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第24回 ナビゲーション
Part 3 野生の勘を取り戻せ!? ナチュラルナビ
Part1やPart2のコンパスナビゲーションも身につけておきたいところだが、水中にはいろいろな「目印」がある。透視度のいいところであればコンパスを使わなくてもこうした目印を頼りに移動することも可能。
こうした海の中の“目印”や“モノ”を頼りにナビゲートすることを「ナチュラルナビゲーション」という。
このスキルを身につけておけば、ガイドからはぐれてしまった……という場合もボートやエントリー場所に戻ることはできるはず。安全のためにもぜひマスターしよう!
ナチュラルナビゲーションで使う“目印”
「ナチュラルナビゲーション」というのは、水中の地形や生物、人工物などを目印に使ってナビゲートする方法だ。普通、プロのガイドさんたちはコンパスとナチュラルナビを併用している。
ところで、ダイビングを楽しむときの最大のポイントは、“戻ってくること”。
ヨットでもサーフィンでも同様なのだが、安全あってこそのレジャー。命を投げ捨てることなく楽しむためには、安全な状態で元の場所に戻ってくることが基本中の基本だ。
セルフダイビングでバディとともにエントリーした所からエグジットした所(または別のエグジット場所)に戻ることができなくてはならないわけだが、どうすればコンパスを頼らずに戻ってこられるだろう?
そう、水中にある“モノ”を使えばいいのだ。
1)水深
ナチュラルナビゲーションで頻繁にチェックしなくてはならないのが水深。
ビーチスポットの場合、沖に向かって水深は深くなっていくのが基本だ。
あらかじめ、ダイビングスポットの水中マップを頭に入れておいて、現在水深を見てみて、今自分がどの辺にいるかを割り出すことも可能。
また、次に紹介する“目印となる根”などと現在水深を照らし合わせれば、四次元で自分がいる場所を特定することもできる。
ただ、実践では、沖の深い所を移動しているときに、いつまでたっても同じ水深のため、迷ってしまい帰れなくなることも。
そんな場合に備えてコンパスを併用していれば安心というわけだ。
2)地形
岩やサンゴの根、ドロップオフやオーバーハング、砂地にゴロタなど、海中にはさまざまな地形がある。三角形の根とか、割れたリーフなど、特徴のある地形は覚えやすい。
ダイビング前にこれから潜るスポットの水中マップを見て、おおまかに目印となりそうな地形を覚えておき、実際に潜っているときはそれを必ず確認するようにすれば、コース取りで間違えることはないはずだ。
3)人工物
地形と同様に、水中に沈んでいるモノ……魚礁やコンクリートブロック、テトラポッド、ロープなどもコース取りをしていく点では重要な目印。
ただし、他人の船のアンカーなど、動くモノを目印にしてしまうと、迷うことになるのでご注意を!
4)砂紋
砂地が広がる砂漠のようなスポットでは、なかなか目印がなくて元に戻る方向がわからなくなりがち。
でも、砂地にできる砂紋は基本的に海岸線と平行してできることがわかっていれば、それと直角に、水深が浅くなる方向に向かえば岸に向かっていることになる。
セルフダイビングでなくても、サバイバルな知識として覚えておきたい。
5)潮流
潮の流れは決して一定ではないけれど、事前に地元の海をよく知るガイドや漁師さんなどに潜る時間帯が上げ潮なのか下げ潮なのか(地方によっては潮の呼び方が違うので注意!)、そのときの潮は普通ならどういう状況なのか、天候などによって変わることはあるのかなどを聞いておくことも大切だ。
ちなみに、ダイビングのコース取りの基本としては、行きは潮に逆らっていき、帰りは潮に乗って帰ってくるようにすること。
ただし、あまり流れが速い場合は、ダイビングを止めるか、時間帯をずらして流れが収まるのを待とう。
6)生き物
当たり前のことだが、泳いでいる魚が目印になるわけではない。基本的にはサンゴやソフトコーラルなど、動かない生き物が目印となる。 でも、根に潮が当たっている時間帯にハナダイの群れやメジナの群れが固まっている……といった見方はできるけれど。
トレーニング1
往復ができるようになる!
