- ホーム
- 安全ダイビング
- STOP! 潜水事故
- CASE8 海中で咳込んでパニック→急浮上
STOP! 潜水事故
CASE8 海中で咳込んでパニック→急浮上
ダイビングに限らず事故はつきものではあるが、最初から最後まで何事もなく安全に楽しめてこそ、本当のレジャー。 ダイビングの場合、潜水事故というと死に至るケースも少なくない。
そして多くの人が「他人事」と思っているフシもあるけれど、ふとした気の緩みやちょっとしたケアレスミスで潜水事故が起こることも。 明日はわが身。 もう一度基本を振り返る意味でも、ぜひこの連載を参考にしていただきたい。
CASE8 海中で咳込んでパニック→急浮上
今回の潜水事故の原因
- バディ不遵守
- 身体拘束
- 監視不十分
- 器具の不備・取り扱い不注意
- 体調の不注意
- 技量の未熟
- 気象・海象の不注意
- エア確認不注意
- その他
ダイビングのCカードを取得してすぐ、Eさんはショップツアーでダイビングに出かけた。 1本目のダイビングでエントリーして10分が過ぎた頃、水深10㍍付近でEさんが突然咳込み始め、何回か咳をしたときにレギュレーターが外れてしまい、 慌てて急浮上。同行していたインストラクターがレギュを外した状態で急浮上するEさんに気づき、追いついてオクトパスをくわえさせるもEさんはパニック状態。浮上してしまった。浮上後、Eさんの意識がなく、海水も飲んでいたと考えられたので、インストラクターは陸上に搬送し、CPRを直ちに開始した。Eさんは海水を吐き、意識も回復したが、念のため救急隊により病院に搬送された。
Eさんは当日、少々風邪気味だったが、大丈夫だろうと思い、事前に申告をしていなかった。
直接の原因体調の不注意、技量の未熟
対処法
一歩間違えればエアエンボリズム(空気塞栓症)で死に至ってもおかしくない状況。咳込んだ状況で肺の空気が少なくなり、膨張することもなく、助かったこと、そしてインストラクターがすぐにCPRを施してくれたことで、Eさんは助かったのではないか。運が良かったといえます。
でも、Eさんがこの事態に巻き込まれずにすんだのではないかと思うポイントがいくつかあるので、考えてみよう。
【たかが風邪、ではない】
Eさんは当日、軽いものの風邪を引いていたという。初心者の場合、特に風邪を引いて潜ったときにどんなことがあるのか、想像ができないのではないだろうか?
Eさんのように水中で咳が止まらなくなるのをはじめ、くしゃみが止まらない、鼻水が止まらない、熱のせいでフラフラする・・・といった症状が出るかもしれない。おそらくベテランのダイバーはそうした症状を水中で経験されていて、「だから止めよう」という判断もできるかもしれないが、初心者には無理。ダイビングをするのは自己責任ではあるものの、同行するインストラクターも当日提出してもらう健康チェック表だけに頼るのではなく、問題がない人にもダイビングに行くときの会話の中で風邪や花粉症のことを聞いて確認を。問題がありそうならダイビングを中止させる、「ちょっと風邪気味ですが大丈夫です」といった言葉が出て来たならば、問題がなさそうでも中止を促すか、さもなければダイビング中は頻繁にそのゲストの様子をチェックするといった対策を練っておいたほうがいい。
でも、やはりダイバーとしては、風邪を引いているときは水中で何が起こるかわからないので、中止する勇気を持っていただきたい。
まあ、そうはいってもMDスタッフの場合、職業柄、潜らざるを得ないので潜るし、周りのベテランダイバーも「かえって風邪が治る」などと言って出かけてしまう人も少なくない。風邪だから絶対にNGというわけではない。次に述べるような対処ができるかどうかにもかかってくる。
【ダイビング中、咳込んだらどうすべきか?】
読者の皆さんによく聞かれるのが「ダイビング中、咳をするとき、くしゃみをするときなどはレギュレーターを外したほうがいいのか?」という素朴な疑問。ダイビング中はレギュレーターを絶対外さないのが鉄則。咳をするときも、くしゃみをするときも、はたまた吐くときも、レギュレーターはくわえたままできるような構造になっている。なので、答えは「外さないで大丈夫。むしろ、外してはならない」ということになる。
咳込んでしまった場合、勢いでレギュレーターが外れてしまうことが多い。これはくしゃみでも同じこと。咳をしそうになったら、くしゃみをしそうになったら、ちゃんとセカンドステージのフェイス面を自分の口のほうに押さえつけ、外れないようにすることが大切だ。とっても簡単なことなのだ。
ただし、咳込んでしまうと肺の細かい気管支がけいれんして狭くなり、閉塞して呼吸困難を引き起こす可能性もあるので、1ダイブ目で咳込んだ方は、2本目以降はダイビングを中止にすべきだ。
【パニックにならないために】
Eさんは咳込んだためにレギュレーターが外れ、思考停止状態に。とにかく浮上してラクになりたいという本能で急浮上に及んだものと考えられる。
ほかの潜水事故でも同様だが、事故を起こす人の多くが、不測の事態が起こったためにパニックになって事故に至っている。
では、どうすればいいのか?
