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海のいきもの
第68回 机上の空似~“コブ”と“カンムリ”

海のいきもの第68回 机上の空似~“コブ”と“カンムリ”

同じ海域には生息していないので混同することはまずない。でも、コロナでヒマをもてあまし、魚類図鑑を眺めていた魚ビギナーさんの中には、「あ、似てる」と思った人もきっといる。
●構成・文/山本真紀(2020年6月制作)

デコッパチなソックリさん

コブダイとカンムリブダイはどちらも大きさ1m近くとなる大型魚、ずんぐり体型にデコッパチという三拍子そろったソックリさん。え、「色が全然違う」って? そこはスルーがお約束。

コブダイ

コブダイ
最大1mに達するベラの仲間(ベラ科)。成熟したオスはひたいがコブ状に突出し、アゴも分厚くなることが特徴。温帯の岩礁域を好み、南日本、日本海~南シナ海に分布。撮影/佐渡島

カンムリブダイ

カンムリブダイ
1m以上となるブダイの仲間(ブダイ科)。突き出たひたいが冠(かんむり)の由来と思われる。インド-太平洋のサンゴ礁域に分布し、日本では八重山諸島に生息。撮影/シパダン

最大の違いは「歯」!

分類学の面からコブダイとカンムリブダイの違いを説明するには、口元を見るのが一番。実はコレ、比較的近縁なベラ科とブダイ科の最も大きな違いでもある。

コブダイ
カンムリブダイ

●コブダイ:ベラ科であるコブダイの歯は、小さいけれど立派な牙となっている。口も比較的大きく、貝類や甲殻類などを殻ごとバリバリと食べる。サザエなどの固い殻も問題なし!
●カンムリブダイ:ブダイ科であるカンムリブダイの歯は、融合して板状となっている。一般のブダイ類はこれで死サンゴや岩に付着した藻類をガリガリと囓り取るが、カンムリブダイの場合は生きたサンゴのポリプを好む。一緒に食べてしまったサンゴの石灰質部分は真っ白な糞として排泄され、美しいホワイトサンドの仲間入り。

コロナが落ち着いたら会いに行こう

コブダイと会える海

コブダイと会える海
神経質でなかなか近寄れないが、いったん餌付けされると人によく馴れる。佐渡島ではコブダイがたくさん住みついた「北小浦・赤岩」というスポットがあり、初夏には繁殖生態をウオッチ可能! 房総半島の波左間でも人なつっこい個体が人気で、高知県・柏島の「勤崎」でもコブダイがよく見られる。撮影/佐渡島

カンムリブダイと会える海

カンムリブダイと会える海
群れを成してリーフエッジを回遊し、生きたサンゴをガリガリ囓る光景は、マレーシア・シパダンでよく知られる。パラオ「ニュードロップオフ」やバリ・トランバンの「沈船」でもカンムリブダイが行進! 最近の注目はパラオ「グラスランド」。新月前になるとカンムリブダイが集団産卵するという。 撮影/シパダン

幼魚は全然似ていません・・・

コブダイさんの子供時代

コブダイさんの子供時代
ベラの仲間は親子で模様が異なる種類が多く、コブダイも例外ではない。これで大きさ5cm前後。幼いときはこんなにスマート!
カンムリブダイの幼魚は「魚類写真資料データベース」へGO! 「え~、そんなのメンドー」「どれが幼魚なの?」という方はコチラ。ブダイの仲間もベラ同様、成長につれて姿が変わる種類が多いのでした。撮影/三浦半島

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