真っ直ぐ行って
真っ直ぐ戻ってくる
陸上では簡単なことかもしれないけれど、レーンなしのプールを泳いだことのある方なら真っ直ぐ泳ぐことの難しさはご存じだろう。
ダイビングも同様で、真っ直ぐ泳いでいるつもりでも、実際にはできていないことが多い。
ということで、ナチュラルナビゲーションを身につけるには、まず真っ直ぐに進んで、真っ直ぐに戻ってくる、往復コースから練習したい。
マップは西伊豆のダイビングのメッカ、大瀬崎の外海側。
セルフダイビングを楽しむダイバー、特にフォト派ダイバーがとても多い所だ。
ここの海中マップを例にまずは計画を練ってみよう。
「コース1」を見てほしい。
矢印はちょっと遊びを入れて、沖でぐるっと回っているのだが、まずはここで水深25mの沖まで行って帰ってくるパターンを計画する。
ゴロタのエントリー(EN)ポイントから沖に向かうと、すぐ砂地になるがまた水深10mぐらいにゴロタの平たい根がある。それを越えるとまた砂地になっていて、水深15mぐらいにちょっとした根がある。
さらに進むとムチヤギ畑があって、水深25mよりちょっと深い所でサクラダイが群れている。
ここを折り返し地点にして、戻ってくるというパターンだ。
水深15mの根を通って、再び水深15mの根を目指し、ゴロタの平たい根を通って戻ればいいというわけ。
真っ直ぐ泳ぐコツ
陸上で歩いているときを思い出してほしい。
真っ直ぐ歩くには、目標物に向かって歩いているはずだ。
ただ水中では透視度が何十mもあるわけではないので、目標物がいつも見えるわけではない。
そこで、まず進行方向に体を向けて、途中にあるモノを第一の目標とする。さらに、真っ直ぐ行くにはその先の目標物を作っておき、最初の目標物と、次の目標物が一直線になるように進んでいく。
最初の目標物に到着したら、次の目標物のさらに先に目標物を作って進む。
こうやって繰り返していくことで、最終的な目的地に到達するというわけだ。
直線上に2つの目標物を作って進むことが最大のポイント。
例えば、「コース1」の場合は、ENポイントからまずは砂地の何かに目印を作り、さらにその先のゴロタの平らな根を見ておく。砂地の何かにたどり着いたら、ゴロタの平らな根の先にある中ぐらいの根を目印にして、ゴロタの平らな根へ行く……といった手順だ。
実際には透視度が悪くなることもあるので、こう上手くはいかないことも。その都度対処できるようにしておくことも大切だ。
こんなときナチュラルナビゲーションは中止!
透明度や透視度が悪いときのナチュラルナビゲーションは、バディ同士ではぐれるといったトラブルをはじめ、はぐれてパニックに陥ってしまったりなどなど、事故の元になりかねない。
レジャーで潜るわけだから、無理をする必要はまったくない。
透視度が悪くてもせっかくだから潜りたい!という方は、逆にしっかり地元のガイドを付けて、ポイントポイントを押さえた潜り方をしてもらうといいだろう。
くれぐれもバディ同士で何とかしようと思わないことだ。
水中マップを手に入れて
地形を覚えておこう
最近はたいていのダイビングスポットで、ガイドが事前にブリーフィングしてくれる。
その際に水中マップを使って説明してくれることも多いはずだ。
ただ漫然と見るだけじゃなくて、頭の中で水中をイメージしながら水中マップを見て説明を聞くことが大切だ。
それができるようになると、セルフダイビングで潜る際も水中マップを見ただけで、水中の様子を想像できるようになるはずだ。
できれば、セルフダイビングをするのは一度ガイドダイビングをしてからのほうがいいと思うけれど、探検気分を味わいたいなら、初めての所でするに限る。
でも、水中マップを見て、ある程度の予想ができない人はまだまだ修業が足りないかも!?
ちなみに『マリンダイビング』でもセルフダイビングができるスポットの紹介のときは できるだけ水中マップを掲載するようにしているので、ぜひご覧ください!
トレーニング2
三角形、四角形と練習を
コンパスナビと同様に、往復のトレーニングができたら、
三角形、四角形と練習を重ねていくといい。
先ほどのマップに戻って、「コース2」の場合。
まずENポイントからエントリーして、そのダイビングの最大水深となる沖に向かう。
ゴロタが転がる平たい根が水深25m付近にあり、そのそばにはソフトコーラルが群生。
まずはここでぐっちゃりと群れる魚(サクラダイなどもいる)を見て楽しむ。
運が良ければマンボウなども現れるかもしれない。
その後、水深13m付近に広がるゴロタの平たい根を目指し、
またまたフィッシュウオッチング。
そして浅瀬に向かって戻るというスタイルだ。
「コース3」や「コース4」のように、大瀬崎の場合はエグジット(EX)口を変えて四角形(1辺は省略してしまうけど)に潜ることも普通にできる。
いずれにしても、目標物をしっかり決めて、最大水深にはダイビングの前半に行けるようにプランニングすることが大切だ。
ちなみに、トレーニングを自分たちだけでするのは不安という方も多いだろう。
そんな方はダイビングスクールが開催している「ダイブナビゲーション・スペシャルティ」などのコースを受講することをオススメする。
コンパスナビも含めて、今までわからなかったことがわかって、目からウロコが落ちる思いをするはずだ。
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