Eさんのケースでいえば、レギュレーターが外れたのだから、レギュレーターリカバリーをして、ちゃんとくわえ直せばよかったわけで、「レギュレーターが外れた→レギュレーターリカバリー」のセオリーがしっかりと体に、頭に入っていれば慌てることもなかったのではないだろうか。
・・・というのは簡単なのだが、要は何事も落ち着いて対処できる心構えがダイビングには必要ということ。
パニックになりそうになったら、するべきこと。このコーナーでも何度か書いているけれど、「止まる・深呼吸する・考える」の鉄則を思い出して、実践を。
Eさんの場合、止まることはできても深呼吸することはできない状況なのだが、その場に止まることで、インストラクターやバディがすぐに気づいてレギュレーターをすぐにくわえさせてくれることもあるかもしれないし、Eさん自身でレギュレーターリカバリーをすることに思い当たったかもしれない。いずれも IFの話ではあるが。
【急浮上はしない】
初心者の頃は、水中で何か難問にぶち当たると、ラクになりたい、レギュを外して呼吸したい、浮上したいといった欲望にとらわれがちだ。
だが、ダイビング中、レギュレーターは外さない、急浮上はしない、が鉄則。
その欲望にとらわれてしまったら、インストラクターやガイドのスレートなどを借りてまずは自分の気持ちを伝えよう。伝えられたプロが、その欲望を押さえるための質問をしたり、ラクになる方法を教えてくれたりするはずだ。
以上のように、いくつかのポイントでEさんが急浮上してCPRを受けなくてもすむ対処法はあった。
皆さんも何か不測の事態が起こったときにどうすればいいか、頭の中でシミュレーションをしてみてはいかがだろう?
ダイビングは安全に潜ってこそ楽しい!
でも、万が一のとき、あなたはどうしますか??
ダイビングは安全に潜ってこそ楽しい!
でも、万が一のとき、あなたはどうしますか??
ダイビング初心者の方は、ダイビングは怖いものと思っている方も多いと思います。実際は、基本手順やルールを守って潜れば、それほど怖がることはないレジャースポーツです。
また、ダイビングは海という大自然と向き合います。
だからこそ、「水中で体験した感動は忘れられない!」、「人生を変えるほどダイビングは素晴らしい!」と感じるダイバーが多いのも事実です。
しかし、自然が相手のスクーバダイビングですから、100%安全なんてことはありません。万が一のときあなたはどうしますか?
そんな時、DAN JAPANがあなたをサポートします。
DAN JAPAN
一般財団法人 日本海洋レジャー安全・振興協会
TEL:045-228-3066
FAX:045-228-3063
Email: info@danjapan.gr.jp
https://www.danjapan.gr.jp/
〒231-0005
神奈川県横浜市中区本町4-43
A-PLACE馬車道9階
バックナンバー
- CASE134 ダイビング事故の多くは水面で起きる
- CASE133 ダイビング中、耳元で何かが炸裂!
- CASE132 ボートダイビングでラダーに指を挟み大けが
- CASE131 アンカーが外れ漂流。そして行方不明に
- CASE130 他のダイバーと接触しレギュが外れてパニックに
- CASE129 水深40m超でパニック
- CASE128 振り向いたらバディがレギュを外して暴れていた
- CASE127 インフレーターが外れてパニックに
- CASE126 バディを見失いパニックに
- CASE125 二日酔いで潜ってケガ
- CASE124 オクトパスブリージングでパニックに
- CASE123 仲間とはぐれ陸で倒れていた
- CASE122 残圧確認がいい加減でエア切れ
- CASE121 ウエイト調整ができずに急浮上
- CASE120 スノーケリング中に海水を飲んで意識不明
- CASE119 【考察】ドリフトダイビングの危機対処法
- CASE118 初心者が緊張と疲労で過呼吸に
- CASE117 勝手に浮上して漂流
- CASE116 緊張すると口がこわばる癖から海水誤飲で意識不明
- CASE115 ダイビング器材の不具合が原因で溺水!?
- CASE114 セルフダイビングではぐれ…。くも膜下出血で帰らぬ人に
- CASE113 岩をつかみそこねて流される
- CASE112 トラブル続出で溺れる
- CASE111 ブイのロープに急変! そのとき
- CASE110 リーフカレントにはまり漂流
- CASE109 突然レギュレーターを外してパニックに
- CASE108 60代男性ダイバーがダイビング中に体調不良に
- CASE107 ディープダイビングで減圧症の疑い
- CASE106 大物出現!で猛ダッシュするも取り残されてパニックに
- CASE105 ダイビング中、息苦しくなり意識朦朧に
- CASE104 講習中に海水を誤飲
- CASE103 ディープ潜水で減圧症に
- CASE102 ボートと接触
- CASE101 フィンを履く時に転倒して溺水
- CASE100 エア切れで定置網に絡まる
- CASE 99 レギュ故障で緊急浮上するも
- CASE 98 エントリー後行方不明に
- CASE 97 繁忙期のダイビングでパニック
- CASE 96 バラバラにエントリーしてロスト
- CASE 95 アドバンス講習中に急浮上
- CASE 94 冬の海で体調異変
- CASE 93 短すぎる水面休息で減圧症
- CASE 92 顔色が悪かったのにダイビングを開始
- CASE91 浮上後、大波でパニックに
- CASE90 あっという間にエアを消費して…
- CASE89 久しぶりで緊張のあまり…
- CASE88 ダイビングボートが座礁
- CASE87 タンクのバルブの戻し過ぎ
- CASE86 うねりで顔面強打
- CASE85 水深28mでの水中撮影後、減圧症に
- CASE84 冷水海でフリーフローが仇となり…
- CASE83 空気がBCに入らず溺水
- CASE82 無理矢理ダイビングをして漂流
- CASE81 冬の海で意識不明に
- CASE80 ダイビング後、頭痛が止まらない
- CASE79 レギュが外れ、パニック!
