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現地の海から2023.09.12

バットフィッシュに恋をして・ガラパゴス諸島探訪記
第12回 ガラパゴスにおけるバットフィッシュ

こんにちは、ガラパゴスバットフィッシュ愛好家のバットフィッシャーアキコです! 連載最終回は、現地におけるガラパゴスバットフィッシュのポジションについてお話しいたします。

横から見るとまるでピノキオのよう

横から見るとまるでピノキオのよう

私が初めてガラパゴス諸島を訪れたのは10年前のことでした。「日本ではほとんど情報がないぶん、現地でたっぷりバットフィッシュの情報を手に入れるぞ」と、鼻息を荒くしていました。そして出会った人に自己紹介もそこそこに「おたくの海のバットフィッシュについて話を聞かせてください」と尋ねると、「なにそれ」と返されるではありませんか。スマホで画像を見せると、「こんな魚がガラパゴスにいるの!?」とたいそう驚くのです。

流されないようにふんばるガラパゴスバットフィッシュ

流されないようにふんばるガラパゴスバットフィッシュ

その人のみならず、島民の多くがその存在を知りませんでした。さらに驚いたのは、現地のダイビングショップで働く人の一部からも「知らない」という反応があったことです。なんとご当地ガラパゴス諸島においても、私の愛しの彼は無名のポジションだったのです。しかも現地の研究所ですら、取り扱いなし……。そんな現実を知り、私はバットフィッシャーとして活動することを決めたのでした。

矢印が泳いでいるかのような後ろ姿

矢印が泳いでいるかのような後ろ姿

私がなぜバットフィッシュの知名度を上げたいのかというと、広く認知されるとは「こと」を動かすからです。いまだその生態がほとんどわからないのは、裏を返せばこれまで関心を抱かれる機会が少なかったということ。多くの人が興味を抱けば、史上初めて大きな調査が行われるかもしれません。私は愛好家として観察と記録を続けてきましたが、個人でできることには限界があります。もし調査が行われるとなれば悲願ですし、是非立ち会いたいです。

今、ガラパゴスバットフィッシュは何匹生息しているのか、その数は増えているのか、減っているのかもわかりません。私たち人間が彼を知るのが早ければ早いほど、「変化」にもいち早く気づくことができます。極端な話、このままその知名度が低いままだったら、海中でバットフィッシュに何が起こっているのかもわからず、人知れず地球から絶滅してしまう可能性だってあるのです。

基本的に単独行動だが、この時は珍しく近距離に2匹。交流はしていなかった。

基本的に単独行動だが、この時は珍しく近距離に2匹。交流はしていなかった。

というわけでこの連載を読んでくださった皆さん、是非SNSや周りの人に「ガラパゴス諸島にこんなおもしろい魚がいるよ」と話してみてください。その会話のひとつひとつが、「こと」を動かす力になります。どうぞよろしくお願いします。最後までお読みいただきありがとうございました!

◎これまでの連載記事はこちら
≫第1回「プロローグ」
第2回「なぞカワイイ」
第3回「ガラパゴスの海はキビシイ?」
第4回「海の生物たち」
第5回「すごいぞガラパゴスアシカ」
第6回「ガラパゴスの二枚看板」
第7回「ガラパゴス諸島の誤解されがちポイント3選」
≫第8回「ガラパゴスの独自ルール」
≫第9回「ガラパゴスの生態系を陰で支える研究所」
≫第10回「どれが食べたい? ガラパゴス諸島グルメ」
≫第11回「島ステイでも叶う!ガラパゴスダイビング


【 ガラパゴスバットフィッシュとは? 】

南米エクアドルのガラパゴス諸島に生息するアンコウの一種。体長1520㎝。魚なのに泳ぎが得意でなく、ヒレを前脚と後脚のようにして海底を歩く。口紅を塗ったかのような真っ赤な唇が特徴的。生態がほとんどわかっていない謎多き存在である。


 

バットフィッシャーアキコ

ガラパゴスバットフィッシュ愛好家、NPO法人日本ガラパゴスの会スタッフ。高校3年の夏に本で見たガラパゴスバットフィッシュに一目惚れし、大学の進路を決める。大学在学中にガラパゴス諸島に渡航し、卒業後現地のチャールズ・ダーウィン研究所のボランティアスタッフとして活動。現在、日本人でおそらくもっとも多くのガラパゴスバットフィッシュを観察してきた者として、講演、寄稿、メディア出演等を行っている。2022年4月、初の著書『バットフィッシュ世界一のなぞカワくん』(さくら舎)を出版。

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