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基礎からわかる! ダイビングスキルアップ術
第11回 とっさのときのBC操作

基礎からわかる!ダイビングスキルアップ術

中性浮力をとるのが苦手と思っているダイバーが多いようだ。苦手意識を吹き飛ばせ! ということで、前回に引き続き、水中でのバランスをとるために大切なことを学ぼう。今回はとっさのときのBC操作。
「自分はできている」と確信している方も多いかもしれないが、もう一度、おさらいをしてみよう。

そもそもBCとは

そもそもBCとは

 なぜABでもABCでもなく「BC」なのか?
 私たちダイバーの必需品となっているダイビング器材、「BC」の呼称がなぜ「ビーシー」なのか、ちゃんと答えられるだろうか?

 BCというのは、英語のBuoyancy Compensatorの略で、日本語にすると「浮力調整装置」。BCDというのはBとCは同じで「D」はDevices(装置)の頭文字。『マリンダイビング』ではCとDの意味が重複することから「D」を省くようにしたのだが、メーカーやダイビング指導団体では「BCD」と呼んでいるところも少なくない。

 それはさておき、1970年代に前掛けのようなBCが誕生してから、現在に至るまで様々な進化を遂げてきたBC。人間の体は浮く。けれども、ウエイトが重すぎたり、水深が深くなるにつれ浮力は減り、沈みがちになったりもする。そうしたときに肺呼吸だけでは補えない空気をBCに入れることで浮力を補うのだ。逆に水中で浮き気味のときに肺から空気を排出するだけでなく、BC内の空気を抜くことで浮上をとどめることができる。

 日本語のとおり、BCは浮力を調整する装置。中性浮力をマスターするには必須のアイテムなのだ。

潜降の失敗もBCの扱い方が原因かも

 まずダイビングの初心者が直面するトラブルが「潜降」なのではないだろうか。
 潜降するときは、BCの空気を抜いて、息を吐くと体が沈んでいく・・・はずなのだが、なかなか沈めないことがある。沈めないのには2つの原因が考えられる。
1) BCの空気を抜ききっていない
2) 息を吐いていても肺に空気がたまってしまっている

 2の呼吸については次回に紹介するとして、原因1はBCの排気方法が甘いことにほかならない。

ベルトアジャスタータイプのBCのブラダー(空気嚢)。AQUA LUNG製

ベルトアジャスタータイプのBCのブラダー(空気嚢)。AQUA LUNG製

 BCにはジャケットタイプ、ベルトアジャスタータイプ(略してベルトタイプ)、バックフロートタイプと大きく分けて3つのタイプがある。
 エントリーする前には浮力を確保するためにある程度空気を入れておくものだが、BCのブラダー(空気を入れるための浮き袋)内に平均して空気が分散しているわけではない。基本的に空気は軽いのでブラダー内にパンパンに空気を入れない限りは上部にたまる性質がある。また、着たときに何らかの障害物があって(ウエイトなど)ブラダーに折り目が付いていると、その折り目から上に空気は行かず、下のほうにたまっている場合もある。
 だから、インフレーターホースを使って一生懸命排気をしていても、ヘンな箇所に残った空気が抜け切れない。

 BCによっては空気が抜け切れない場合に対処するためにも、「ダンプバルブ」と呼ばれる排気バルブが肩(たいてい右側)や腰(たいてい右の腰の後ろ)に付いていて、ダンプバルブのヒモ(プルボタン)を引っ張ると排気できるようになっている。「沈まない!」というときはこれを引っ張ると、すっと排気され、沈む。
 ただダンプバルブは急激に排気されるので、沈み過ぎて耳ぬきが追いつかないという場合もあるから気をつけたい。
(インフレーターでの排気よりも先にダンプバルブで排気をして、なんとなく浮き気味だなと思ったら、インフレーターホースに空気がたまっていた・・・なんてこともベテランにはよくある話ではあるが)。

