海のいきもの
第49回 サンゴ礁を脅かすものたち
サンゴと生きるPart3
今年(2018年)は国際サンゴ礁年!
というわけで、前回と前々回に引き続きサンゴの話。
今回は個々のサンゴではなく「サンゴ礁」を脅かすものについて。 ●構成・文/山本真紀(2018年11月制作)
最大の脅威は地球規模の例のアレ
ダイバーの脳内では世界の海の8割くらいを占めるイメージだが、「サンゴ礁」という地形(あるいは環境、生態系)は赤道を中心とする熱帯・亜熱帯にかけての浅い海にしか存在しない。意外と狭い(サンゴやサンゴ群落は紀伊半島や伊豆半島、三宅島など温帯にもある)。
それでもサンゴ礁は重要だ。他の生き物の隠れ家や居住スペースになるだけではなく、生命に必要な酸素を作り出し、栄養分を提供するという陸上における森の役割を担うからだ。そのサンゴ礁にとっての脅威って?
海水温の異常高温
サンゴ礁のサンゴ群落が真っ白になり、やがて崩れてガレキサンゴとなってしまう。それが白化現象。サンゴが共生藻を失い(あるいは共生藻の活性が低下し)、サンゴの白い骨格が透けて見えてしまうことから生じる現象で、白化状態が長く続くと、サンゴは栄養不足でやがて死に至る。
共生藻を失う理由はいろいろあるが、近年の大規模な白化現象は、海水温の異常高温が原因であることが多い。世界の海水温は全体に上昇傾向で、白化現象も地球温暖化が問題となり始めた1980年代から増加。
❶真っ白な枝状サンゴの上にいるのはホシゴンベ。美しい風景だが、これが撮影されたのは2016年夏。奄美群島から八重山諸島にかけて大規模な白化現象が起きたときのこと。撮影/沖縄・竹富島
❷白化したテーブル状サンゴを裏側から見たところ。撮影/沖縄・八重山諸島
大発生すると手に負えない例のアレ
オニヒトデ
世界各地のサンゴ礁でたびたび大発生しては悪者呼ばわりされるオニヒトデも白化現象の一因。沖縄県の大量発生公式記録は1957~1958年の宮古島という。その後1969年、1972年に沖縄本島で大量発生が生じて以来、大きな環境問題となって現在に至る。『マリンダイビング』もオニヒトデ駆除イベントなどを過去に開催してきた。何が彼らを大増殖させるのか、原因は容易には特定できない。撮影/フィリピン
「事故」や病気もあり?
このサンゴ、右半分の真っ白なところは、最近になって白化した部分。左半分はかなり昔に死んだと思われる(一部はすでに崩れてアナサンゴモドキの仲間が割り込んで生えている)。左半分だけ先に死んだのはなぜだろう? 土砂流入による日照不足や異常高温、塩分濃度の変化などなら全体が死にそうなものだが・・・。もしかして左半分だけ鉄板が落ちてきて、日照不足で死んだとか? あるいは病気? 撮影/モルディブ
われわれダイバーにできること
まずは海にゴミを廃棄しないこと。
次にきっちり中性浮力をとること。目当ての魚や生物に夢中になって、サンゴを蹴ったりタンクをぶち当てたりしないよう注意。
そして、サンゴとサンゴ礁について学ぶことも大切。例えばサンゴを食害するからと、その生物を安易に駆除していいだろうか? 大量発生時の小規模な駆除は間引きに過ぎず、もしかして逆効果では? そんな疑問を持つことも大切かも。さて、「国際サンゴ礁年」もそろそろ終了となるけれど、今後もダイバーとしてできることを、一人ひとりが考えていこう。
流れ藻に混じって、プラスチックのコップやビニール袋などのゴミがたくさん浮かぶ海面
撮影/インドネシア
バックナンバー
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