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基礎からわかる! ダイビングスタート&スキルアップ術
第4回 初めてのダイブコンピュータ

ダイビングスタート&スキルアップ術

ダイビングを始めたばかりの人にはなんだか難しそうな響きの「ダイブコンピュータ」。ちゃんと使い方さえ学べば、(当たり前ですが)誰だって使えるんです! ここでは、知っておいてほしいダイブコンピュータの基礎をご紹介します。

大根じゃないよ、ダイコンだよ!
ダイブコンピュータの役割って?

よくインストラクターやベテランダイバーが「ダイコン」と言っているのを聞いたことがあるだろう。最初は「何のこっちゃ??」だが、実はこれ「ダイブコンピュータ」の略。ほとんどの人が「ダイコン」と省略しているので覚えておこう(ここでも以下、ダイコンと呼ぶ)。Dive Computerという英語を略して「DC(ディーシー)」と呼ぶ人もいる。
そもそもダイコンとは、現在水深や潜水時間、水温、最大水深など、今潜っているダイビングのデータをリアルタイムで教えてくれる道具のこと。ダイバーは常にダイコンを確認しながら、体に負担のかからない、安全な潜水計画を立てる必要がある。ダイコンには腕時計のようなウオッチ型や、レギュレーターに取り付けるコンソール型などさまざまなタイプのものがある。また、レギュレーターのファーストステージにトランスミッターを付けることで残圧や、残圧から計算された潜水可能時間の出るダイブコンピュータもある。

リストウオッチ型の一例。コンパクトで軽量、使いやすい反面、大きなサイズのダイコンに比べると画面の表示が小さい傾向があるが、水中ではモノが大きく見えるので、老眼の方でも見えるはず。写真はソーラーバッテリーでも話題のTUSAの「IQ1204」

リストウオッチ型の一例。コンパクトで軽量、使いやすい反面、大きなサイズのダイコンに比べると画面の表示が小さい傾向があるが、水中ではモノが大きく見えるので、老眼の方でも見えるはず。写真はソーラーバッテリーでも話題のTUSAの「IQ1204」

リストウオッチタイプのダイブコンピュータ。トランスミッターとともに使用すれば、残圧や潜水可能時間がわかる。写真はShearwaterの「The Teric」

リストウオッチタイプのダイブコンピュータ。トランスミッターとともに使用すれば、残圧や潜水可能時間がわかる。写真はSHEARWATERの「The Teric」

最も重要なことは
「減圧症にならないため」の
道具だということ

ダイコンが教えてくれるデータの一つに、「無減圧潜水時間」(NDL、または減圧不要限界)というのがある。実はこれこそが一番重要な項目。無減圧潜水時間を知ることで、減圧症にかかってしまうリスクを減らすことができる。よくダイコンを「水深を見るだけにしか使っていない」という方がいるが、これでは安全ダイビングのためにならない。せっかく持つなら"減圧症にならないため"に使うことを忘れないように。
無減圧潜水時間が何かという話をする前に、まずは減圧症についておさらいをしておこう。通常、タンクの中身は空気。この空気に含まれる気体(酸素、窒素など)は圧力が高いほど液体によく溶け込む。つまり、深く潜るほど多くの気体が体の各所に溶け込むということ。酸素は体内で消費されるが、窒素は溶け込んでも吸収されず、浮上とともに排出される。
しかし長時間深い場所で潜っていると、体内に溶け込んだ窒素が排出しきれず、体内で気泡化してしまう。この気泡が神経を圧迫したり、血管を塞いだりして体に不調を来す。これが減圧症だ。主な症状としては関節の痛み、しびれ、だるさで、治療をすれば治ることが多いが、最悪の場合死に至ることも。絶対に気泡が貯まりやすいようなダイビングをしないよう、安全ダイビング(無減圧潜水)を守らなくてはならない。

そこで活躍するのがダイブコンピュータ。過剰に窒素を貯め込まないよう、水深と潜水時間から体内にある窒素量とその水深に留まれる時間を計算し、「無減圧潜水時間」をリアルタイムで表示してくれる。しかしダイブコンピュータの計算はあくまで理論上の話。窒素が溶け込む量には個人差があるほか、個人でもその時の体調によって異なる。完全に頼るのは避け、計算よりも余裕を持ったダイビングをしよう。

「無減圧潜水時間」は
どこで確認すればいい?