これは腰にあるダンプバルブ。SAS製

これは腰にあるダンプバルブ。SAS製

肩口にあるダンプバルブはプルボタンのヒモが長めで、右胸元で引っ張れる。SCUBAPRO製

肩口にあるダンプバルブはプルボタンのヒモが長めで、右胸元で引っ張れる。SCUBAPRO製

 BCのタイプによって、ブラダー内への空気の入り方が異なるので、自分のBCのブラダーがどうなっているか、インフレーターでの排気はどうするのが一番効果的か、ダンプバルブとプルボタンはどこにあるのか、を確認していざというときにすぐに使えるようにしておこう。

沈めない! がなくなる潜降法

あ~浮く~! そんなときは緊急排気

 ダイビング中は一定の水深を泳いでいるわけではないので、気づかないうちに水深が浅くなって、水圧が減少し、BC内の空気が膨張して浮きやすくなってしまうこともよくある話。

「浮き気味だな」という程度であれば、インフレーターホースに付いている排気ボタンを使って少しずつ排気するのがオススメ。ダンプバルブを使ってしまうと、排気し過ぎてしまうからだ。

このように排気ボタンを押しながらインフレーターホースを引っ張ると、排気できるBCが多くなっている。AQUA LUNG製

このように排気ボタンを押しながらインフレーターホースを引っ張ると、排気できるBCが多くなっている。AQUA LUNG製

インフレーターホースの排気ボタンを押しながら排気。上に持ち上げながら行なうように教えられるが、最近のBCは排気ボタンを押しながら引っ張ることで排気されるものも多い。Bism製

インフレーターホースの排気ボタンを押しながら排気。上に持ち上げながら行なうように教えられるが、最近のBCは排気ボタンを押しながら引っ張ることで排気されるものも多い。Bism製

このように排気ボタンを押しながらインフレーターホースを引っ張ると、排気できるBCが多くなっている。Aqualung製

このように排気ボタンを押しながらインフレーターホースを引っ張ると、排気できるBCが多くなっている。Aqualung製

 でも、急に水深を浅くしたために、またはアップカレントにはまって、「あ~~~浮く~~!!」といった緊急事態になった場合は、ダンプバルブで緊急排気すること。肩、腰、どちらでもいいので右手でプルボタンを引っ張ろう。また、インフレーターホース内に空気がたまっていることもあるので、同時に左手でインフレーターからの排気もするといいかもしれない。

腰にあるダンプバルブを実際に水中で使うと、こんな感じになる。TUSA製

腰にあるダンプバルブを実際に水中で使うと、こんな感じになる。TUSA製

 ちなみに、ドライスーツで潜っているときによくあるトラブルで、真っ逆さまに浮いてしまう"吹き上げ"現象が挙げられるが、この場合は、BCもそうだけれど、足にたまった空気を排気する手段が必要。
 逆立ち状態から、腰を直角に折ってみるとぐるんと頭が上に来る。それと同時に足にたまった空気も上のほうに移動するので強制排気にして、排気を試みてほしい。なかなかうまくいかないかもしれないが、バタバタと足を動かしてジタバタするよりは効果的だ。

ドライスーツの基本スキル

BCに給気するときは 少しずつ

 ダイビング中に体が沈みがちなときもある。
 ウエイトが重すぎたり、深場を潜ったり、ダウンカレントにはまったりするときにそういう状態になるのだが、BCに給気するときは少しずつボタンを押すのが基本(ドライスーツの場合も同様)。というのは、実際にBCのブラダーに空気が行き渡るには押してから数秒間かかるため、ボタンを押した時からちょうどいいバランスを感じる時までにはちょっとしたタイムラグがあるからだ。なかなか浮かないからと、給気ボタン(排気ボタンと違って給気ボタンは1つしかない)を押し続けると、気づいた時にはピューッと急浮上、なんてことにもなりかねない。

インフレーターホースの先に付いている"インフレーター"。給気ボタン、排気ボタンがあるので、とっさのときに間違えないようにしっかりと使いこなせるようにしておこう。Mare製

インフレーターホースの先に付いている"インフレーター"。給気ボタン、排気ボタンがあるので、とっさのときに間違えないようにしっかりと使いこなせるようにしておこう。Mares製

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