成・文/山本真紀(2018年5月制作)
見た目は「カクレクマノミに比べると、黒い縁取りが多い」という感じ。決定的な違いは「背ビレの鰭条数がカクレは11~10本、クラウンアネモネフィッシュは10~9本」とのことだが、目視ではわからない。サイズと性格もカクレと似ている(大きさ5~8cmと小柄、イソギンチャクへの依存度は高くほとんど離れない)。
❶これくらい黒い部分が多いとわかりやすい。撮影/パプアニューギニア・ワリンディ
❷この程度だと「ちょっと黒っぽいカクレ?」ですんじゃいそう。撮影/パプアニューギニア
➌ここまでくると、もはやカクレなのかクラウンなのかわからない。撮影/パプアニューギニア
❹ニモの故郷で撮影された個体。やっぱり違いがわからない。撮影/グレートバリアリーフ
おなじみの人気者。大きさは5~9cmくらい、イソギンチャクへの依存度は高く、たいてい触手内にいて遠くへ離れることはない・・・って、クラウンアネモネフィッシュとほとんど同じ説明だったりする。見られるのは浅いサンゴ礁で、内湾にも結構いる。潮通しのいい場所や深場は苦手らしい(クラウンアネモネも同じ)。
❺典型的なカクレクマノミさん。撮影/沖縄・ケラマ諸島
❻黒い縁取りがほとんどない個体。なんかサッパリしすぎ。撮影/インドネシア・バリ
ごく稀にオレンジ部分が完全に黒いカクレクマノミがいる。この個体は20年ほど前に自然の海で撮影。ただし、アクアリウムの世界では黒白カクレのブリーディングに成功しており、学名をもじった「ブラックオセラリス」の名で商品化されている。クマノミの仲間は飼育・繁殖が容易なので、いろいろな模様の品種が作出されているようだ。撮影/沖縄・宮古島
というわけで、目視でこの2種を区別することはかなり困難ということがわかった。でも、大丈夫。簡単な識別方法がある。それは目撃(撮影)した海域。この2種のソックリさんは、分布がくっきり分断しているからだ(今のところ)。沖縄やフィリピンで見たならカクレクマノミ、グレートバリアリーフやパプアニューギニアならクラウンアネモネフィッシュということになる。なお、意外にもパラオにはどちらもいない。
日本は6種類ものクマノミが見られる世界でも珍しい海域。内訳はクマノミ、ハマクマノミ、カクレクマノミ、ハナビラクマノミ、セジロクマノミ、トウアカクマノミ。で、よく見られる前半の3種を見分ける言葉に、白線の本数に注目した「1ハマ、2クマ、3カクレ」がある。でも、これはあくまでも目安。
3本の白線が一見カクレ&クランっぽい。でも、2本めの白線に膨らみがないこと、ほほ(チーク)にトゲ(スパイン)があることで区別できる。東部インド洋からマレー諸島、パプアニューギニア、グレートバリアリーフなどで見られ、カクレ&クラウンと分布が重なっているのでご注意。撮影/インドネシア・メナド
成魚の白線は1本だが、幼魚には2~3本ある。カクレクマノミよりスパインチークのほうが似ているかも。ただ、これもほほのトゲの有無で区別は割と簡単。また、パプアニューギニアやグレートバリアリーフにはハマクマノミはいないので、やっぱり目撃(撮影)地点が重要。撮影/沖縄・八重山諸島
「3本の白線」しかカクレ&クラウンとの共通点はないけれど、一応まぁ「3カクレ」は通用しないという一例。マーシャル諸島の固有種。撮影/マジュロ
一般のトウアカに比べて黒く、白い鞍掛模様が腹部まで届くなどの違いはあるが、トウアカのカラーバリエーションとされている。撮影/インドネシア・レンベ
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