
DIVING スタート&スキルアップ 2021
ダイビングに限らず事故はつきものではあるが、最初から最後まで何事もなく安全に楽しめてこそ、本当のレジャー。 ダイビングの場合、潜水事故というと死に至るケースも少なくない。 そして多くの人が「他人事」と思っているフシもあるけれど、ふとした気の緩みやちょっとしたケアレスミスで潜水事故が起こることも。 明日はわが身。 もう一度基本を振り返る意味でも、ぜひこの連載を参考にしていただきたい。
ある年の12月の出来事。
事故者はほかのダイバー2名とその日2本目のダイビングをしていたとき、
いきなり水深30m付近でレギュレーターを外し、スノーケルをくわえた状態で
インストラクターにエア切れの合図を送った。
インストラクターが急いで近づき、事故者にレギュレーターをくわえさせて浮上したが、水面に浮上直後、口から泡を出して意識を失った。
その後、病院に搬送され、診断を受けたところ、肺水腫および減圧症の疑いと診断された。命に別状はなし。
直接の原因溺水 窒素酔い パニック
事故者は命を落とすことはなかったけれど、死に至る可能性も非常に大きかった事故といえる。
まずなぜレギュレーターを外し、スノーケルをくわえてしまったのか?
冷静さを欠いた異常行動をとってしまったということは、事故者がパニックに陥っていたか、窒素酔いでおかしくなってしまったかが推測できる。
事故者の多くが、息苦しさを感じてレギュレーターを外す行動に出ることは、これまでの連載でも紹介してきたが、この事故者はごていねいにスノーケルをくわえてしのごうとしたのだろうか。
また、水深25~26mを超えると、体内に窒素が溶け込み、窒素酔いになる人もいるようだ(もっと浅い段階から症状が出始める人もいるという)。個人差があるといわれるけれど、窒素酔いの症状は、
・テンションが高くなる
・注意力が散漫になる
・思考力が低下する
・体が思うように動かせない
・方向感覚を失う
といった、酔っ払いのような症状が現れることで有名。
この事故者の行動も窒素酔いに近い。
すぐそばにインストラクターがいたので、命に別状がなくて済んだが、
窒素酔いは本人に自覚症状がないのがやっかいなところ。やはり酔っ払うことに似ている。
でも、水深を上げて(浅くして)いけば、元の状態に戻るものでもある。
“なんか、いつもと違う感覚だなぁ”と思ったら、
自分の窒素酔いを疑って、インストラクターにもう少し上にいたいといった旨を知らせることが大切だ。
同様に、息苦しさを感じたら、まずは大きく深呼吸をして、気持ちを落ち着かせること。
間違ってもレギュレーターを外したりしてはいけない。
(レギュレーターは絶対に外したらいけないということは、頭に叩き込んでおくことも大切だ)。
過呼吸になってしまうことで、パニックになる可能性が大きくなるので、
とにかく大きく深呼吸して、呼吸を整えること。
今回のケースもセルフディフェンスができるはずのもの。
皆様もこうした状況に陥ったときのことをシミュレーションして、対処できるようにしていただきたい。
次回更新予定日 2018年1月31日