
DIVING スタート&スキルアップ 2021
ダイビングに限らず事故はつきものではあるが、最初から最後まで何事もなく安全に楽しめてこそ、本当のレジャー。 ダイビングの場合、潜水事故というと死に至るケースも少なくない。 そして多くの人が「他人事」と思っているフシもあるけれど、ふとした気の緩みやちょっとしたケアレスミスで潜水事故が起こることも。 明日はわが身。 もう一度基本を振り返る意味でも、ぜひこの連載を参考にしていただきたい。
その日1本目のダイビングのためにボートで出港したAさん。10分ちょっとしてダイビングスポットに到着、船上でダイビングガイドがブリーフィングをした後、Aさんを含むゲストの6名を前後で挟むような形でダイビングを開始した。水深10mぐらいの海底の少し上を約50mほど移動した、水深15mぐらいのところでフィッシュウオッチングをしていたが、20分過ぎにAさんがパニック状態に。これに気づいたアシスタントガイドがAさんを連れて浮上した。Aさんは浮上後、心肺停止状態だったが、海面で応急処置を施したことで意識が戻り、船ですぐに港に戻った頃には完全に意識は回復した状態だった。念のため、救急車で搬送した病院では軽い溺水と診断された。
Aさんは久しぶりのダイビングのため緊張していたせいか、耳ぬきが不調で不安がどんどん膨れ上がっていったとのこと。
直接の原因パニック
この夏も水の事故が多く、ダイバーの悲しい死亡事故も届いている。心よりご冥福を申し上げます。
さて、今回の事故例は事故者Aさんが意識が戻り、その原因が明らかになっているので分析もしやすいのだが……。
まずAさんは耳ぬきが不調にもかかわらずそのまま海底近くをみんなと泳いでいったことが問題。
耳が抜けないと思った時点で少し水深を浅くして、耳ぬきを再度行い、耳が抜けてから再び潜降してみんなと合流すべきだ。先頭を行くガイドのほかに、しんがりにもう一人アシスタントガイドがいるわけだから、その人に見ていてもらうことはできたはずだ。それ以前にゲスト6人で潜っていたそうだが、バディはいなかったのだろうか? ガイドについていけばいいというスタイルだったように見受けられてしかたないのだが、本来であればバディと一緒に潜って、Aさんの耳ぬきまで待ってもらいながら、ダイビングを進めていくべきだった。
耳ぬきができないままに潜るとどんなに大変かは、近日アップしている「耳にまつわるダイビングトラブル」でも紹介しているけれど、いいことなんて一つもない。
何人ものグループで潜っていると、先頭のガイドからはぐれないようにしなければいけない、みんなについていかないといけないといったプレッシャーがかかるのもよくわかる。そんな経験を持っている読者が多数なのではないかと思うけれど、耳ぬきができない状態で無理やり潜ってもAさんのように最後までもつはずがない。
ということで、まずはバディ、それが無理なら後方のガイドに見てもらいながら、自分のペースで耳ぬきをして少しずつ潜降していくべきだった。
実際水深はさほど深くないところではあるけれど、浅いところほど圧力の変化は大きいので、耳ぬきは何度も必要となる。このことを覚えていてほしい。
アシスタントガイドが気づき、急浮上するAさんをずっと見ていてくれて海面でも応急措置をしてくれたので、助かったものの、タイミングを間違えれば死亡に至ることもある事故だ。
1)無理なダイビングをしない(耳ぬきができないまま潜降したり、ダイビングを続けたりしない)
2)バディシステムを順守する
この2点を守るだけでも事故は防げたはず。
くれぐれもご自分の命は大切にして、安全に潜ることを心掛けていただきたい。
次回更新予定日 2020年9月23日