
DIVING スタート&スキルアップ 2020
ダイビングに限らず事故はつきものではあるが、最初から最後まで何事もなく安全に楽しめてこそ、本当のレジャー。 ダイビングの場合、潜水事故というと死に至るケースも少なくない。 そして多くの人が「他人事」と思っているフシもあるけれど、ふとした気の緩みやちょっとしたケアレスミスで潜水事故が起こることも。 明日はわが身。 もう一度基本を振り返る意味でも、ぜひこの連載を参考にしていただきたい。
2月の寒い日、事故者は引率インストラクターと、インストラクター研修生と3名でダイビング講習を開始した。
海底に膝立ち姿勢となって、まずはインストラクター研修生がマスククリアのお手本を見せ、次に事故者の番。
事故者がマスクに両手をかけたところで、パニックになった様子もなく、苦しむ様子もなく、急浮上。水面でインストラクターが事故者に声をかけても意識がなく、口から泡沫が認められたため、事故者のタンク、BCを脱がせ、岸に曳行。スロープに引き揚げ、救急車を要請するとともに、CPRを開始した。
救急車到着までの間、AEDを取り付けたところ、除細動の必要がないとの判断で、AEDはしなかった。
病院に到着し、医師の診断をする頃には意識を取り戻しており、低体温になり、意識を失ったのではないかとの診断。
事故者は40歳台の女性、水温は13℃だった。
直接の原因低体温症
マスククリアができずにパニックになって急浮上という事例かと思った方もいらっしゃると思うが、CASE 2で既に紹介しているので、別の事例である。
この時期にファンダイブされる方はもちろん、講習をされる方は、保温をしっかりとしなければならない。
おそらく普通は同じような装備で潜っていてもたいていの方は問題がなかったに違いないが、寒さを感じるのには個人差がある。
特にこの時期は体温(成人の平均体温は36℃)よりも水温のほうがぐっと低くなるため、水に入ると急速に体温は奪われていく。体は体温を一定に保とうとして、体熱をどんどん放出していく。体熱が放出されれば体温は低くなり、体に異常をきたすようになるのだ。
最初は寒気や震えが来るが、直腸の体温が33℃以下になると、耐寒反応がなくなり、意識障害を起こしたり、脈拍低下、筋硬直、呼吸数の低下などが起き始める。水中で意識を失うと、レギュレーターが外れてしまったり、自発呼吸ができなくなったりと、死に至る危険もある。
事故者が亡くなることなく、生存していたのは幸いである。同行したインストラクターの対処が良かったものと思われる。
だが、こうならないためにも、まずは保温。
事故者の装備が不明なのだが、
特に水温が冷たい場合は、できるだけドライスーツを着用すること。またインナーも汗をかいても水分を放出できる、ドライスーツ専用のインナーを利用すること。
また、手足、頭から放熱していくので、ドライスーツを着ていてもソックスは保温性の高いものを選ぶこと。グローブやフードは厚手の生地のものを着用しよう。
それでも不安な方は、体に貼るカイロなどをお腹や腰に当てて、潜るようにしよう。
また極度に冷え性の方や普段から体温調整に問題がある方は、冷たすぎる海は避けるというのも手だ。
ただもっと水温の低い海域でも人間は潜れる。保温性の高いインナーを着用することが最も重要というわけだ。
この時期は透明度も良く、ダイビングエリアも空いていて、生息する生物も異なり、
夏場とはまた違った楽しみ方もある。
ぜひあったかくしてダイビングを楽しんでいただきたい。
またこの方のように講習を受ける方も、保温対策は万全にするようにして、安全に講習を受けていただきたい。
なお、低体温症の事故ケースはCASE38にもあるので、参考にしていただきたい。
≫ http://marinediving.com/wp/safety_diving/stop_accidents/case38/
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事故に遭わない方法、事故に対面したときの対処法がズラリ!
次回更新予定日 2018年2月28日