年間125万人が訪れるダイビング情報サイト

Marine Diving web

  • Facebook
  • Twitter
  • はてブ
  • LINE

STOP! 潜水事故
CASE143 娘2人と体験の父がマスククリアできず…

CASE143 娘2人と体験の父がマスククリアできず…

ダイビングに限らず事故はつきものではあるが、最初から最後まで何事もなく安全に楽しめてこそ、本当のレジャー。 ダイビングの場合、潜水事故というと死に至るケースも少なくない。 そして多くの人が「他人事」と思っているフシもあるけれど、ふとした気の緩みやちょっとしたケアレスミスで潜水事故が起こることも。 明日はわが身。 もう一度基本を振り返る意味でも、ぜひこの連載を参考にしていただきたい。

CASE143 娘2人と体験の父がマスククリアできず…

今回の潜水事故の原因

  • バディ不遵守
  • 身体拘束
  • 監視不十分
  • 器具の不備・取り扱い不注意
  • 体調の不注意
  • 技量の未熟
  • 気象・海象の不注意
  • エア確認不注意
  • その他

【事例】
父と娘2人で体験ダイビングをしに海へ。当日はインストラクター2名に引率されてビーチダイビングとなった。エントリーから15分後、4050m沖の水深23mのところで事故者(父)がマスク内に侵入した海水を抜くためにインストラクターと海面に浮上したところ、事故者が陸に戻りたいと訴えたため、インストラクターは事故者に仰向けになってもらい、それを引っ張る形で陸へ向かった。陸に向かう最中、事故者が激しい咳を繰り返した後、急に咳が止んだので曳行しているインストラクターが確認したところ、白目を剥いた状態で、呼びかけにも無反応に。付近にいたほかのダイバー等の数名で事故者を浜へ引き上げた。その後、救急車で病院に搬送され、命をとりとめた。

直接の原因海水誤飲または
エアエンボリズム

対処法

体験ダイビングというインストラクターの管理下での事故は、由々しき問題だ。

とても気になるのは、「事故者のマスクに海水が浸入したためインストラクターとともに海面に浮上」という点。
いくら体験ダイビングでも、マスククリアは浮上せずに水中で行うのが普通。なぜ浮上したのか。

例えばPADIの体験ダイビングコースにあたる「ディスカバー・スクーバ・ダイビング・プログラム」の場合、①水中の楽しみ方など簡単な説明を受ける ②ダイビングの基本を押さえたら水中で実際にダイビング!という2つの手順を組んでいる。 ①は講習ルームや店の内外でブリーフィング。その時にダイビングの基本的なルールや注意点、器材の使い方、安心して水中を楽しむために必要なスキルなどをインストラクターから教わる。所要時間は2030分。
近年はあらかじめ「eラーニング」と呼ばれるWebでの講習を受けておけば、現地でこのブリーフィングを受けることは省略される。でもeラーニングでもしっかり把握できたどうかのチェックがある。

②はダイビングに必要な基本的な6つのスキルを学ぶ。水中での呼吸のしかた、レギュレーター・クリア、レギュレーター・リカバリー、マスククリア(マスクに水が入ったときの対処法)、耳ぬき、浮力調整具への空気の出し入れだ。これらを背の立つ浅いところで練習し、参加者が納得できたら実際に水中ダイビングに進む。

今回の事故では、なぜ海面に浮上したのか。深めの海中に行く前にしておくべきことができていなかったのではないか。
また、水深23mと聞くと「浅い」と私たちダイバーは感じるけれど、いち速く水面に出たいという気持ちで事故者は浮上スピードが急激だったため、エアエンボリズム(空気塞栓症)に陥った可能性も否めない。水深の浅いところほど、エアの膨張率が高いので、肺内の空気が水面で過膨張になって咳き込んだとも大いに考えられる。

ダイビングは浮上速度もとても大事で、急浮上はNG。本当はインストラクターとともに、毎分18m以下の速度でゆ~っくり水面を目指さなくてはならない。

別の面で気になるのは、事故者の当日の精神状態だ。父親が娘2人と一緒にダイビングとなると、娘の前でいいカッコをしたい、頼られたい、娘たちを守らなければ、など様々な感情が沸き起こっていたはず。責任感が強い人ほど、責任を持たなきゃと勢い込む。ダイビングの事故ではこうした、「ええかっこしい」な人や「見栄を張る」立場の人ほど事故を起こすという例が少なくないのだ。男女のカップルの場合も同様。

もし、そのような立場の方がファンダイビングや体験ダイビングをするときは、このことを肝に免じて、決して無理をしないで、基本スキルを忠実にまっとうしていただきたい。

なお、これから体験ダイビングをする方に知っておいてほしいことがある。これはダイバーになるための講習を受ける場合も同様だが、リゾートでも都市型でも、「1時間で体験ダイビング」のように短時間でリーズナブルなコースをうたっているショップもある。初めてダイビングをする人には、時間が長く料金が高いコースよりも魅力的で選びやすいだろう。けれど、短時間ということは、すべきことを端折っているわけで、体験ダイビング選びをする際は注意すべき点だ。ブリーフィングが2030分でも着替えて準備して、浅いところでスキルを学んで水中でダイビングとなると、最低でも2時間はかかる。できれば半日以上のコースであれば満足度も高いし、詰め込みではないので安全度はより増す。また、連載「ダイビングのスキルアップQ&A46回でベテランイントラ・かっしーが答えているのように、最初はプールで体験ダイビングをするのが安全なのだろう。

体験ダイビングを開催するショップ側も安全の上に安全を考えて実施しているお店は多いが、この事故のようにやるべきことをスキップしてしまうお店も見受けられる。ショップ選びはとても難しいけれど、体験ダイビングの所要時間を確認したり、Webサイトで店の情報をよく見て、申し込んでほしい。

  ダイビングは安全が一番。でも100%はあり得ません。

もしもの時を考えて対策をとっておくことはとても大事なことです。 そんな時にDAN JAPANのサポートシステムを知っておくことをおすすめします。詳しくはDAN JAPANサイト  


ダイビングは安全に潜ってこそ楽しい!
でも、万が一のとき、あなたはどうしますか??

ダイビングは安全に潜ってこそ楽しい!
でも、万が一のとき、あなたはどうしますか??

ダイビング初心者の方は、ダイビングは怖いものと思っている方も多いと思います。実際は、基本手順やルールを守って潜れば、それほど怖がることはないレジャースポーツです。
また、ダイビングは海という大自然と向き合います。
だからこそ、「水中で体験した感動は忘れられない!」、「人生を変えるほどダイビングは素晴らしい!」と感じるダイバーが多いのも事実です。
しかし、自然が相手のスクーバダイビングですから、100%安全なんてことはありません。万が一のときあなたはどうしますか?
そんな時、DAN JAPANがあなたをサポートします。

詳しくは、こちらをご覧ください。

DAN JAPAN
一般財団法人 日本海洋レジャー安全・振興協会
TEL:045-228-3066
FAX:045-228-3063
Email: info@danjapan.gr.jp
https://www.danjapan.gr.jp/

〒231-0005
神奈川県横浜市中区本町4-43
A-PLACE馬車道9階

DAN JAPAN
  • Facebook
  • Twitter
  • はてブ
  • LINE
トップページへ戻る

バックナンバー