今ではほとんどのダイコンがダイビングを開始すると、自動的にダイビングモードに切り替わる。すると、画面に「現在の水深」と「無減圧潜水時間(=現在の水深に、安全にとどまれる時間)」が表示されるはずなので、その見方を覚えよう。
表示はメーカーや機種によって異なるので、必ず説明書を読み、どこに何の表示があるかを確認するように。以下にRATIOとSHEARWATERから発売中の最新機種を例に挙げたのでご参考に。

(赤線)…無減圧潜水時間
(青線)…現在水深

RATIO iDive Easy Sportsの例
無減圧潜水時間と現在水深を同じぐらいの大きさで表示しつつ、無減圧潜水時間(21分)は黒字に抜き文字と別扱いになっている。

SHEAWATER The Tericの例
表示画面は自分で何通りもチョイスでき機種なのだが、例えばこの画面は現在水深が大きく表示され(23.5m)、無減圧潜水時間(11分)はそれよりは小さいけれど、中央に配置されている。

「無減圧潜水時間」が大きく、わかりやすく
表示されているダイコンがおすすめ

無減圧潜水時間が大きく表示されているかどうかは、ダイコン選びの目安の一つとなる。いくら見た目がかっこよく、コンパクトでも、表示が小さかったり、見にくいと感じたらそれはあなたに向いていないということ。実際に自分の目で見て、視認性の良さを確認しよう。

★そのほか選ぶときのポイント

機能の充実度

 現在発売されているダイブコンピュータは、基本的な機能での優劣はほとんどないといっていい。つい機能がたくさん付いている最新機種を選びがちだが、あまりに自分のスタイルとかけ離れているようであれば、無駄に費用をかけるだけ。本当にその機能が必要か、悩んだらスタッフに相談してみるといいだろう。
 具体的なチェックポイントは、優先順位が高いものから

① 警告音が鳴るか
② 自動的に潜水モードになるか
③ 安全停止時間が自動的に出るか
④ 電池寿命は長いか(ソーラータイプや、自分で交換できるもの、充電式のものもチェック)
⑤ エンリッチド・エア・ナイトロックスに対応しているか
⑥ 混合ガスに対応するか
⑦ トランスミッター機能があるか

だ。もちろん人によって差があるので参考程度にしてほしい。

ボタンの使いやすさ

 写真で見るだけでは、操作性やボタンの押しやすさはわからない。何度もボタンを押さなければ目的のモードにたどり着けないものや、ボタンが押しにくいものもある。なるべくボタンの数は少なく、押しやすいものを実際に手にとってチェックしよう。グローブを付けていることも想定して。

画面の見やすさ

 スタリッシュさに惹かれてウオッチタイプにしたら、文字が小さくて見えづらい・・・なんてことがないよう、実際に手にとってみてみよう。また、いくら画面が大きくても、配置がバラバラだとわかりにくい。最低でも現在の水深、無減圧潜水時間、潜水時間の3項目が見やすく表示されているものを選ぼう。

デザイン性

 長く使うためには、お気に入りのデザインを選ぶことも大切。器材のカラフル化に伴い、ピンク、ブルー、イエローなどカラフルなダイブコンピュータも増えているので、色や形をチェックしよう。
 しかしながら、デザインばかり気にして肝心の機能性や操作性がおざなりにならないよう、注意したい。

価格

 同じような機能でも、メーカーによって2万円前後~20万円以上とさまざま。値段の差は基本的に機能数の違いによるが、中には材質の違いにもある。錆びにくく丈夫なチタンを使っているものはそれなりの値段がするし、樹脂製やステンレスを使用したものは比較的リーズナブル。自分に合った視点で選ぼう。

「無減圧潜水時間」ギリギリまで
潜らないように!

ダイコンは減圧症にならないための道具でもあるが、実はダイコンが普及してからというものの、減圧症にかかる患者が増えているとの報告もある。これは逆にコンピュータで管理されることによって、「無減圧潜水時間の範囲なら大丈夫」という過信が生まれ、体に負担をかけるダイバーが増えたからだ。
いくら無減圧潜水時間内とはいえ、あくまでコンピュータ上の理論。2本目潜るときは当然1本目分の抜け切れない窒素が体に残っていることや、2日目に潜るときは1日目に潜った分の窒素が残っていることなど、繊細な人体のことまで完璧に管理できるわけではない。無減圧潜水時間が例え「30分」を示していても、20分にしておくなど、常に余裕のあるダイビングを楽しもう。

 

ダイビング終盤は
安全停止をしっかりと!

ダイビングが終わりに近づき、浅場に上がると、「安全停止モード」に自動的に切り替わるダイコンがほとんど。だいたい水深6~3mの範囲内で、3分の安全停止となっていて、カウントダウン機能が搭載されている。この「3」分の表示が「0」になるまで安全停止をしよう。

ダイビング終盤は安全停止をしっかりと!

安全停止は体にたまった窒素を抜くために行なう安全行為

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