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STOP! 潜水事故
CASE104 講習中に海水を誤飲

CASE104 講習中に海水を誤飲

ダイビングに限らず事故はつきものではあるが、最初から最後まで何事もなく安全に楽しめてこそ、本当のレジャー。 ダイビングの場合、潜水事故というと死に至るケースも少なくない。 そして多くの人が「他人事」と思っているフシもあるけれど、ふとした気の緩みやちょっとしたケアレスミスで潜水事故が起こることも。 明日はわが身。 もう一度基本を振り返る意味でも、ぜひこの連載を参考にしていただきたい。

CASE104 講習中に海水を誤飲

今回の潜水事故の原因

  • バディ不遵守
  • 身体拘束
  • 監視不十分
  • 器具の不備・取り扱い不注意
  • 体調の不注意
  • 技量の未熟
  • 気象・海象の不注意
  • エア確認不注意
  • その他

【事例】
事故者は友人1名とエントリーレベルのダイビング講習を受けており、海洋実習のため実習地に出かけた、午前の海洋実習が終わり、午後再びインストラクターと友人と計3名で海洋実習を実施。 インストラクター、友人、事故者の順で陸からエントリー。 沖合10mぐらいまでレギュレーターを使用して浅い水面下を移動後、水深2mに潜降するためにインストラクターが後方2名の確認をしようと振り向いたところ、事故者が海中で溺れているのを発見した。
急いで駆けつけ、事故者を海上へと引き揚げた。 付近にいたダイビングボートに救助と搬送を依頼し、インストラクターはもう1名を連れてエグジット。 ボートに引き揚げられた事故者は意識はあるものの顔面蒼白で口から泡を吹いていたため、ダイビングショップを介して119番通報をした。 消防からドクターヘリへと引き継がれ、事故者は病院に搬送された。
医師によると海水を誤飲したことによる肺水腫、肺炎を併発という診断。 重症と見なされ入院加療が必要となった。
 

直接の原因
溺水

対処法

大半の潜水事故は水面付近で起きるといわれるが、まさしくそれ。
「今回の潜水事故の原因」では、「監視不十分」「器具の不備・取り扱い不注意」「技量の未熟」と考えられる事柄を挙げておいたけれど、あくまでもその可能性があるという意味。

 

事故者である講習生の「技量の未熟」「器具の取り扱い不注意」はかなり考えられる。 器具の取り扱いについては本来であればプール講習で学んでいるので、溺れてパニックにならないようなスキルを少しは身につけていてしかるべきではある。 けれど、プール講習でスキルがしっかり身につくものかというと、疑問が生じるのも確か。

 

状況からみると、インストラクターの「監視不十分」についても疑いの余地はある。 エントリーして先頭を泳いでいく際に、後ろをちょくちょく振り返っていれば事故者が溺れていることにもっと早く気づけたのではないか? 2本目だから油断してはいなかったか?

 

事故者の身になってみれば、海洋実習は2回目だったとしてもまだ初めての水中体験のようなもので、プールとは違った海水への抵抗もあるかもしれないし、ちょっと口にしてしまった海水のしょっぱさが気になったかもしれないし、そもそも水面下を器材を背負って慣れないフィンで泳ぐことに苦手意識をもっていたかもしれない。 また水中マスクで見える景色にまだ違和感が起こっていたかもしれない。

すべて「かもしれない」なのだが、皆さんも初めて講習で海に潜ったときの感覚を覚えているのではないだろうか? 最初から快適~♪と思って海洋実習を受けている方はそんなに多くないのではないだろうか。 マウスピースのにおいとか、くわえた時の違和感とか、あったのではないだろうか?
少しでも不安に思ったら息苦しくなってレギュを外したくなったりするのでは?

 

まだCカードを取得していない方にとって、ストレスは周囲の人が気づかないぐらい大きいものだ。
それは久しぶりに潜るペーパーダイバーも、ブランクダイバー同様だろう。

 

ということで、インストラクターは縦一列になって目的地に行く場合、講習生が不安になって溺れたりしないように事前にストレスを取り除いてあげておく必要があるし、不安な点があれば聞き出しておいて、それをケアしてあげる必要があるのではないだろうか? そもそも何があってもレギュレーターは外してはいけない、海水を飲んではいけない、という基本中の基本を教えられていたのだろうか?
<br? また講習で一列に泳ぐことのリスクもあるのではないだろうか? 例えばバディダイビングの場合、万が一バディに何かが起きた時に2秒でそばに行ける距離を保つというルール(ほど確立されていないような気もするが)がある。 フィンを履いたダイバー一人の向こうにいるダイバーのところにいるところまで2秒で行けるのだろうか?

 

今回の事故で、インストラクターが事前にケアもしていたし、水中でもよくみていた、ということであれば、事故者に「インストラクターが教えたことを実施しなかった」ということで事故者側に過失がある。 でも、インストラクターがしてはいけないことを伝えていなかったり、ストレスの有無を聞き出したりしていなかったりすれば、それはインストラクター側に過失がある。

 

どちらに責任があるか? ということは、事故が起きた場合に必要なことではあり、裁判になった際にはかなり重要なことになるのだが、ここはそういう場ではない。 でも、まずこういう事故を起こさないために、私たちは事前に準備して、知識を得て、できれば潜る前に話し合っておくことは大いに必要だと思う。

 

たとえ講習生であっても、ひとたび海に入るということはこういう事故につながる例があることを知っておいてほしい。 でも、ダイビングが危ないわけではない。 何か起きた時にパニックにならずに冷静に対処できるマインドを持っていることが必要だし、それをするための知識やスキルをできるだけ早く身につけておくことが必要なのだ。
これは体験ダイビングでも同様だと思う。

 

でも、それを伝えなくてはならないのは、担当のインストラクターであることは間違いない。  

ゲスト側に「早く」「楽に」「短時間で」「安く」講習を終わらせることを望む方もとても多いのだが、早ければいいってものじゃない。 ラクで楽しければいいというものでもない。 短時間、短期間でCカードが取れればいいというものでもない。 安ければいいというものではもちろんない。
しっかりとダイビングの知識やスキルを身につけてこそ、安全に潜れる率は高くなる。 ダイビング講習を受ける際はこのことも頭に入れておいてほしい。

 

そして怖かったら怖い、苦手なものは苦手とインストラクターに告げることができることが大切だし、インストラクターやダイビングショップ側は講習生がそういうことを気楽に言えるような雰囲気づくりをすることが大切なのだと思う。

 

なお、CASE27でも海洋実施中、同様の事故が起き、とても残念で悲しいことにこちらの事故者は死亡に至っている。

≫ CASE27 海洋実習中、海水を飲み込み、死亡
併せてご覧ください。
   


今回のケースの事故者がこの事故をトラウマにすることなく、再びダイビングを継続してダイバーになっていることを願う。

ダイビングは安全に潜ってこそ楽しい!
でも、万が一のとき、あなたはどうしますか??

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ダイビング初心者の方は、ダイビングは怖いものと思っている方も多いと思います。実際は、基本手順やルールを守って潜れば、それほど怖がることはないレジャースポーツです。
また、ダイビングは海という大自然と向き合います。
だからこそ、「水中で体験した感動は忘れられない!」、「人生を変えるほどダイビングは素晴らしい!」と感じるダイバーが多いのも事実です。
しかし、自然が相手のスクーバダイビングですから、100%安全なんてことはありません。万が一のときあなたはどうしますか?
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