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基礎からわかる! ダイビングスタート&スキルアップ術
第33回 刺す危険生物

基礎からわかる! ダイビングスタート&スキルアップ術

初めてのダイビング、久しぶりのダイビングは「どうしたらいいの?」と戸惑いの連続。
今さら聞けない基本スキルから絶対にマスターしたい必須スキルまでここでおさらいしちゃいましょう!

第33回 刺す危険生物

ダイビング知識を深めようということで、前回の「噛む危険生物」に続き、今回は「刺す危険生物」について触れたい。
噛む生物と同様、刺したときに毒を注入するという攻撃的な生物がいる。
まあ、人間が手出しをしない限り、向こうから襲ってくることはないので、触らないに越したことはないのだが。

刺すばかりか毒のある生き物たち

キレイな花にはトゲがあるばかりか、毒もある

よくバラに例えられるが、きれいなものにはトゲ(棘)があるのは、ある意味、自然界の常識ともいえる。 上の写真のように美しいクラゲにも触手(しょくしゅ)と呼ばれる足のような部分に「刺胞」(しほう)と呼ばれる注射針のようなものがあり、それを外敵に刺して、毒液を注入する。 特に、沖縄の島々では夏にニュースにもなるが、「ハブクラゲ」が猛烈な刺胞毒を持つことで有名だ。 また、日本近海では夏のカツオノエボシが有名。

別名「電気クラゲ」とも呼ばれるアンドンクラゲ。
ハブクラゲほど毒はなく、刺されてもピリピリするぐらいだが……
日本近海で6~9月頃発生。浅瀬にいてEN&EXの時に特に注意

キレイといえばミノカサゴ系もご注意を!

わぁきれ~い!と手を出して触りそうになる、無知なダイバーも少なからずいるようだが、北海道南部以南の日本の沿岸から太平洋南西部、インド洋に生息するミノカサゴをはじめ、ハナミノカサゴ、ネッタイミノカサゴといったミノカサゴ系も背ビレ、腹ビレ、尾ビレに毒を持つことで有名。
美しい魚だからといって、触りたくなる気持ちもわかるけれど、そもそも魚や生き物のすべてに触るのは厳禁なのだ。

伊豆半島周辺などでもよく見られるミノカサゴ
美しいヒレに毒があるなんて!

同じカサゴ系もヒレに刺胞毒あり

唐揚げにするとおいしいカサゴ類だが、ミノカサゴと同様にヒレに棘があり、有毒。刺されると人によってはかなり重症に至ることも。
彼らは周囲の環境にうまく擬態していて一見、存在がわからないことも多い。
むやみに海底に手をつくと、そこに隠れていることもあるため、まず着底しないのが大きなポイント。
どうしても着底しなくてはならない状況の場合は、手や足、膝をつく場所に何もいないことをよ~く確認すること。

擬態上手なオニカサゴの仲間。
気づかずに触れてしまうと大変なことになるのでご注意を

さらに強力!? オニダルマオコゼ

さらに強烈な毒を持つといわれるのが、やっぱり擬態上手なオニダルマオコゼ。
日本では小笠原諸島、奄美大島、沖縄の島々周辺に、海外でも太平洋西部、インド洋の熱帯域のガレた砂地に生息。ほぼ海底に埋まっていて、じっと獲物がくるのを待っている。
背ビレの棘に強力な神経毒があり、触れるとその棘から毒を注入。
刺された瞬間、激痛が走り、痺れ、腫れといった症状が出る。人によっては呼吸困難、心肺停止に至ることも。
触らないのはもちろんのこと、着底時もいないかどうか十分にご注意を。
以前、ビーチからボートに乗るときに誰もが踏みつけそうな波打ち際にいたことがあった。
水深がほとんどない所からいることも考えて、水中を素足で歩くのは絶対に控えよう。

