
DIVING スタート&スキルアップ 2021
ダイビングに限らず事故はつきものではあるが、最初から最後まで何事もなく安全に楽しめてこそ、本当のレジャー。 ダイビングの場合、潜水事故というと死に至るケースも少なくない。 そして多くの人が「他人事」と思っているフシもあるけれど、ふとした気の緩みやちょっとしたケアレスミスで潜水事故が起こることも。 明日はわが身。 もう一度基本を振り返る意味でも、ぜひこの連載を参考にしていただきたい。
事故者は4人のダイバーと1人のガイドとともにダイビングを開始したが、海中視界が3mあるかないかの非常に濁った状態。潜降してすぐにバディと離れ離れになったうえ、潮流が速く、その場にとどまることも困難な状況だった。開始から10分経ったところで潜水困難と判断し、一人で浮上した。が、流れていたためにダイビングボートは見えているもののどんどん引き離されていく。自力でボートに戻るのは無理と考え、救助を待つことに。その後、救助要請を受けた巡視艇に救助された。
直接の原因漂流
春濁りや夏のプランクトン増殖による濁り、大雨による河川からの大量流入の濁りなどなど、水中は常に透明度、透視度がいいわけではない。でも、そんな時でもダイビングの講習を行ったり、ファンダイブをしたりすることだってある。また、最初に潜っている時はなんということもない、普通の透明度だったのに、潜っているうちにあっという間に前が見えなくなるぐらい濁ることだってある。
水が濁ると視界が得られなくなり、バディや一緒に潜っているグループの人たちが見えなくなることもある。まさにこのケースなのだが、安全にバディダイビングをするためにも、こういう万が一のことを考えて、バディとはぐれたら周囲を1分間探して浮上するといった対応策を潜る前に打ち合わせをしておき、実際にそれを実行する必要がある。
この場合、事故者は1名だけはぐれ、1名だけ水面に浮上し、漂流してしまったのだが、さぞかし心細かっただろう。
そもそもバディと事前に打ち合わせをしておけば、水面で落ち合うことができ、二人で漂流することになったとしても、心細さはなくなったり、二人いることでボートがすぐに見つけてくれたりと、同じ漂流をしたとしてももっと状況は良かったはずだ。
また、この時に水中ライトを持っていれば、姿は見えなくても光はまだ届いたかもしれず、バディ同士で離れてしまってもすぐに見つかったかもしれない。
透視度が低い所では水中ライトは意外に役立つものなのだ。
さらに、事故者がフロートを上げた形跡がないのだが、フロートを上げていれば、ボートにもすぐに見つけてもらえたかもしれない。
備えあれば憂いなし。
まずバディや一緒に潜るグループと、万が一迷子になった時の再集合の仕方を事前に打ち合わせをしておくこと。
そして、水中ライトやホイッスル、セーフティフロートなど、エマージェンシーグッズを他人に頼らず自分でも携行すること。
わかりきったことかもしれないが、もう一度ダイビング前に確認して、実践していただきたい。
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次回更新予定日 2019年8月28日