
DIVING スタート&スキルアップ 2021
ダイビングに限らず事故はつきものではあるが、最初から最後まで何事もなく安全に楽しめてこそ、本当のレジャー。 ダイビングの場合、潜水事故というと死に至るケースも少なくない。
そして多くの人が「他人事」と思っているフシもあるけれど、ふとした気の緩みやちょっとしたケアレスミスで潜水事故が起こることも。 明日はわが身。 もう一度基本を振り返る意味でも、ぜひこの連載を参考にしていただきたい。
ある年の1月。事故者たちはダイビングスタッフとダイビング客など計26名でダイビング船に乗り込み出港。スポットに到着し、アンカリング後、26名が2 組に分かれてダイビングを開始した。事故者たちはダイビングを終えて浮上したところ、アンカーロープが切断しダイビング船が漂流していたため、4名が付近のダイビング船に救助され、22名が自力で岸にたどり着いた。
直接の原因漂流
"ボートダイビングは安全"と信じて潜っているダイバーにとっては青天の霹靂だったことだろう。どう考えても9割以上、潜っているゲストダイバーに悪い点はない。あるとすれば、アンカーロープのかけ方が未熟または切断してしまうようなアンカーロープを使用しているダイビングサービス、そしてダイビング中、ウオッチャー(監視員)を置かないダイビングサービスを選んでしまったこと。
この事故は10年以上前に起こったもので、その前後にも同様に監視員を置かないダイビングボートが漂流事故を起こすということが何件かあって、最近ではダイビング中に船に監視員または船長がダイビングボートに残ることが普通になってきてはいる。けれど、規則にはなっていないので、ダイビング中に船上に残らずすべての人が潜るスタイルをまだ行なっているところがなくなっているわけではない。
船上にウオッチャーを残せない事情がいろいろあるのはわからなくもないが、実際問題としてより安全に潜るなら、まずそういうダイビングサービスを選ばないというのがユーザーとして一番手っ取り早い対策だ。
ただし、そういう情報まではなかなか表に出てきていないのも事実。同じダイビングサービスでも船によって有り無しもある。どうしても不安を取り除きたいというダイバーは、ダイビングの予約をする前にしっかりと事前調査をしておくべきだ。
また考え方として、アンカリングしてのダイビングではなく、ドリフトダイビングであればその不安はなくなるということもある。もちろん、ドリフトダイビングにだって、ご存じのように漂流の危険もあるのだが。
じゃ、ボートダイビングなんてしなければいいじゃないか。
そうなってしまっては、元も子もない。
要は、ダイビングサービスが正しく安全にボートダイビングに取り組んでくれていることが肝心だ。
アンカーロープの整備を日頃から欠かさずに行なう、アンカーを海況に応じて確実にかけられるようにする、万が一の場合、すぐに救援を呼べる対策をとっておく……などなどダイビングサービスがスタッフに教育しておくべきこと、徹底させておくべきことはたくさんある。そうしたことができているかどうかをチェックできるゲストであること、ダイバーであることも大切なのではないだろうか。
今回の事故は漂流した時間が残されていないので定かではないが、ダイビング船に救助された4名と、その他の22名が2グループに分かれ、団体行動ができたことも、命拾いをした理由のひとつといえる。漂流の場合は、ダイバーがまとまって助け合うこと。万が一そういう場面に遭遇したときは、まず離れ離れにならないよう、まとまることも心しておきたい。