ちなみに、オコゼと名の付くものの、カサゴと同属。やはり背ビレに棘があり、オニダルマオコゼほどではないにせよ、毒もある。

砂地から姿を現し、移動中のオニダルマオコゼ。
見るからに怖い。でも、意外に表情やしぐさはかわいいんだけどね

潮に身を任せるようにしてひらひら葉っぱのような動きをするハダカハオコゼも背ビレに棘と毒があるといわれる

「オニ」といえば、こちらも強烈! オニヒトデ

オニダルマオコゼ、オニオコゼなど、「オニ」と名の付くものは毒が多いのか!?
オニといえば、サンゴのポリプを食し、大発生してはサンゴ礁を壊滅状態に陥れるオニヒトデを忘れてはならない。
こちら、全身を棘で覆っており、この棘からタンパク毒を発する。
刺されると激痛が走り、痺れ、腫れといった症状が。
重症時は呼吸困難、心肺停止にも陥り、死に至ることがあるほか、一度または複数回刺されたことのある人がアナフィラキシーショックで死亡した例も。

サンゴ礁保全のためにオニヒトデを駆除することもあるが、棘はビーチサンダルやグローブ程度は普通に貫通することもあるので、駆除は勝手にするのではなく、ダイビングガイドの指示に従うか、専門家にまかせよう。

サンゴのポリプに襲いかかるオニヒトデ。
ちなみに、ラパス周辺のコルテス海にも似たようなヒトデがいるが、あまり毒は強くない

ウニの棘にもご注意を!

トゲトゲのある生物で有名なガンガゼをはじめ、ウニの仲間も棘に毒があるので、刺されると痛み、痺れ、かゆみ、腫れといった症状が出る。
浅瀬にも生息していて、間違えて踏みつけしまう例も少なくないようだが、くれぐれもご注意を!

人気の大物、エイにも棘がある

ところで、オニダルマオコゼやウニなど底生生物は、身を守るために体に棘があり、毒を持つという傾向があるけれど、底生のエイ(アカエイやホシエイ、ツカエイ、ウシエイなど)にも棘がある。
この棘にも毒がある。
間違えて近づいたダイバーが、尾を一振りされた瞬間、棘に刺さってケガをするといった事故がごくまれに報告されるが、彼らもまた擬態上手なので、着底の際は周囲を十分確認してから足、手などを着くようにしよう。

AKDで有名な房総半島の伊戸でもアカエイがめちゃくちゃ多い。
尾ビレに触らないよう、十分にご注意を!

サンゴも痛い

刺胞性のある生物という意味では、サンゴの仲間もたいていが属すことになる。
特に、注意したいのはファイヤーコーラル。
触れると火傷したみたいに熱い(激しい)痛みが走ることから「ファイヤーコーラル」と呼ばれる。
沖縄では刺すサンゴということで「蜂サンゴ」とも呼ばれているとか。
実際はアナサンゴモドキの仲間のことで、ユビエダハマサンゴやショウガサンゴなどのイシサンゴ類にも似ている。
枝状あり、板状ありなど、形も多く見分けはつきにくいが、やや黄色っぽかったり茶色っぽいのが特徴か。

扇状の板がヤツデのようなのでヤツデアナサンゴモドキだと思うのだが、イシサンゴ類は花のようなポリプが表面に見えるがこちらはうぶ毛のよう。ここから刺胞毒が放たれる

こちらも刺胞毒を持つポリプがうぶ毛のような枝状のファイヤーコーラル

ほかにも気をつけたい刺胞毒生物は少なくない

ほかにも、シロガヤなどのガヤ類、ウンバチイソギンチャクをはじめとするイソギンチャク類など触るとチクリと、いや猛烈に痛い、刺胞毒を持つ生物は実はあちこちにいる。
ダイバーのスキルとして身に着けておきたい最良の方法は
触らないこと。

海の中では、見て楽しむだけにしよう。

刺す!生き物

衝撃的な写真で有名なダツ。でも、ダイバーの事故例は・・・ない

ところで、過去に沖縄のようで発行されていた海洋危険生物のガイドブックに漁師が夜間の漁の最中にダツに目を刺されている写真があって話題になったが、熱帯域の沿岸で水面近くで浮いているダツも「刺す」という意味では強烈だ。

ただ、日中に何度も会ったことがあるけれど、特に攻撃されることはないし、ナイトダイビングでもダイバーが襲われるという例はあまりない。

でも、油断は禁物。
ダツは、正の走光性があるために、ライトに向かって飛んできて、口先が”間違って”当たるだけ。 なので、ダツを見ても水中ライトを正面から当てないようにする、水中でマスクを外さないといったことを注意しよう。

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