- CASE78 水面移動が危ない!
- CASE77 体験ダイビングで絶対してはならないこと
- CASE76 透視度3mでバディとはぐれ、漂流
- CASE75 偽ダイバーのダイビング事故
- CASE74 指示を守らず漂流
- CASE73 潜水後ろれつが回らない
- CASE72 洞窟で迷子に
- CASE71 浮上中、異常行動
- CASE70 ツアーダイブで単独行動
- CASE69 乗っていたボートが転覆
- CASE68 助けてくれたバディが事故に
- CASE67 朝まで飲んで潜ったら
- CASE66 水中で大笑いしたら、海水が!
- CASE65 スノーケリングで溺死
- CASE64 オーバーウエイトと過呼吸でパニックに
- CASE63 母子ダイビングでロスト
- CASE62 ボートのへりから落下
- CASE61 ドライパニック
- CASE60 生活習慣病てんこもりの人が20年ぶりに潜ったら……
- CASE59 突然のめまい
- CASE58 マスク脱着訓練中に急浮上
- CASE57 潜水中にスノーケルをくわえ…
- CASE56 魔のトリプルトラブル
- CASE55 浮上後、レギュを外したダイバーに危機が
- CASE54 セルフダイブで別行動の末……
- CASE53 エグジットの際、うねりで骨折
- CASE52 突然姿を消したダイバーが水中で倒れていた!
- CASE51 大量のエアを吐き体調不良に
- CASE50 病後のダイビングで潜水病に
- CASE49 リーフカレントで戻れず漂流
- CASE48 ウエイトを1kg外したら…
- CASE47 フィンが外れて焦ったあまり…
- CASE46 エンジンがかかっているボートに接触
- CASE45 ダイビング中、差し歯が抜けた!
- CASE44 ダイビング中、呼吸困難
- CASE43 うねりで顔面強打
- CASE42 浮上後、意識朦朧に
- CASE41 タンクのバルブ開け忘れ
- CASE40 潜降中に行方不明
- CASE39 咳き込んで海水を飲み、パニックに
- CASE38 ダイビング中、低体温症に
- CASE37 カメラが岩に挟まってエア切れに
- CASE36 ダイビング中に天候急変、浮上後流される
- CASE35 フリーフローと溺れ
- CASE34 1月の海で減圧症
- CASE33 撮影に夢中になりエア切れ
- CASE32 エアの早い友人を先に上げてダイビングを続行し、漂流
- CASE31 ドライスーツ着用でパニックに
- CASE30 フィッシュウオッチング中にパニックに
- CASE29 ダイビング中に気分が悪くなり病院搬送
- CASE28 エア切れで漂流
- CASE27 海洋実習中、海水を飲み込み、死亡
- CASE26 BCに空気が入らずパニックに!
- CASE25 6月、北の海で70代女性が意識不明に
- CASE24 マスクに海水が浸入して大パニック!
- CASE23 水深40mを潜り、減圧症の疑い
- CASE22 BCに空気が入りっぱなしになり急浮上
- CASE21 浮上したら係留していた船がいない!
- CASE20 水深35mでパニックに
- CASE19 残圧がなくなり一人で浮上し、死亡
- CASE18 ナイトダイビングで帰らぬ人に
- CASE17 フリーフローでエア切れに
- CASE16 レギュレータークリアに失敗して・・・
- CASE15 ロープ潜降で1人行方不明に
- CASE14 初めてのダイビングでパニック
- CASE13 一人セルフで帰らぬ人に
- CASE12 ボートダイビングで移動中に骨折
- CASE11 ダウンカレントにつかまり気づけば-40m超
- CASE10 エアがない!→パニックに
- CASE9 ダイビング中に心停止
- CASE8 海中で咳込んでパニック→急浮上
- CASE7 浮上後、体が痺れて目の前が真っ暗に
- CASE6 ボートから逆方向に流され13時間漂流
- CASE5 エアがなくなったダイバーに突然オクトを奪われパニック
- CASE4 水中で迷子になり、死亡
- CASE3 持病を隠して潜水中、突然の体調不良で失神
- CASE2 マスククリアができずパニック!
- CASE1 ダイビング中に息苦しくなり意識不明に