
DIVING スタート&スキルアップ 2021
ダイビングに限らず事故はつきものではあるが、最初から最後まで何事もなく安全に楽しめてこそ、本当のレジャー。 ダイビングの場合、潜水事故というと死に至るケースも少なくない。 そして多くの人が「他人事」と思っているフシもあるけれど、ふとした気の緩みやちょっとしたケアレスミスで潜水事故が起こることも。 明日はわが身。 もう一度基本を振り返る意味でも、ぜひこの連載を参考にしていただきたい。
事故者(女性)はエントリー時にフィンが脱げてしまったため、
ダイビングボートにつかまり再装着をしていたが、
その間にボートが15mほど流されてしまい、
ガイドとともに潜降用のブイまでボートにつかまりながら戻った。
だが、その女性がなかなかフィンが履き直すことができなかったため、
ガイドが女性を連れて水面搬送中に、女性が意識を喪失。
その後、ダイビングボートに引き上げられ、CPRを施されながら救急搬送されたが、
死亡が確認された。
溺水による窒息死と診断された。
事故者のダイビング経験は10年以上だったが、経験本数は不明。
直接の原因フィンを履けなかったことにより過呼吸になり、溺水
死なずにすんだはずの悲しい事故である。
事故者には心よりご冥福をお祈り申し上げます。
この事故は、事故者本人が事前に防げる方法があったのと、
ダイビング中(というか、水面上)でも防げる方法があったと考えられる。
まず事前に防ぐ方法。
エントリー時にフィンが脱げてしまったとあるが、
フィンが脱げるという事態はそうそうあるものではない。
明らかにサイズが合っていないか、ストラップが壊れているか。
脱げるようなフィンは履かないことだ。
自分のフィンであれば、サイズが合っていないものを万が一買ってしまったとしても、
ブーツで調整するとか、フィンが脱げないように押さえるためのアクセサリーもあるので、
そうしたもので押さえておく必要がある。
でも、レンタルのフィンであれば、履いてみて脱げやすいことはわかるはず。
すぐにサイズを変えてもらって(ダイビングボートに乗る前に)
ジャストフィットのものを履くことが大切だ。
ジャストフィットのものを履いていれば、脱げるということは
よほどのこと(ストラップを締め忘れてエントリーするとか、
フィンをちゃんと履かずにエントリーするといったこと)がない限りない。
“よほどのこと”は、エントリー前のバディチェックでできるはず。
ダイビングは、ジャストフィットした器材の装着と、
ダイビング前のバディチェックで、安全に潜れるものなのだ。
次に、脱げてしまった後の対処法。
まずすぐに履き直すことはもちろん重要だが、
すぐに履けないのなら、面倒でも一度ボートに上がるべきだったと思う。
ボートに上がって履き直せば、すんなり履けたのではないだろうか。
また15mほどボートに曳航されてブイまで戻ったようだが、
ガイドさんには慣れたものかもしれないけれど、
ボートに引っ張ってもらって移動すると、水もじゃんじゃんかかって飲みそうになるし
ロープをしっかりにぎっていないと流されてしまうので、初めての人には結構大変なことだ。
でも、フィンを履くために一度ボートに上がっていれば、水面で引っ張られることもなく、
ボートに乗った状態でブイに戻れたはず。
ガイドも操船者も事故者も、皆が危険なほうを選んでしまったと言わざるを得ない。
どうしても、引っ張られることを選んだのだとしたら、
ちゃんとフィンが履けた状況で、BCに空気を入れて浮力を確保した上で、
波がかからないような体勢になって引っ張ってもらうとラクだったはずなのだが、
それができていたようには思えない。
事故者にしてみれば、フィンはまだ履き切れていないわ、
引っ張られて波はバシャバシャかかるわ(そして、海水を呑み込んだ可能性も大だわ)で、
もうダイビングどころではなくなっていたのではないだろうか。
この事故の経過を見直せば見直すほど、
事故者ももちろんそうだが、ガイドも、操船者も、とっても焦っているようにしか思えない。
安全に潜るためにはどうすべきか、落ち着いて、でもとっさに正しく判断できるように心がけておくことが必要だと思う。
これから水温も温かくなってきて、冬眠から目覚めるというダイバーも増えてくるはず。
皆さんも基本に戻って、まずは器材をチェック! 劣化したものは買い替えたりして、安全第一にダイビングを楽しんでくださいね。