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- 第20回 フィッシュウオッチング術 Part 1 マンタ編
基礎からわかる! ダイビングスキルアップ術
第20回 フィッシュウオッチング術
Part 1 マンタ編
ダイビングの楽しみの一つ、フィッシュウオッチング。
フィッシュといっても、魚だけじゃなく、イルカやクジラなど哺乳類もいればエビ・カニといった甲殻類、ウミウシや貝、サンゴなど、生物の種類は多岐にわたる。
ウオッチングの仕方もいろいろ……ということで、今回は世界最大のエイ、マンタウオッチングのノウハウを。
憧れのマンタ その行動を知る
ダイバーの憧れの生き物の中でもトップクラスの人気を誇るのがマンタ。
数あるエイの中でも地球最大のエイの仲間だ。
最近になってマンタには2種類のタイプがあるということで、主に外洋を回遊しているものを和名でオニイトマキエイというのに対して、リーフ周辺で生息するものをナンヨウマンタと名づけている。でも、ここでは「マンタ」ということで紹介していきたい。
私たちがマンタスポットで見られるのは、主に「クリーニングステーション」と呼ばれる根にやってくるマンタ。彼らは体に付いた寄生虫やゴミなどをクリーニングステーションにいるクリーナー(チョウチョウウオやベラの仲間など)に食べてもらいにやってくるのだ。ちなみにクリーナーたちはマンタだけでなくサメをはじめ、大小の魚たちをクリーニングする。
クリーニングしてもらっている最中は、止まっていないとキレイにならないので、マンタはちょっとの間根の上でホバリングする。私たちダイバーはこの瞬間を狙い、ウオッチングする。撮影をしたりもする。
でも、毎回ホバリングするわけではなく、ただ根の周りをぐるぐる回っているだけのときも少なくない。
さらに、クリーニングステーションの周りでメスのマンタに対して猛アピールするオスのマンタのダンスや、メスを何尾ものオスが追いかけ回す、いわゆる繁殖行動を目にすることも。オスばかりが集まって力を競い合っているのかチェイシング(追いかけっこ)をしていることもある。
クリーニングステーションの周りはドラマだらけなのだ。
ベラなどにクリーニングをされているマンタ
捕食マンタもいる
一方、水面近くにマンタがやってきて、大きな口を開けて泳いでいたり、ぐるぐるとバック転をしたりしているのがよく見られるスポットもある。
彼らは水面に集まってくるプランクトンを食べるために、こうした行動をとっているのだ。
石垣島やモルディブ、パラオなど、世界にはたくさんのマンタスポットがあって、石垣島では春先に南の黒島周辺で捕食中のマンタによく会える。パラオの「ジャーマンチャネル」は根だけでなく、捕食マンタでも有名だし、モルディブの「ハニファルベイ」は多いときはマンタが100尾ぐらい集まって捕食する“ぐるぐるマンタ”(英語ではManta Train, Manta Cyclone)で有名だ。
※「ハニファルベイ」は現在スノーケリングのみ。でも、その周辺のダイビングスポットで、マンタがたくさん集まってくることがある。
モルディブのバア環礁のダイビングスポットでも希にこんな幸運に会えることがある
ナイトダイブでマンタ。光に集まってくるプランクトンを捕食しにマンタがやってくるのだ
Movie by Yukari Goto
クリーニングステーションでの
ウオッチングの鉄則
ということで、ようやく本題に入るわけだが……。
まずクリーニングステーション、いわゆる「マンタの根」でのウオッチングの仕方を。
たいていのスポットで絶対にNGとされているのが「根の上に乗る、横切る」こと。ダイバーが根の上にいることで、マンタがやってこなくなるからだ。
マンタが来るのを待つときは、そのクリーニングステーションの周り。亀裂に中性浮力をとって浮かんでいたり、砂地に着底してウエイティング。
ここがスキルの必要なところで、中性浮力はとっても必要。でも、たいていのクリーニングステーションはトップからなだらかに下に落ちていく根なので、ホントはやっちゃいけないけれど、根につかまって待つことも可能(着底禁止エリアもあるので、ケースバイケースで。禁止エリアでは中性浮力が必須)。
このとき、がしっと岩壁をつかむのではなく、生物に影響のなさそうなところを見つけて、人差し指を支点にするようにして、“体を支える”ような感じにするといいだろう。
着底してマンタを待つパターン
根の周りの亀裂でマンタ待ち
マンタが来ても、そこから動かずに、マンタが向こうから近づいてくるのを待てばいい。
「来た~!」と近づいてしまうと、危険を察知して逃げてしまうから、絶対に前に出ないこと。ましてやマンタを追いかけないこと。
ガマンしていれば、本当に向こうからやってきてくれ、ときには頭の上でホバリングしてくれることも!
そんな幸運なときに悩むのが呼気の泡。ダイビング中息を止めてはいけないと教わるけれど、同じ水深にいるので多少息を止めるのは問題ない。ちょっとの間ガマンすれば、マンタはずっと頭の上にいてくれる。
でも、限度もあるので、苦しくなってきたら、ちょっとずつ泡を吐いていこう。それでも逃げないでいてくれる場合もあるし、残念ながら逃げていってしまう場合もある。
ちなみに、基本的にマンタにははいた泡を当てないようにするのがルールだが、個体によっては泡が気持ちいいのか、わざと泡の上に回ってくるマンタもいる。そんなときは遠慮しないで呼吸をするといい。
まとめ マンタウオッチングのルール
- 1 クリーニングステーション(根)に乗らない、横切らない
- 2 マンタを追いかけない
- 3 近づいても触らない
- 4 泡を当てない
- 5 残圧確認を忘れない
去るときも気配りを
マンタがまだいるのに浮上しなくてはならないときがある。
そんなときにダイバーがやってしまいがちなのが、今まで見ていた根を横切ること。もうウオッチングが終わったからいいやというのは、人間としてどんなものか。
ほかに見ているグループがいることも考えられるし、ましてやそこにマンタがいることだってあるので、最後の最後までキマリを守って行動を!
捕食マンタのウオッチング術
捕食マンタは基本的に水面に集まるプランクトンを狙ってやってくる。
ダイバーは水面近くで安全停止がてら見るのが普通だし、モルディブの「ハニファルベイ」のように、スノーケリングでしかウオッチングできないスポットもある。
安全停止がてら見るということは、つまり中性浮力のスキルが絶対必要となる。しっかり水深を保つこと、そして近づくときはゆっくりと。
彼らは捕食に夢中なので、ダイバーになど目もくれずガンガン食べている。ヒレが体に当たったり、真っ直ぐに向こうからやってきたりすることだってある。
だからといって、マンタの前にこちらから回り込んだり、追いかけ回すのはNG。
いずれにしても、尊敬の念を持って、マンタウオッチングをしていただきたい。
スノーケリングをしながら捕食マンタをウオッチング
捕食マンタをウオッチングするときは、中性浮力をとって、中層で待つこと!
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